謎の鎧騎士
翡翠があると思われる洞窟へ向かうカイトたち。モグラヘビと言う危険なモンスターに襲われ、周りにいた海賊や冒険家が犠牲となったが、カイトたちに大きな被害はなかった。
「周りの連中が結構減ったな」
「そうだな……」
休憩中のカイトとウイークはこう話をしていた。セアンは水を飲みながら、目を閉じていた。
「セアン、何か感じた?」
ケアノスがこう聞くと、セアンは目を開けて答えた。
「いろんな魔力を感じるけど、増えたり減ったりで滅茶苦茶だよ。いろんなモンスターに襲われているみたいだね」
「そうだね」
コスタがこう言った後、周囲に聞こえる悲鳴をセアンに聞かせていた。
「あらー、また犠牲者が……」
呑気な声を出すセアンを見て、アディは震えながらこう聞いた。
「ねぇ、怖くないの?」
「うん。これまで何度も危険な洞窟を冒険して、宝を取って来たから」
「いろいろあったわねー」
過去の冒険を思い出しながら、ラージュは思い出していた。そんな中、魔力の探知をしていたセアンが声を出した。
「何か来るよ! 身構えて!」
セアンの声を聞き、カイトたちは武器を構えた。セアンの声の後、砂の中から人型の影が現れた。
「また変なモンスターか。相手になってやる!」
ウイークが二本の剣を持ち、襲い掛かろうとした。だが、ライアはウイークに止まるようにこう言った。
「慌てちゃダメだよ。まずは相手の様子を……」
ライアが冷静になってこう言ったが、謎の影はライアに向かって魔力の塊を放出した。
「ウワッ! 何するのよ! この変態野郎!」
ブチ切れたライアは二つのナイフに魔力を込め、衝撃波を放った。謎の影は衝撃波を受けたが、ダメージを受けた様子を見せなかった。だが、衝撃波が炸裂したおかげで周囲に待っていた砂煙が晴れた。影の正体は翡翠の鎧を装備した騎士のような人物だった。
「古臭い騎士鎧だな。こんな暑い中でそれを身に付けたら暑いと思うけど」
カイトは呆れたようにこう言ったが、騎士は何も言わず、近くにいたライアに斬りかかった。だが、大剣を構えたラージュが騎士に向かって大剣を振るった。大剣の騎士は左手の盾で攻撃を防御し、後ろに下がった。
「硬い盾。私の大剣の一撃を受け止めても壊れないわ。市販の盾だったら、粉々になるはずだけど」
「盾の強度に感心している場合じゃないぞ、相手がこっちに来るぞ!」
カイトはラージュの前に立ち、騎士に斬りかかった。カイトの刀と騎士の剣がぶつかり合った後、何度も斬り合いを始めた。その隙にセアンとウイークが騎士の背後から接近し、同時に攻撃した。だが、セアンのカトラスとウイークの剣は騎士の鎧に傷を付けることはできなかった。
「かったー……」
「痺れる……なんて硬い鎧だよ」
両手が痺れた二人は後ろに下がったが、騎士は近くにいたセアンに目を付け、攻撃を仕掛けた。
「セアン!」
カイトが騎士に斬りかかろうとしたが、コスタがその横に近付いた。
「一緒に行くよ」
「ああ! 頼む!」
コスタと共に騎士に向かったカイトは、同時に騎士に攻撃を仕掛けた。カイトの刀は騎士の首元に命中し、コスタのショートソードは騎士の兜に命中した。
「これでも意味がないか」
「硬い……」
攻撃を終えた後、二人はすぐに後ろに下がって騎士の反撃から逃げた。その時、レイピアに魔力を込め、騎士に向けてレイピアを突いた。その時に発した鋭い棘がドリルのように動きつつ、騎士の兜に命中した。
「よっしゃ! これで頭を貫いてやれ!」
ケアノスの攻撃が命中したことを知ったウイークは、声を上げて喜んだ。だが、ケアノスは苦しそうな顔をしていた。
「硬い兜ね。壊すのに時間がかかる……」
ケアノスがこう言った後、大きな音が響いた。ケアノスの攻撃によって、兜が飛んだのだ。騎士の兜の下は、やせ細った顔の男だった。男の目は白目をむいていて、肌に黒い汚れが大量についたかのように黒ずんでいた。
「何だよ、こいつ? 生きているのか?」
カイトは怯えながら呟いた。これまでガイコツと戦ってきたが、生きているのか死んでいるのか分からない人間と戦うのは初めてであった。もし、本気で戦ったら殺してしまうと思った。
「こいつはどうやって戦えばいいのだろうか……」
「とにかく素っ裸にしてやろうぜ! ケアノスちゃんのおかげで兜は吹き飛んだ。首の付近に隙間があるから、そこを狙えばダメージは入るはず!」
ウイークは騎士に向かって飛び上がり、小さな火の矢を放った。小さな火の矢は鎧の首元の隙間に入り、中から小さな火が上がった。ウイークの火によって騎士はダメージを受けたような表情をした。その時に、騎士は手にしていた剣と盾を落とした。
「今だ!」
「火は消す。やっちまえ、カイト!」
カイトは騎士に接近し、飛び蹴りを放った。カイトの飛び蹴りを受けた騎士は後ろに倒れ、動かなくなった。動かない騎士を見て、カイトは動揺した。
「おい……まさか……死んじゃったのか?」
「地面は砂で柔らかいから、強く地面にぶつかっても死なないと思うけど……」
ラージュは動かない騎士に近付き、様子を見た。しばらくしてもラージュが何も言わないため、不安になったカイトはラージュに近付いた。
「なぁラージュ、何も言わないけど……まさか……」
「そのまさかよ……この人は死んでいるわ」
ラージュの返事を聞き、カイトの顔は真っ青になり、心配になったセアンたちがカイトに近付いた。
「大丈夫だよ。こういう時って……周りに人はいないから大丈夫だよ。放置してもさ、モンスターがうじゃうじゃいるから食べるかもしれないしー」
「セアン、変なことを言わないの。それに、カイトの飛び蹴りが原因でこの人は亡くなっていないわ」
ラージュの言葉を聞いたカイトたちは、安堵の息を吐いた。そんな中、アディは騎士の顔を見て声を出した。
「この人は、三十年前から行方不明って言われていたザッツーナ・アツッカイさんだ!」
「三十年前から行方不明? 何でそんなオッサンがこんな所に?」
気になったウイークはザッツーナの死体を確認したが、医学の知識があまりないウイークはザッツーナの死因が分からなかった。
「何も分からない。ラージュちゃん、何か分かった?」
「死因は長期にわたる栄養失調。それか、衰弱死。多分だけど、衰弱してこの人は死んだわ」
ラージュの言葉を聞き、ケアノスは翡翠の鎧を見た。
「この鎧が関係しているのかしら?」
「かもしれないね」
ライアが翡翠の鎧に手を触れた瞬間、翡翠の鎧は砕け散り、塵となって消えた。
「あらまー。結構高そうな鎧だったのに」
「しょうがないよ。壊れた物は戻って来ないし」
残念そうに呟くライアにそう言いながら、セアンは風に溶ける翡翠を見ていた。
翡翠があると言われる洞窟の中。いくつかの海賊や冒険家がカイトたちより先に洞窟に到着していた。彼らは意気揚々として洞窟の中を走っていたが、目の前に現れた凶暴なモンスターたちを見て、戦意を喪失していた。
冒険家の一人、ヴェルエルと言う女性はクオウと言う彼氏と共に洞窟へ向かい、見つけ出して中に入ることができた。しかし、クオウは突如現れたモンスターによって攻撃を受けていた。
「ヴェ……ル……エル……逃げろ……」
「クオウ!」
モンスターが持つ鋭利な刃によって、クオウの体は貫かれていた。ヴェルエルは怯えていたが、クオウの言う通りその場から逃げた。だが、突如地面から謎のモンスターが現れ、鋭利な爪でヴェルエルを切り裂いた。
「キャアアア!」
鋭利な爪はヴェルエルの服と肌を切り裂き、大きなダメージを与えた。それでも、ヴェルエルは外に向かって逃げた。
「こんな所で……死んで……たまるか!」
そう言って、ヴェルエルは歩き続けた。だが、生きたいという彼女の願いは通じず、彼女は後ろから迫ってきたモンスターの餌となってしまった。その光景を見たクオウは言葉を失った後、モンスターの餌となった。
今回の話はリティーヒの時と同じように洞窟を探検する話です。このあとがきを書いている時に思ったけど、連続して洞窟探検の話になったので、似たような宝探しの話をするときは洞窟以外の場所を考えようと思ってます。
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