奥で遭遇したのは
休憩を終えたセアンたちは着替えをし、洞窟の奥へ向かった。しばらく歩いていたが、モンスターや他の海賊や冒険家と遭遇することはなかった。
「誰も奥に来てないのかなー?」
ライアがこう言った直後、何かを見つけたラージュがそれを手にしてこう言った。
「誰かしら来たみたいだけど、死んだようね」
「それ遺体の一部?」
セアンはラージュに近付いてこう聞き、ラージュが手にしている物を確認した。
「遺品か。それ、中に何か入ってた?」
「腐った傷薬と少額のお金だけ。でも、後で遺族に渡すように持って帰りましょう」
と言って、ラージュはその遺品をしまった。そんな中、コスタとケアノスは何かの気配を感じた。
「何か来たわね」
「モンスターかしら?」
二人が話をしていると、翡翠の騎士が姿を現した。その姿を見たセアンは嫌そうな顔をした。
「うげー、まだこいついるのー? 戦うの面倒だなー」
「逃げましょう。こんな奴の相手なんてしていたら、時間の無駄だわ」
「ケアノスの言う通り。逃げる一択!」
セアンはアディの手を握り、走って翡翠の騎士を通り過ぎた。コスタたちもセアンの後を追うように走り出した。残された翡翠の騎士は急いでセアンたちの方を振り返ったが、セアンはアディを近くにいたライアに託し、ハンドガンを構えた。
「これでも喰らえ!」
セアンは翡翠の騎士の右足のすねを狙って発砲した。放たれた弾丸は翡翠の騎士の右足のすねに命中した。攻撃を受けた翡翠の騎士はその場でしゃがんだ。
「うっしゃ! 今のうち!」
「ナイス、セアン!」
時間を作ったセアンに対し、ライアは称賛の言葉を送った。
その後、走り続けたセアンたちの前に強い緑色の光が放つ部屋に到着した。
「うわー、リティーヒの洞窟のことを思い出すなー」
部屋に到着したライアは、リティーヒの宝のことを思い出しながらこう言った。この言葉を聞いたラージュは、大剣を構えていた。
「もしかしたら、ここが洞窟の最深部ね。何かが起こるかもしれないから、覚悟を決めて」
「うん」
セアンはカトラスとハンドガンを構え、返事をした。アディは大きな戦いがあるかもしれないと思い、隠れる場所を探した。だが、部屋に到着して数分経過しても、何も起きなかった。
「何も起きないね」
「そうだねー」
コスタとライアは緊張感を解き、周囲の探索を始めた。ライアは近くの翡翠を触ろうとしたが、ケアノスが叫んだ。
「変に動かないで、触らないで!」
「おわっと! あぶなー」
ケアノスの声を聞いたライアは、すぐに手を引っ込めた。その後、ライアの近くにあった翡翠が光出し、それに合わせるかのように周囲の壁が光出した。
「うわ……これって……まさか、全部が翡翠でできてるの?」
セアンは周囲を見回してこう言った。それからしばらくして、天井から巨大な翡翠が降りてきた。
「よくぞここまで来た」
と、翡翠が言葉を放った。翡翠が言葉を放すことを知り、セアンたちは驚いた。
「うわっ! 翡翠が喋った!」
「何これ? 化け物? 新手のモンスター?」
混乱したライアがこう言うと、天井の翡翠は笑いながらこう言った。
「私はモンスターではない。この洞窟の主、カーキョイだ」
天井の翡翠、カーキョイは光を発し、セアンたちを照らした。自分たちが照らされていると知り、セアンたちは身構えた。
「何するつもり!」
「お前たちがどれだけ強いか調べた。なかなかの強さだな」
「そりゃそうだよ。私たち強いもん」
と、セアンは胸を張ってこう言った。だが、カーキョイは小さく笑って話を続けた。
「お前たちの望みはここの翡翠だろ? どんな目的で取りに来たのかはどうでもよいが……欲しければ試練を与えよう」
「試練? 何でもいいから早く与えてよ」
急かすようにライアがこう言った。
「急かすな急かすな。今すぐ相手を呼ぶ」
カーキョイは光を発し、奥にあった棺のような箱の中から翡翠の騎士が姿を現した。
「何? まーたあの騎士と戦えっての?」
「そうだ。そいつに勝てば翡翠を渡そう」
カーキョイの言葉を聞き、セアンはハンドガンを構えて翡翠の騎士に発砲した。だが、翡翠の騎士は飛んで来た弾丸を切り落としてしまった。
「へぇ。なかなかやる」
「当たり前だ。こいつは最高の戦士を素材にして形成した騎士だ。今までの騎士よりも動きは機敏、魔力もある。多分だが、今まで作った中途半端な騎士よりも強い。お前たちが束になって勝てるかな?」
「勝てる!」
セアンの言葉の直後、コスタがスナイパーライフルを構えて翡翠の騎士に向けて発砲した。翡翠の騎士は弾丸を切り落としたが、背後に回っていたケアノスがレイピアを突いて攻撃を仕掛けた。
「し……痺れる……」
ケアノスの攻撃は通用しなかった。あまりにも頑丈な鎧はレイピアの刃の攻撃を完全に防いだのだ。翡翠の騎士がケアノスの方を振り返ったと同時に、飛び上がったライアがナイフによる連撃を放った。だが、これもダメージが通らなかった。
「これもダメか」
ライアは翡翠の頭を踏み台にして高くジャンプし、ケアノスの元に着地してケアノスと共に後ろに下がった。
「なら、こいつの一撃で!」
ラージュは騎士の横に移動し、大剣を振り回した。大きな金属のぶつかる音が響いたが、大剣の一撃でも鎧には傷が付かなかった。
「あらー。これでもダメなの?」
攻撃が効かないことを知り、ラージュは茫然としていた。その隙に、翡翠の騎士は剣を構えてラージュに斬りかかった。
「ラージュ!」
ケアノスがラージュの名を叫んだ直後、コスタが翡翠の騎士の頭部に向けて発砲した。これもダメージはなかったが、ラージュから気を反らすことに成功した。
「これで攻撃の目標は私に変わるはず!」
コスタがこう言った直後、翡翠の騎士はコスタに向かって走り出した。その途中で、セアンとライアの飛び蹴りが翡翠の騎士に命中した。
「コスタの元へは行かせないよ!」
「このまま倒れてろ!」
二人は無理矢理翡翠の騎士を地面に押し倒し、武器を構えた。倒れた翡翠の騎士は立ち上がり、鎧に着いた砂を払い、セアンとライアを見た。
一方、先を急ぐカイトとウイークの前に、無数の翡翠の騎士が現れた。
「うわあああああ!」
「こいつら、全員先走った奴らかもしれないな!」
「先走った結果、モンスターにやられたのか」
「それしか考えられねー!」
喋りながら逃げていたが、目の前から無数のエスデレートカマキリが現れた。
「またこいつらかよ。俺、こいつの刃で重傷負ったからいい思い出がねーんだよな」
「そりゃー酷い思い出があるもんだな。おっと、話している場合じゃねーぞ!」
ウイークは嫌そうな顔をするカイトを掴み、高く飛び上がった。後ろから二人を追って来た翡翠の騎士はエスデレートカマキリの群れに襲い掛かり、エスデレートカマキリもやられまいと翡翠の騎士に襲い掛かった。ウイークは少し離れた所へ着地し、翡翠の騎士とエスデレートカマキリの戦いを見た。
「あいつらはあいつらで潰しあってくれればいいが」
「そうだな。でも、これで逃げる時間は稼げたな」
カイトがこう言うと、後ろから男の悲鳴が聞こえた。何者かと思いながら二人が振り向くと、そこには悲鳴を上げながら走るギドランドの姿があった。
「あいつはあの町の町長! ここに来ていたのか!」
「それより、こっちに向かってきているぞ。周りが見えてないのか?」
二人は突如現れたギドランドを見て、どう対処するか考えたが、ギドランドは途中で転倒し、坂を転げるように滑り出した。坂の下にいた二人はギドランドに命中してしまった。
「いって~」
「あのジジイ! 人様に迷惑かけやがって!」
「う……うるさい! 私だって好きで転がったわけじゃない!」
ウイークの言葉を聞いたギドランドは、苛立ちながら地面を叩いた。その時、スイッチが押されるような音が響いた。
「何だ、今の音?」
「私が知るか」
ギドランドがこう言った直後、三人の足元が開き、三人を落としてしまった。
「結局こうなるのかよー!」
落下する中、カイトは大声でこう叫んだ。
いよいよ翡翠の洞窟のラストバトルが始まります。今まで通りラストバトルは長く書きます。アディの父、トッポがどこにいるかもラストバトルの中で判明しますので、これからも話を読んでください。
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