デートストップ大作戦
コスタたちはセアンが過ちを犯す前に何とかデートを止めようと行動に移していた。そんなことを知らないセアンはカイトを連れてアイスクリンの町を歩いていた。
「あの二人、どこへ行くのやら……」
二人からばれないように変装をし、魔力を抑えて尾行しているケアノスが呟いた。二人が向かったのは普通の家。セアンがチャイムを鳴らすと、扉からアディとトッポが現れた。
「あら、アディ君の家だったのね」
ケアノスは呟くと、二人が家から出るまでその場で待機した。
「皆様には感謝しかありません。本当にありがとうございます」
と言って、トッポは頭を下げていた。セアンは頭を上げるように言った後、話を続けた。
「私たちはアディ君のためと自分たちのためにやっただけです。こんな小さな子供が困っているから、私たちのような強い人が手助けしないと」
「セアンの言う通りです」
セアンとカイトはそう言うと、アディはありがとうと伝えた。セアンはトッポの嫁が淹れた紅茶を一口飲んだ後、トッポにこう聞いた。
「実は、今私たちデート中なんです。そこで、おすすめのデートスポットとか教えてほしいんです」
「デートスポット?」
トッポとアディはカップル向けの施設を考えたが、何も思い浮かばないのか、難しい声を上げていた。
「カップル向けの場所か……ぱっと思い浮かばないな」
「この町、砂漠だらけだし……」
「アイスクリームの店は多いけどな……あ」
何かを思い出したかのような顔のトッポは、地図を持ってきて机の上に広げた。そして場所を探して、指を指した。
「ここは見張り台だが、砂漠を見渡すことができる。夜に行くと、翡翠の洞窟が光って見えるぞ」
「おお! なんだかロマンチックな予感!」
「私は夜、そこで砂漠を見てあの洞窟の存在を知ったのだ。何かあると察したよ」
と、トッポがこう言った。その話を聞いたセアンは、いい景色が見られると思い、ワクワクしてきた。
数分後、カイトとセアンはトッポの家から出てきた。その姿を見たケアノスはすぐに通信端末を手にし、連絡を始めた。
「今、二人がアディさんの家から出て来たわ」
「了解。ケアノスはこのまま尾行を続けて。私たちは作戦を練り続けるから」
「了解。では、尾行を続けるわ」
ケアノスはそう言って端末の電源を切り、尾行を続けた。一方、コスタとライアとラージュはヴィーナスハンドに戻って作戦会議を開いていた。
「私たちもこの町を出る前に、アディ君の所にいかないとね」
「それはそうだけど、今は二人のデートの邪魔をするのが先だよ」
「ライアの言う通り。今は目の前のことに集中しましょう」
ライアとコスタにこう言われ、ラージュはそうねと言って話を続けた。
「長年セアンと共にいたから、これからセアンがすることは予想ができてるわ。まず、セアンはいろんな所へ行って時間を潰し、夜にエッチなホテルにカイトを誘い込む!」
「カイトは嫌がると思うけど、無理矢理連れ込む可能性が高い」
「コスタの言う通り。カイトを独り占めにするなんてちょっとムカつく」
「私もよ。で……肝心のホテルだけど……」
ラージュは広げた地図に付けられているマークを見て、ため息を吐いていた。
「この町、結構ホテルがあるのね」
「予想外。どうなってるの、この町って」
「あの町長がやったんじゃない?」
「あー、スケベそうだからあり得る」
納得したような表情でライアがこう言った。その時、ケアノスから連絡が入った。
「皆、二人はアイスクリームの店に入ったわ」
「私に朝食代を払わせてアイスクリームを食べるだなんて……必ず、絶対に、確実に二万取り戻してやる」
と言って、コスタの周りから怒りのオーラを発した。ラージュはコスタをなだめる中、ライアがラージュに変わってケアノスに連絡をした。
「このまま二人の尾行をお願い。もし、何かあったら私たちも行くから」
「了解。あ、今出て来たわ。尾行を続ける」
「お願い」
ケアノスとの通信を終えた後、ライアは息を吐いてこう言った。
「今はケアノスを頼ろう。もし、動くとしたら夜になるかもしれないし」
「そうね。じゃあ、少し休みましょう」
ラージュはそう言ってソファーに座ったが、まだ吊らされているウイークの声を聞き、窓を開けてサディにこう聞いた。
「サディ。ウイークがうるさいから海に落としてもいい?」
「いいわよー」
サディの返事を聞き、ウイークは目を開いた。ウイークは大剣を構えるラージュを見て止めてと叫んだが、ラージュは止まらなかった。
「えい」
と言って、ウイークをぶら下げているロープを斬ってしまった。ウイークは悲鳴を上げながら、そのまま海へ落ちて行った。
デートが始まって時が流れた。あれからカイトとセアンはアイスクリームを食べたり、服屋で着替えをしたり、絡んで来た荒くれ共を倒したり、ランチを食べたり、酔いつぶれた酔っ払いの喧嘩を止めたり、町の噴水広場で休んだり、絡んで来たヤンキーを倒したりなどとしていたため、あっという間に夕方になっていた。
「もう夕方か。時が流れるのは早いな」
「そうね。それじゃ、トッポさんが教えてくれた場所に行きますか」
セアンはそう言って、カイトの手を握ってトッポが教えた高台に向かった。高台の見張りに話をし、二人は高台を登った。
「結構高いな」
「そうだねー。見張りの人も、ここが一番高い高台って言ってたし」
そんな話をしながら、二人は階段を上っていた。しばらくして、二人は頂上に到着した。扉を開けて外に出ると、思わず二人は声を上げた。目の前に広がるのは町の明かりと広い砂漠だった。
「すっげー」
カイトは小さくそう言って高台を歩いた。砂漠を見て、俺たちはここの砂漠を車で走ったのかと思いながら、目の前の光景に圧倒されていた。そんな中、セアンがカイトの手を握ってこっちに来るように手招きした。セアンに連れられてくると、目の前には翡翠の洞窟の光が目に入った。
「あれが翡翠の洞窟か。近くで見るより、遠くで見た方が幻想的だな」
「何も知らずにあれを見ると、冒険心が刺激されるのも仕方ないと思うよ。あれを見たら、ワクワクするよ」
そう話して、二人は翡翠の洞窟の光に目を奪われていた。尾行をしていたケアノスも、後ろからこの光景を見て茫然としていた。そんな中、セアンがカイトの手を握った。
「さぁ、そろそろ行こう」
「ああ。もう夜だし、皆も心配してるかもな」
「え? まだヴィーナスハンドには戻らないよ」
セアンの言葉を聞き、カイトはどうしてと思った。だが、しばらくしてセアンが行きたい場所を理解した。
「さてと、一日歩いたから休もう」
と、セアンは笑顔でこう言っているが、目の前にある建物はどこからどう見てもカップルがあれこれするホテルだった。
「セアン、俺たちはまだ未成年だぞ。こんなホテルに入ったら……」
「海賊がそんなこと気にしないよ。さっ、ケアノスが尾行しているから、ばれる前に早く!」
セアンの言葉を聞き、遠くにいたケアノスがビックリした。だが、その隙にセアンは無理矢理カイトを連れて行った。ケアノスは急いで通信端末を手にし、叫んだ。
「集合! 今すぐ集合! セアンが私の尾行に気付いてた! 予想通り、ホテルへ向かった!」
「了解!」
それから数秒後、魔力を使って飛んで来たコスタたちがケアノスと合流し、すぐにホテルへ向かった。
一方、無理矢理部屋に入ったセアンはカイトをベッドの上に寝かせ、自分は服を乱してカイトの上で四つん這いになっていた。
「せせせせ……セアン。これはちょっとまずいって。つーか、このホテルの従業員、何も確認しないで俺たちを……」
「大丈夫ってことだよ~。さぁ、休もうか。たっぷりねっぷりじっくりと」
「休もうかって逆に疲れるような気がするけど」
「いいんじゃないそんなこと~。難しいことを考えると頭が混乱するよ~。ぐへへへ~」
いやらしい手つきでセアンがカイトの服を脱がそうとしたが、コスタたちが扉を開けて部屋に入ってきた。
「これ以上はさせるか!」
「セアン! 止まりなさい!」
「カイトの一人占めは許さないよー!」
「少し、頭冷やそっか」
部屋に入って来たコスタたちを見て、セアンは女の子っぽく悲鳴を出したが、ケアノスが近くに落ちていた靴ベラをセアンの方に投げ、口の中に入れた。
「ウゲッ! ばっちぃ!」
「さぁ、バカなことをする前に船に戻るわよ!」
「セアン、二万ネカはちゃんと返してもらうから」
セアンに近付いたコスタとケアノスがセアンを連れ、部屋から出て行った。
「うえ~ん、もうちょっとだったのに~」
泣きながらセアンがこう言ったが、ライアとラージュはカイトがいるベッドの上に乗って服を脱ごうとしていた。
「さーて、今がチャンス」
「私がお楽しみと言うのを教えてあげるわ」
「おい! まだ暴走中の奴がいるぞ!」
カイトの声を聞き、ケアノスとコスタは落ちていた靴ベラをライアとラージュの口元へ向かって投げた。暴走を終えた後、カイトとピラータ姉妹はヴィーナスハンドに戻った。
その頃、ヴィーナスハンドにある電話が鳴り響いていた。その画面には、サマリオの名前が書かれていた。
次回で翡翠の洞窟の話は終わりとなります。後日譚が長いのは、一章三十話以上を目安として書いているのに、洞窟探検を終わらせた時点で話数が足りなかったからです。カイトとピラータ姉妹のデート回はいずれ機会があれば書こうと思っていたんですが、話数が足りなくて今回書きました。
次の章では、久しぶりにシーポリスのサマリオが出てきます、新キャラも出てくるので、どんな活躍をするか楽しみにしていてください。ちなみに女の子です。
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