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ゴクラクバードの卵は誰の手に?


 ついにクッキングバーサスのイベントが始まった。ライアはオオツノウシの極上の部位を使ったステーキを作り、優勝を目指す。だが、他の料理人も負けずと個性と料理の腕を振るっていた。


「ホアチャアアアアアアアアアアアアアアアア! ホウオッ! アッチャァ! アータタタタタタ! オワッタァッ!」


 と、ヌンチャクのような包丁を振り回して料理するのはノース料理流というヘンテコで訳の分からない料理の技を使うケンゴロウ・クホート。動きは変なのだが、料理の腕は達人レベルで、細かいネギのみじん切りや、豚肉の細切れなどもできていた。


「凄い動きだ。というか……まるで拳法のような動きだな……あの変な包丁でよく食材が切れるな」


 ライアはコンロの過熱を行いながら、小さく呟いた。そんな中、怒声と共にうどんをこねている女料理人の声に会場はどよめきを起こしていた。


「あのクソ亭主! あの野郎が! どんな手を! 使っても! 浮気の証拠は残るものなんじゃァァァァァァァァァァァァァァ! 逃げても! 必ず! 追い詰めて! 地獄の底へ! ぶち込んだらァァァァァァァァァァァァ!」


 そう叫んでいるのは一般の主婦、エツコ・ミツボーシ。うどん料理が得意で、粉からうどんを作ると本人は事前申告で語っていたが、旦那の浮気によって発生したストレスの発散と怒りを爆発させるためにこの大会に参加したのではとライアは思った。その一方で、突如発生した悪臭に会場は騒ぎ始めた。


「うげぇ、何? この臭い?」


「納豆とくさやを混ぜたのか?」


「うげぇ……くしぇ……」


 関係者席に座るカイトたちも、鼻をつまんで悲鳴を上げていた。カイトの肩を枕にして寝ていたセアンも、臭いを嗅いで飛び起きた。


「ウッゲェェェェェェェェェェェェェ! 何なのこの臭い? ゴッフェッ! ゴッフェッ! これって、誰かもしかして……」


「その臭いじゃないわ。あれよ、あれ」


 ラージュが指さす方向には、魔女のような恰好をした参加者が、何かを鍋で煮込んでいた。


「ひっひっひ~、これで後は干からびたトカゲのしっぽとムナヤケの薬草をたーっぷり入れて、後はじ~っくりと煮込めば特製シチューの完成だ。このシチューを食べれば、ほっぺたはぽたりと落ちちゃうよ~。ケケケケケケケケケケ」


 魔女の格好をしたのはグラム・リムダー。本人曰く特製魔女料理を得意としているのだが、彼女が経営する店にはゲテモノ料理の愛好家しか来ない。司会者は彼女に近付き、悪臭を止めるように説得を始めた。


「すみません。外でこのような臭いを出されたら、参加者や観客にも迷惑が掛かりますので……」


「ヒェッヒェッヒェッ。お主には分からんか? このシチューがどれだけ美味なのか?」


「臭いで分かります。とてつもなくやばい料理だと」


「臭いで料理は決まらんよ。味で決まるのだよ。ほれ、食ってみな」


 と、グラムは鍋にスプーンを突っ込み、無理矢理司会者の口の中に入れた。シチューらしき物体を飲み込んでしまった司会者の顔面は青く染まり、そのまま倒れてしまった。その後、司会者は運ばれ、グラムは失格となった。失格と言われたグラムは、文句を言い始めた。


「私の里ではね、この料理が一番おいしいって言われてるんだよ。私も百年近くこのシチューを食べて来たんだ! ああ、あのころが懐かしいねぇ。魔女学校でライバルだったエンズちゃん。どこかに行ったっきり会ってないなー。どこにいるのかなー」


「思い出話はよそでしてください」


 グラムの言葉を聞き流しながら、イベントのスタッフはグラムを追い出した。ライアはライバルが減ったと思ったが、グラムが作った料理を見て、あれじゃあライバルにもならないと心の中で思った。




 とまぁこんな感じで騒ぎは発生したが、しばらくしてライアたち料理人は調理を終えた。


「ふぅ……やれるとこまではやったな」


 ライアは調理器具の洗浄をしながら、作り上げたオオツノウシのステーキを見た。その後、各料理人が作り上げた料理は、判定を行う美食家の元へ運ばれた。この時、見た目や香りなどで明らかにやばいだろうと思われる料理はその場で処分された。


 判定が始まって数分が経過した。ついに、ライアが作ったオオツノウシの希少な部位のステーキの判定が始まった。


「これはライア・ピラータさんの料理、オオツノウシのステーキですか……」


「ピラータ姉妹? ああ、あの義賊海賊で有名な姉妹の一人か。この大会に参加していたのか」


「それよりも味を確かめましょう。おお……これはうまい。ステーキの上のソースも素晴らしい香りだ。」


「その通りですね。焼いたステーキとの相性が素晴らしい。油も少ないし、老いぼれの胃袋でもぺろりと食べることができそうだ」


 などと、美食家たちは絶賛の言葉を呟いていた。他の参加者も、ライアが作ったステーキを見て自分の優勝が難しいのではと思っていた。


会場の周囲では、ライアが作ったステーキソースの匂いが漂っていた。その匂いを嗅いだ観客の一人が、腹減ったと呟いた。ライアの順番は後ろの方であり、美食家の腹がそろそろ満腹に近く、判定が難しい所に来ていた。だが、それでも各美食家はライアが作ったステーキが食べたいという気持ちとなった。そんなことを知らないカイトたちは、緊張した顔つきで話をしていた。


「うう……見ているこっちも緊張する」


「作ったのはライアだけど……俺も何か緊張してきた……」


 ライアのステーキを食べている美食家を見て、セアンとカイトが緊張しながらこう言った。コスタも手を合わせてライアの勝利を祈っており、ケアノスとラージュも口は発しなかったが、緊張した表情を見せていた。そして、ライアのステーキを食べ終えた美食家たちは立ち上がった。


「うん、うまい! うますぎる!」


「んうまぁぁぁぁぁぁぁぁぁい! 俺、こんなステーキを食べたの、初めてだよ!」


「うううううううううううううううううまあああああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 と、美食家たちは立ち上がり、テンションが上がったためか雄叫びのような声を上げてうまいと叫んだ。


「肉の焼き加減! 塩コショウのバランスのいい量、そして手作りの野菜と果物のソース! それらのピースが上手く合わさって、素晴らしい料理となった! 優勝は文句なし、ライア・ピラータが作ったオオツノウシのステーキだァァァァァァァァァァァァァァ!」


「異議なし!」


「右に同じ!」


「我もそう思います」


 美食家たちは、ライアの優勝を声高く叫んだ。だが、次の料理人であるケンゴロウ・クホートがボロボロのチャーハンを持ってやって来た。


「すみません、俺の失敗チャーハンは食べないのですか? 心を込めて作ったんですが」


「素材を侮辱するような料理など食えるか! お前が食え!」


「はい」


 ケンゴロウはそう言って、自作のチャーハンを食べ始めた。


「うーん……俺もまだまだだな」


 と、ケンゴロウは小さく呟いた。




 その後、ライアは優勝賞品であるゴクラクバードの卵を持ってヴィーナスハンドへ向かった。だが。


「こりゃデカすぎるね」


「うん。まさか、ここまででかいなんて思わなかった」


 ゴクラクバードの卵はとんでもない大きさで、部屋にはいきれなかった。どうしようとセアンたちが行っていると、ライアは何かを思いついてこう言った。


「これからこの卵の料理を作るよ。それで量を減らしてこう」


「食べるしかないのね」


「ま、皆に食べさせるためにクッキングバーサスに参加したし。それじゃ、ちょっと待っていてねー」


 と、ライアは笑顔でそう言うと、ゴクラクバードの卵の調理を始めた。


 ところどころ俺の作品には他作品のパロディネタが入っています。パロディネタは好きなので、隙あればバンバン入れて行きます。


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やっぱり卵は食べちゃうのね… ペット枠になるのかと…
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