ついに発見! 翡翠の洞窟
「あーもう。何で私、パーを出したのかしら?」
と、チューズは大量の買い物袋を両手に持ってぼやいていた。ウイークファミリーの女性陣は、カイトたちとウイークが砂漠へ探検している間、周囲の情報を調べ、定期的に連絡をしているが、時折買い物の必要があるため、彼女らはじゃんけんで買い物の役目を決めていたのだ。チューズはリストを思い出しながら、大きなため息を吐いていた。
「誰よ、最新型ゲーム機をリストに書いたの? あれ、今の状況でいらないでしょ……」
そう呟いていると、町の人の会話が聞こえた。
「さっきあのデブ町長が連れと共にどこか行ったけど、何かあったのか?」
「宝がある洞窟に向かったと思うぜ。よそから来た海賊や冒険家が宝を横取りするって考えて、それを防ぐためにさ」
「あのデブが考えそうなことだな。あの洞窟で死ねばいいのに」
「おいおい、いくらあの町長が嫌いだからって、死ぬって言うのは……まぁいいか。あのデブが町長になっても、あまり変わらないし」
その会話を耳にした後、チューズは急いで船に戻った。
「ただいまー。今、ちょっとした話を聞いたよ」
「どんな話?」
と、チョコを食べているサーズが顔を出してこう言った。チューズは買い物袋を下ろしながら話を続けた。
「この町の町長が砂漠に向かったって話。連れを連れてね」
「ああ。このおっさんね」
端末を操作していたライが、端末をチューズたちに見せた。
「経歴を見ていたけど、それなりにいい大学に進学して、政治の道を歩んだようだけど、黒い噂がたくさん。この町の町長になったのも、天下りの可能性があるわね」
「本当に嫌な奴。欲が絡んだ政治家にロクな奴はいないわね」
話を聞いていたサディは、呆れながらこう言った。マデはお茶を飲み、小さく呟いた。
「ま、とにかく今は私たちができることをしましょう」
マデの言葉を聞き、サディたちは各々のやるべきことをやり続けた。
一方、翡翠の騎士との戦いを終えたカイトたちは、再び車に乗って洞窟へ向かった。望遠鏡を見ていたライアは、前を走る車を見ていた。
「結構前にいる連中もいるね。休まずに走っていたら、ばてるのに」
「宝があるから、誰よりも手に入れたいって考えているかも」
運転しながら、ウイークがこう言った。そんな中、前の方から大きな音が響き、巨大なモグラヘビが現れ、前を走る車に襲い掛かった。
「ここからじゃあ魔力の衝撃波は届かないわね……」
と、残念そうにラージュが呟いた。
しばらく走っていると、カイトは不思議な感覚を覚えた。
「何だ、この感覚? 魔力に包まれているようなそんな感覚がするけど」
「私も同じ。何が原因かな……」
カイトとセアンは周囲を見回すと、周囲には小さく緑色に光る岩盤があった。それを見たケアノスの、翡翠の騎士のことを思い出した。
「まさか、あの岩盤の中にある翡翠のせいかしら?」
「え? もしかしたらさっきの騎士の鎧の部材になっている翡翠があるの? あれを手にしたら」
「残念ね、ライア。あの岩盤に埋め込まれている翡翠は小さいわ。あれじゃあ大した価値にもならないし、あの町長に渡しても叱られるわ」
「うーん……残念」
ケアノスの言葉を聞いたライアは、残念そうにうつむいた。そんなライアに対し、ウイークが声をかけた。
「ライアちゃん。ショックを受けている中悪いけど、そろそろ降りる準備をしてくれよ」
「おっ。それじゃあそろそろ洞窟に着くってことだね」
「その通り」
カイトたちを乗せた車は、大きな洞窟の前に到着していた。入口の前には同じレンタルカーショップで借りたような車がいくつも駐車されており、一部の車には見張りの戦士がいた。
「ようやく到着したのか。こうやって見ると、リティーヒの洞窟みたいだな」
「そうだね。ねぇ、ライフルの手入れをしたいから、見張りをしてほしいの」
「ああ。分かった」
先に車を降りたカイトとコスタは、すぐに洞窟の入口に移動した。砂塵が入らない場所を見つけたコスタはすぐにそこへ移動し、スナイパーライフルを分解して手入れを始めた。セアンは車から降り、周囲を見回した。
「感じるね。いろいろな魔力が」
「この中で誰かが戦っているかもしれないわ。変なモンスターがいなければいいけど」
「そう考えるのは止めなさい、ケアノス。こういった場所に変なモンスターは生息しているわ。それと、翡翠の騎士がいるかもしれないわ」
ケアノスはラージュの言葉を聞き、返事した。ウイークとライアは荷物を整理し、探検用の道具を取り出した。
「魔力用のランタンはある?」
「うん。予備もちゃんと用意してあるよ」
「オッケー。アディには必ず持たせてくれよ。それと、危険を知らせるベルとかある? アディに持たせたい」
「非常ベルか。私の考えだけど、その音を聞いたモンスターがアディに襲い掛かるかもしれないよ」
「うーん……それもそうだな」
ウイークとライアの話を聞いていたアディは、二人の肩を叩いた。
「僕、少しは魔力が使えるけど」
その言葉を聞いた二人は、大声を上げて驚いた。
「ウッソォ! 魔力を使えるの?」
「大した奴だな! で、どのくらいの技ができる?」
「火を出すだけ。それだけ」
と言って、アディは右手に力を込め、マッチのような火を発した。それを見たウイークは、アディにこう言った。
「明かりとして使えるな。だけど、おっかないから洞窟の中ではちゃんと俺たちの傍にいろよ」
「うん。分かった」
アディがこう答えたと同時に、別の車を見張っていた男が近付いた。
「おい。ここに入るつもりか?」
「そのつもりだ」
ウイークは男の方を振り返ってこう答えた。男はため息を吐き、ウイークにこう言った。
「止めておけ。俺の仲間が洞窟に入って数分が経過したが、返事がない。こちらから返事を送っても、帰って来るのはビープ音だけだ」
男は残念そうにこう言った。男の仲間が悲惨なことになったと考えたウイークは、男の肩を叩いた。
「これからどうするつもりだ?」
「もう少し待つ。どれだけ待っても帰って来なかったら……」
「そうか……気をしっかり持てよ」
ウイークは男にそう言うと、カイトたちが近付いた。
「準備できたよ」
「そろそろ行こう」
「ああ。うし、行くか」
その後、カイトたちは洞窟の中へ入って行った。それを見ていた他の海賊や冒険家は、小さく呟いた。
「ピラータ姉妹でも、この洞窟から戻って来られるか分からないな」
「若いから、戻って来てほしいな」
一方、砂漠を歩くギドランドは、オアシスで休んでいた。
「熱い! はぁ……町長の私がどうして砂漠を歩かなければならない! あのレンタルカーショップももう少し車を用意しておけ!」
「仕方ないですよ。ま、運がないと思ってください」
連れの一人がこう言うと、ギドランドは舌打ちをした。
「クソッたれが! それより、洞窟はどこにある?」
「俺が知るわけがないでしょう。そもそも、何も情報なしで洞窟を探すだなんて、無茶ですよ」
「クッ! 冒険家の後をついて行けば、見つかると思ったが……」
「そんな簡単に洞窟が見つかるわけがないでしょう」
呆れた部下がこう言うと、一台の車がオアシスに到着した。
「プハー! 疲れた……」
「あの洞窟はやばい。逃げて正解だったぜ」
「そうだな。あー、早く水を浴びたい」
車から降りたのは、海賊風の男たちだった。男たちはギドランドたちがいることを知らず、休み始めた。ギドランドは男たちが外に出て、車のエンジンが入ったままであることを察し、部下にこう言った。
「私は運がいい。お前ら、いい考えがある」
「まさか……」
「そのまさかだ」
ギドランドは部下と共に気配を消して歩き、男たちが乗った車に乗り込んだ。ギドランドは急いで扉を閉めて鍵をして、アクセルを踏み込んだ。
「ん? あっ! 俺たちが借りた車が!」
休んでいた男たちは車がギドランドに盗まれたことに気付いたが、気付いた時には車は遠く離れた所を走っていた。
「クソッたれ! どこの野郎だ、俺たちが借りた車を盗むなんて!」
「海賊から何かを盗んだら酷いことをされって分からないのか?」
「おいコラ、待ちやがれ!」
男たちは全裸に近い状態で走り出したが、地面からデザートシャークが現れ、食べられてしまった。
いよいよ洞窟探検が始まります。リティーヒの時よりも話数が少ないですが、一話ごとの文字数があの時より増えているため、長さ的には変わらないと俺は思っています。
つーことで、評価、いいね、ブクマ、感想質問、レビューをお願いします。俺はいつでも待っているからよ!




