カイトVSウイーク
カイトは飛び上がってウイークに接近し、落下の時の勢いで刀を振り下ろし、ウイークに攻撃を仕掛けた。ウイークはカイトの攻撃を予測していて、カイトの攻撃を移動して回避した。
「隙あり!」
カイトは着地した際に刀をウイークの方に振り、追撃を放った。だが、ウイークは左手の剣を逆手に持ち、攻撃を防御した。
「こうなるだろうと考えていたぜ。まだ甘いが……いい攻撃だ!」
ウイークは防御している左腕を振り上げてカイトを後ろに吹き飛ばし、右手の剣を横に構えてカイトに接近した。カイトは攻撃されると思い、氷の壁を作った。突如現れた氷の壁を見て、ウイークは声を上げた。
「すげぇ。秒でこんな分厚い氷を作りやがった。だがな、これじゃあ俺は止まらないぜ!」
ウイークはそのまま右手の剣を横に振り、カイトが作った氷の壁を切り崩した。氷の壁の向こう側にいたカイトは驚いた顔でウイークを見ていた。
「マジかよ。結構分厚い氷だけど……」
「魔力を込めて、剣術を鍛えればこんな氷はゼリーのように斬ることができるぜ!」
と言って、ウイークは左手の剣を持ち換えて、残った氷を切り崩した。ウイークはどや顔でカイトを見た。
「どうだ? 少しは俺の力を見て驚いただろ?」
「少しな。でも、俺は本気を出していないぜ!」
カイトは魔力を開放し、周囲に衝撃波を放った。ウイークは両足を踏ん張って吹き飛ばないように耐え、カイトを見た。
「強い魔力だな。だけど……やっぱ全力のお前と戦いたかったなー」
と、残念そうにウイークは呟いた。カイトはジナ海賊団との戦いがあったため、体力と魔力を使っていた。そのことを察したウイークはため息を吐いた。
「仕方ないな。セアンちゃんたちのためだし……観念してくれよ、坊主!」
「誰が観念するか!」
カイトは刀を振り回し、ウイークに連撃を仕掛けた。ウイークは防御しながら隙を見て、カイトに攻撃を仕掛けようと考えた。しかし、カイトの攻撃速度はウイークの予測よりも早く、隙を見つけることができなかった。
「うおっ! ちょっと……早い!」
「まだまだ終わらないぞ!」
カイトは連続攻撃のフィニッシュとして、力を込めて刀を振り下ろした。ウイークは二本の剣を交差してカイトの攻撃を防御し、フィニッシュの攻撃を受け止めた。
「強いな、あんた……この数秒であんたの実力を把握した……」
「そ……そりゃあ船長だからな! そいじゃ、次はこっちから行くぞ!」
ウイークは後ろに下がり、二本の剣に魔力を込めた。すると、右手の剣から火が、左の剣から雷が放たれた。それを見たカイトは驚いた。
「おい! どうして火と雷を同時に出せるんだ! ずるくねーか?」
「悪いな。俺は火と雷の魔力を持っている。一部の人間は、二つの魔力が使える。ごくまれだが、その一人が俺だ」
と、ウイークはどや顔でこう言った。その後、右手の剣を振り下ろし、火の刃を放った。カイトは刀を振り上げて波を発生させ、火の刃を消滅させた。だが、ウイークは左手の剣を突いて雷を発した。鋭い雷はカイトが放った波を貫き、カイトに命中した。
「があああっ!」
「命中!」
カイトの悲鳴を聞き、ウイークは攻撃が命中したと理解した。だがその時、どこからか飛んで来た牛乳瓶がウイークの頭に命中した。
「このバカ野郎! カイトに傷つけたら半殺しにするよ!」
牛乳瓶を投げたのはセアンだった。その後ろにいるコスタはスナイパーライフルでウイークを狙っていて、ライアは包丁を構えていた。そして、ケアノスとラージュは大砲をサディから大砲を借り、ウイークに狙いを定めていた。
「おい! これは男と男の真剣勝負だ! 邪魔しないで!」
「何か言っているけどどうする?」
「無視して。次に何かあったら大砲撃ってもいいから」
と言って、サディは大砲に火を付けようとしていた。その光景を見たウイークは慌てていたが、その隙に攻撃を受けたカイトがウイークに近付いていた。
「あの……」
「お? おっひゃぁ! いつの間に回復していたの? まずい、斬られる!」
「そんなことしないよ。第一あんた、悪い奴じゃないし」
「あ、そう。こりゃー丁寧にどうも」
二人は頭を下げて挨拶をした後、後ろに下がって武器を構えた。
「さて、仕切り直しだ! このまま決着させるぜ!」
「悪いけど、俺もセアンたちが賭けの対象になっている以上、勝たなきゃならないから、もう少し本気を出す!」
「さぁ、行くぞ!」
ウイークの言葉の後、二人は同時に走り出し、接近して斬り合いを始めた。カイトの素早い斬撃と、ウイークの二本の剣による斬り合いはしばらく続いた。どちらも引かない剣の攻撃が続く中、何かに気付いたマデが大砲に火を付け、真上に飛ばした。大砲が発車された際、カイトとウイークの動きは止まった。その後、コスタが上空に放たれた大砲を狙撃し、破裂させた。
「はい。ここまででいいでしょ? 早くデザートディッシュに行かないと、お宝がとられちゃうよ」
「そうだった! こんなことをやっている場合じゃないよ! 急ごう!」
マデの言葉を聞き、セアンたちは慌ててヴィーナスハンドを動かす支度をした。カイトとウイークは互いの顔を見た後、小さく笑った。
「勝敗はどうする?」
「なかったことでいい。俺が勝っても、セアンちゃんたちはカイトの方に行くだろうし」
ウイークは笑いながらカイトの肩を叩いた。
カイトとウイークの決闘が終わった後、二つの船はデザートディッシュに向かっていた。港に停泊し、カイトたちはウイークと共にデザートディッシュの港町、アイスクリンへ向かった。アイスクリンへ向かうのがウイーク一人だけということを知ったカイトは、ウイークにこう聞いた。
「他の皆は?」
「町とか行くのは俺の役目。他の皆は戦闘能力がないから、基本はお留守番だ」
「そうなのか……」
「か弱い女を守るのがハンサムの役目だからな」
と、笑いながらウイークがこう言ったが、コスタはため息を吐いてこう言った。
「誰がハンサムなのかしら?」
「俺だよ。俺」
自信ありげにウイークはこう言ったが、ケアノスは呆れた顔をしてこう言った。
「あんたはハンサムじゃないわよ。ちゃんと鏡を見なさい」
こう言われ、ウイークは肩を落とした。そんな中、カイトたちは情報を集めるため、町の酒場へ向かった。
「ちょっとしつれーい」
セアンがこう言うと、中にいた荒くれ共や冒険者、海賊たちが一斉にカイトたちの方を振り返った。今まで騒がしかった酒場の中が、一瞬にして静まり返った。
「おい、あれってピラータ姉妹じゃねーか?」
「それに、その横にいるのはウイークファミリーのウイークだ」
「奴らも翡翠の話を聞いてここに来たのか?」
「そうかもしれないな。強力なライバルがまた増えたな……」
ぼそぼそと会話をしている海賊に近付いたセアンは、大きな声を出した。その声を聞いた海賊は情けない声を上げ、持っていたビールをこぼしてしまった。
「私たちが来てから急に静かになったね。何かあったの?」
「いや別に? 何でもありませんよ!」
「俺たち雑魚の海賊に何の用ですか?」
海賊たちは内心ヒヤヒヤしながらこう言った。自分たちのことをセアンたちが知っていれば、確実に戦いになり、確実に捕らえられるからだ。セアンは海賊の顔を見て、にやりと笑った。その笑みを見て、海賊はやはり戦うつもりだと不安になった。
「翡翠の話を知っている? 知っていれば、教えてほしいな」
この言葉を聞き、海賊たちは安堵の息を吐いた。
「その話ですか。俺たちもその話を聞いてここに来たのですが、何も分かりません」
「どこかの洞窟にあるって話は聞きましたが、なんか胡散臭いじいさんから聞いたので、あてになりません」
「ふーん。そっか、ありがとね、賞金首一万ネカのショボボーイ海賊団の皆さん。大丈夫だよ、あんたたちと戦うつもりはないから」
セアンはそう言って別の所へ向かった。ショボボーイ海賊団は安堵した後、再びビールを頼んだ。こうやって、カイトたちは情報を聞き出そうとしていたが、翡翠について知る者はいなかった。
「うーん。誰も翡翠のことは知らないわね」
「どこかの洞窟にあるってことは言っていたわね」
ケアノスとラージュがそう言って考え込む中、酒場の入口が開く音がした。カイトとウイークが入口を見ると、そこには太った男が立っていた。
ようやく今回の物語の舞台に到着しました。次回から物語が本格的に動きます。いろいろと謎が多い砂漠の翡翠ですが、今後の話でどんな翡翠なのか分かります。次回もお楽しみに!
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