サマリオからの連絡
ヴィーナスハンドにて。大きなたんこぶを作ったセアンが涙を流しながらリビングで正座をしていた。その横では同じように大きなたんこぶを作ったライアとラージュがいた。反省中なのか、うつむいているライア。ラージュは反省しているのか分からない笑みを作っていた。
「申し訳ございません。もう二度とこんなスケベなことは致しません。なので許して」
「ごめんね~。半裸のカイトを見たら発情しちゃって~」
セアンとラージュの言葉を聞き、ケアノスは呆れてため息を吐いた。
「今度変なことをしたら海に突き落とすから」
「分かりましたー」
「りょうかーい」
と、セアンとラージュはこう答えた。そんな中、ライアが何も喋らないことを察し、ケアノスはライアに近付いた。
「どうかしたの、ライア? 何も返事しないけど」
少し不安になったケアノスがライアに近付くと、ライアは幸せそうな表情で眠っていた。
「おきんかーい!」
「オワップェッ!」
ケアノスの怒声を聞き、ライアは驚いて目を覚ました。
「いやー、メンゴメンゴー。疲れが溜まっていたからつい寝ちゃったよー。で、どんな話だっけ? 若さを保つためのコツだっけ?」
「カイトに対するエッチな行為についてよ!」
苛立ったケアノスはライアの首を締めようと考えた。だが、話し中にカイトとコスタがやって来た。
「ケアノス、ムラムラ……じゃなかった。イライラしている場合じゃないよ」
「サマリオさんから留守電があった」
「サマリオから?」
ケアノスは我に戻り、電話の元へ向かった。電話にある留守電の有無を教えるランプは赤く点滅していて、留守電があることを示していた。コスタが電話にあるボタンを押すと、サマリオからの発信があったと画面に表示された。
「本当だ。コスタ、通話を再生できる?」
「分かった」
コスタがボタンを押すと、ピーという音の後でサマリオの声が再生された。
「皆、頼みたいことがあるんだ。ぺージェクト国のジョンキーと言う町で、トリガミヤワー海賊団が闇商人と取引するという情報が入った。その取引を妨害し、トリガミヤワーの連中を捕まえたい。その海賊団は、ブラッディークローと関わっている。皆もこの前のとは別の情報が欲しいだろう。明日の昼までに折り返しを頼む。私が電話に出るとは限らないが、代わりの者を電話番にするから夜中でも連絡ができるから。では、いい返事を待っている」
サマリオの声を聞いた後、カイトとコスタとケアノスは目を合わせていた。
「トリガミヤワー海賊団。ゴイチ王国で手にした情報には書かれてなかったわ」
「もしかしたら、新しく奴らの仲間になったか、隠れていたか」
「どちらにせよ、少しでもブラッディークローに近付きたい。俺はサマリオさんの話に乗ってもいいと思ってる。二人は?」
カイトの言葉を聞き、コスタとケアノスは頷いた。その時、話を聞いていたセアンたちがやって来た。
「話は聞いたよ。すぐに返事をしよう」
「ええ。ちょっと待ってね」
ケアノスが受話器を取り、シーポリスに連絡を入れた。
「はい。シーポリスです」
「ピラータ姉妹のケアノスです。サマリオさんからの留守番電話を聞きました」
「サマリオ大佐から連絡は入っています。皆様はどこにいますか? 明日にでも、サマリオ大佐が迎えに行くと言っています」
「私たちはデザートディッシュにいます。すぐに来れますか?」
「うーん……サマリオ大佐に聞いています。とりあえず、トリガミヤワー海賊団と闇商人の取引の話には協力するという形でいいでしょうか?」
「はい」
「ありがとうございます。すぐにサマリオ大佐に連絡します。分かり次第、すぐに返事をすると思います」
「分かりました。では、失礼します」
「はい。いつもご協力ありがとうございます。それでは」
電話を終えた後、ケアノスはサマリオからの連絡が入るとカイトたちに伝えた。その後、セアンたちはいつサマリオから連絡が入るか分からないため、電話の前にいた。
「いつ連絡が来るかなー」
「サマリオって忙しいから、すぐに連絡は来ないと思うけど」
ライアとセアンが話をしていると、電話が鳴りだした。画面を見ると、サマリオの名前があった。
「サマリオからだ!」
セアンは受話器を取り、話を始めた。
「もしもしサマリオ? 話は伝わった?」
「伝わったよ。セアンたちがデザートディッシュにいると話は聞いた。明日の夕方までには迎えに行く」
「分かった。それまで準備をしておくよ。それと、いろいろあったからお世話になった人に挨拶とかしておくよ」
「ああ。では、また明日会おう」
「うん。じゃあ待ってるよ」
セアンの言葉を聞き、サマリオが明日の夕方来ることをカイトたちは知り、それまで旅立ちの準備、そしてアディたちに話をしようと思った。
翌日、ウイークは旅立ちの準備をしているセアンたちを見て、声をかけた。
「おーい。もう出港するのかー?」
「うん。昨日、シーポリスの知り合いから連絡が入って、ブラッディークローに関わる海賊団が闇商人と取引するから邪魔するのに手伝ってくれって連絡があったのー」
セアンの返事を聞き、ウイークは大変だなと言葉を返した。サディたちが顔を出し、セアンに話しかけた。
「大変だねー。また会えるよね」
「もちろんだよ。と言うか、一応互いの連絡先知ってるじゃない。寂しかったり、ウイークのことで相談があったらすぐに連絡してね」
「俺のことで相談ってどういうこと?」
ウイークがサディにこう聞いたが、サディはウイークを海に突き飛ばした。その後、カイトたちが旅立つことを知ったアディやトッポ、町の人たちが港に集結した。
「もう行っちゃうの?」
と、寂しそうにアディがこう聞いた。カイトがアディに近付き、こう答えた。
「ああ。俺たちはいろんな所に行くからな。海賊だから」
カイトがこう言った後、ラージュが近付いた。
「もしかしたら、また来るかもしれないわね。いつになるか分からないけど」
「うん……また来てね。皆にはいろいろとお世話になったから」
アディがこう言うと、トッポが前に出た。
「皆様がいなかったら、私はあの洞窟で一生を終えていました。アディにも会えませんでした。感謝してもしきれないです」
「そんな~、大げさな~」
話を聞いていたセアンが恥ずかしそうにこう言った。町の人たちはセアンたちを褒め称える言葉を放ち、更にセアンの顔を赤く染めた。
「そんなに褒められると照れるなー」
「確かに」
セアンの横にいたコスタも少し照れて顔を赤く染めていた。しばらくして、ウイークがくしゃみをして姿を現した。
「そいじゃ、俺たちもそろそろ行くわ」
「ウイークさんも行っちゃうの?」
アディがこう聞くと、ウイークは笑いながらこう答えた。
「俺たちも海賊だからな。一つの場所で止まるわけにはいかないんだ」
「そう……だよね」
しょんぼりしたアディがこう言ったが、ウイークはアディの肩を叩いて話を続けた。
「また会える時もある。またこの町や国で宝があるって知ったら来るかもしれないな」
「その時は、また会ってね」
「当たり前だ! そうだ。これをやるよ」
と言って、ウイークは船に戻り、ある物を持ってアディに渡した。それは、軽めの鉄で作られた小さな剣のアクセサリーだった。
「俺が趣味で作っているアクセサリーだ。いつもいろんな所で知り合った人に渡してるんだ。大事にしてくれよ」
「うん、ずっと大事にするよ」
アディの返事を聞き、ウイークは笑った。
「それじゃ、俺たちは先に行くぜ。皆! 機会があったらまた会おう!」
と言って、一足先にウイークたちが旅立って行った。それから時が流れて夕方になり、海の地平線からシーポリスの船が見えた。
「そろそろ私たちも出港する時間になったね」
セアンがこう言うと、アディたちの方を向いた。
「私たちも行くよ。また会えたら会おう!」
「元気でね」
「私たちのこと、忘れないでねー」
「じゃーねー!」
「冒険の経験は今後の人生で、いい糧になるわ。忘れないでね」
「アディ、トッポさんと一緒に幸せに暮らせよー!」
カイトたちがそう言った後、アディたち町の人たちは出港するヴィーナスハンドに向かって手を振り続けていた。
今回で砂漠の話は終わりです。お盆前に終わるかなーって予想したけど、終わらなかった。次の話はサマリオたちシーポリスが関わり、ブラッディクローに関する情報も明らかになる予定です。ストック分で書いていますが、まだ終わっていません。次の話は多分長くなりそう。
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