ピラータ姉妹VS最強の騎士 その3
この感覚、久しぶりだ。
セアンは心の中でこう思った。コスタとラージュは負傷。ケアノスは魔力を使い果たして戦闘不能。ライアは足に攻撃されて大きなダメージを負った。今、戦えるのはセアンだけであり、一対一の状況で強敵と戦わなければならない。
さて、一人でどうやって立ち回ろうか。
冷静になったセアンがこう思うと、翡翠の騎士はセアンに向かって斬りかかった。セアンは斬撃を回避したが、翡翠の騎士は二撃目の斬撃を放っていた。それも難なくかわし、セアンは翡翠の騎士と距離を取った。
弱点が丸見えだけど、敵はそこを必ず防御する。
そう思い、セアンは翡翠の騎士の鎧が砕けた部分にハンドガンの銃口を向けた。翡翠の騎士はセアンがハンドガンで攻撃すると考え、左腕で防御の構えを取った。やっぱりと思いつつ、セアンはハンドガンをしまった。
「やっぱりこれで立ち回るしかないのね」
と言って、セアンは両手でカトラスを構えた。カーキョイはセアンの戦法が変わったことを気にし、声を出した。
「両手でそのカトラスを使うのか。どんな展開になるのか楽しみだな」
その声を聞いたセアンは鼻で笑った後、翡翠の騎士に近付いた。翡翠の騎士はセアンが近付いてくることを察し、剣を持ってセアンに接近し、剣を振るった。セアンは再び斬撃を回避し、翡翠の騎士の後ろに回った。後ろに回ったかとカーキョイは思ったが、セアンは何もしなかった。戦いの様子を見ているアディは、思わずセアンにこう言った。
「どうして攻撃しないんですか!」
「背後から攻撃しても無駄だよ。鎧でダメージが通らない」
セアンはこう答えると、再び迫って来た翡翠の騎士の斬撃を回避した。しばらくセアンは翡翠の騎士の攻撃を回避していた。どうして反撃しないのとアディは思ったが、倒れていたコスタとラージュが立ち上がった。
「セアンは私たちが復活するまでの時間を稼いでいるのよ」
「一人じゃあいつには勝てないからね……」
二人は立ち上がった後、コスタはスナイパーライフルを構え、ラージュはケアノスとライアを救った。
「ら……ラージュ……」
「しっかりしてケアノス。今、デザートシャークの干し肉を出すから、それを食べて魔力を補充して」
ラージュは干し肉を取り出し、ケアノスに食べさせた。干し肉を食べた後、ケアノスは一呼吸し、首を回した。
「少し魔力が溜まったわ。ねぇ、干し肉ってあと何切れある?」
「安心して、たくさんあるわ。いくつ食べる?」
「三つ」
ケアノスは干し肉を受け取ると、すぐに食べた。
「早く食べてセアンの援護に行かないと」
「落ち着いて。コスタが復活したから、援護はコスタに任せて」
ラージュがこう言うと、翡翠の騎士の相手をしているセアンがラージュたちの方を向いた。これで、セアンはラージュたちが復活したことに気付いた。
「復活した直後に悪いけど、作戦を練り直して! 私がこいつの相手をするから!」
大声でセアンはそう言うと、迫ってくる斬撃をかわした。ケアノスとラージュはアディと共に、もう一度作戦を練ることにした。
「鎧の後ろ側を壊せば楽に戦いは終わっていたのに……」
「終わったことを気にしたらダメよ、ケアノス。今は今後のことを考える」
「そうね。もう一度ドリルのような風を発して鎧を壊したいけど……」
「あいつはこの動きを学んだ可能性があるわ。同じ手は二度も通じないかも」
「隙を見て使えばどうかしら?」
「それまで私とセアンであいつを抑えるってわけね。セアンの体力的に大丈夫かしら? 私も復活したばかりだから、体力も魔力も中途半端よ」
「中途半端なのは私も同じよ。それと、他に何か案はない?」
「今度は私がドリルのような風を発する?」
「あの技は結構魔力を細かく使うわよ。それと、ラージュは治療用の魔力の分を残しておきたいでしょ?」
「そうだけど……それか、カイトとウイークが来るのを待つ?」
カイトとウイークの名が出て、ケアノスは二人がまだ戦えるかもしれないと考えた。
「そうね。今、二人がどこにいるのか分からないけど……」
「二人が来るまで私たちであいつを抑える。欠点として、二人がいつ来るか分からないこと、そして……来るかどうか分からない」
「二人のことだから何が何でも来ると思うわ。ラージュ、とにかく私たちでこの場を乗り切ることを考えましょう」
「そうね。あとから来た二人を驚かせましょう」
話がまとまった後、ケアノスがセアンの元に向かった。
「セアン、変わる?」
「お願い……ちょっと疲れた」
ばて気味のセアンは息を切らせながらこう言った。その時、翡翠の騎士の斬撃がセアンを襲ったが、ケアノスが風を発して翡翠の騎士を吹き飛ばした。
「あんたの相手は私たちよ。そろそろこの戦いを終わらせてあげるわ!」
ケアノスがこう言った直後、ドリルのような風を纏った大剣を構えたラージュが翡翠の騎士に襲い掛かった。翡翠の騎士は左腕でラージュの攻撃を防御したが、左腕のガンドレッドは音を立てながら削れて行った。
「ケアノス! できればさっきみたいに鎧を壊して!」
「分かった!」
ケアノスは魔力を開放し、騎士の後ろを攻撃した。前と後ろからの攻撃を受け、翡翠の騎士はバランスを崩しそうになった。
これで勝てる!
と、ケアノスとラージュ、休んでいたセアンはそう思った。しかし、突如翡翠の騎士から魔力を感じた。
「二人とも! 下がって!」
セアンの声を聞いたケアノスとラージュは攻撃の手を止め、後ろに下がった。次の瞬間、翡翠の騎士から魔力の衝撃波が放たれた。その威力は、翡翠の騎士の周囲の地面が陥没するほどだった。
「うわ……下がらなかったらどうなることやら……」
陥没した地面を見て、ラージュは小さく呟いた。すると、ケアノスがラージュに向かって叫んだ。
「注意して! 奴から強い魔力を感じる!」
「嘘でしょ、強い衝撃波を放ったのに、まだ魔力を使うの!」
ラージュは驚きながら、オーラを放つ翡翠の騎士を見た。
翡翠の騎士から放たれる魔力を感じ、アディは何故か懐かしい気持ちになった。そして、翡翠の騎士が何故自分に手を出さなかったのか少しずつ理解した。
「嘘だ……もし……僕の考えが合っていたら……」
動揺して体が震えるアディを見て、セアンが近付いた。
「どうかしたの? 体調悪い?」
「あの騎士……もしかして……」
アディの言葉を聞き、セアンはある仮説を作った。
「もしそうだったら……あの翡翠野郎、陰湿な趣味だな」
そう呟くと、上から聞き覚えのある悲鳴が聞こえた。セアンたちが呆然としていると、上からギドランドが降ってきた。ギドランドは柔らかい砂利の上に落下し、無事だった。それから少しして、カイトが降ってきた。その後に続き、ウイークが翡翠の騎士の上に落下した。
「グッ……アッダァァァァァァ!」
硬い鎧の上に落下したウイークは、激痛を感じながら周囲を転げまわった。カイトは周囲を見回した後、転げまわるウイークに近付いた。
「おい、大丈夫か!」
「大丈夫じゃない。男の急所は無事だけど、背骨が痛い!」
「背骨が痛い? まさか折れたのか?」
「魔力を開放してたからそこまで傷は負ってない。ちょっと待って……よっこいしょ」
と言って、ウイークは立ち上がって軽くストレッチをした。そして、茫然としているセアンたちを見つけた。
「おおっ! セアンちゃん! 皆! いや~、無事でよかった~」
「アディも無事みたいだな。よかった。それで、今こいつと戦っているのか?」
カイトは倒れている翡翠の騎士を指差してこう聞いた。セアンがそうだと答えると、翡翠の騎士は立ち上がった。その時に兜を見て、割れて欠けているとカイトたちは察した。
前にも話したと思いますが、サブタイトルにその〇って書き始めたのはサブタイトルがなかなか思いつかないからです。サブタイトルは重要です。話の内容をたった数文字で表すので、考えるのが難しく、時間を使うからです。なので、ジョ〇ョの三部、四部、五部らへんの簡易なサブタイトルにしようと思いました。
この作品に対しての高評価、ブクマ、いいね、感想質問、レビューをお待ちしています。質問は答えられる範囲で答えますので、分からんかったらどんどん質問してください。ネタバレに関してはしないからその辺よろしく。




