ライアVSジナ
テーナとズッポウが次々と倒されたことを知り、ジナは頭を抱えて困っていた。あっという間に優秀な二人な部下が倒されてしまったのだ。少しはカイトとセアンが苦戦するだろうと思っていたが、そうはいかなかった。
「あーあ、大人しく逃げればよかった。やれると思ったからやる気あったのに」
「残念! 逃がさないよ!」
ライアは体を回転させながらジナに接近した。コマのように回転するライアの手には、ナイフが握られていた。ジナはショートソードでライアの攻撃を防御するが、何度も防御したせいでショートソードは弾かれてしまった。
「ああ! もう!」
飛んで行ったショートソードを見て、ジナは魔力の火で作った手を伸ばし、海に落ちそうになったショートソードを掴んだ。
「危なかったー。仕方ない、こうなったらやるしかないわね!」
ジナはそう言って、体内の魔力を放出するかのように解放した。ジナの周囲から爆炎が放たれ、周囲に火が付着した。それを見たライアは目を丸くして驚き、ヴィーナスハンドに戻ろうとしたが、退路を防ぐように炎が動いた。
「逃がさないつもり?」
「ええそうよ。本当はこっちが逃げたいけど、船が燃えちゃった以上どっちかが倒れるかの勝負をするしかないわよ!」
と言って、ジナはショートソードを持ってライアに向かって走って行った。
ヴィーナスハンドに戻ったカイトとセアンは、燃え始めるジナの海賊船を見て、慌てていた。
「うわ! 早く火を消さないとライアが大変だ!」
「すぐに消化する!」
カイトは魔力を開放し、水を発した。だが、カイトが発した水はジナが放った爆炎に近付いた途端に蒸発した。
「うわっ、あの炎結構熱いぞ。すぐに水が蒸発する」
「どうしましょう。ライアが勝って戻って来るのを待つしかないのかしら?」
ラージュが救急箱を持ってこう言った。ケアノスは唸り声を上げ、ラージュにこう言った。
「そうね。敵の魔力は強くないし、ライアの実力なら苦戦する敵じゃないわね。この戦いがすぐに終わればいいけど」
そう言って、ケアノスはライアの無事を祈った。その時、上にいるコスタがこう言った。
「ねー。あの人たちが来ているけどどうする?」
コスタの言葉を聞いたセアンは、ウイークの船を見て声を上げた。
「うーわ。ウイークが来ているのか。ほっといてー。どうせ向こうからこっちに来るから」
と、コスタは言葉を返した。ウイークのことを知らないカイトは、セアンに知り合いなのか聞こうとしたが、ライアの強い魔力を感じた。
ライアは魔力を開放し、ナイフを構えた。ジナの爆炎は熱く、時間を使って戦うと熱によって体力を奪われ、水分も失って疲れが増す。ジナが弱いとはいえ、長い間戦うと自分が不利になるとライアは考えた。ライアの魔力を感じたジナは、悲鳴を上げた。
「ちょっとー、もう少し魔力を弱めてくれない? それじゃあ私が勝てないから。戦いだから、ちゃんと平等な強さで戦わないと不公平でしょ?」
「何言っているの? 平等な戦いなんてないよ。戦いはいつも、不平等だよ!」
ライアはそう言って猛スピードでジナに接近し、ナイフを何度も振るった。攻撃を見切れなかったジナは悲鳴を上げながら吹き飛び、自分が放った爆炎に飲まれてしまった。
「アッチャァァァァ!」
自分の炎を浴びたジナは悲鳴を上げながら安全な場所に走って移動し、その場に横になって、転がりまくって体に付着した炎を消した。
「熱い! 熱い、熱い! 誰よ、こんな炎を発したバカは!」
「あんただよ!」
叫びながらライアはジナに飛び蹴りを放った。飛び蹴りを受け、床に倒れたジナは痛みで悶絶した後、ゆっくりと立ち上がった。
「イタタ……もうこんな戦い無意味だから止めましょうよ」
「降参するってわけ? じゃあ、私たちの言うことを聞いてよ。それなら、いいよ」
「えー? あなたたちの言うことを聞くの? 年下の言うことなんて聞きたくなーい」
「何言ってんのさ。負けた奴は勝った奴の言うことを聞く。海賊の世界じゃあ常識でしょ?」
勝ち誇ったようなライアの顔を見て、ジナは苛立ちを覚えた。
「何かむかつく! こうなったらあんたをぶっ飛ばしてあげるわよ!」
「それでいい! 降参するよりも、勝つために悪あがきする方が海賊らしいよ!」
ライアはそう言った後、ショートソードを構えたジナは周囲の爆炎を操り、ショートソードの刃に集めた。それにより、ショートソードの刃は赤く染まった。
「この刃には炎の力が集まっている。これで斬られたら、大火傷と深い切り傷を同時に負うことになるわよ!」
「そりゃー大変! 受けないように気を付けないと!」
ライアは茶化すようにこう言った。その後、ジナはライアに接近してショートソードを振り回した。ライアはわざとギリギリでジナの攻撃をかわしていたが、ショートソードの刃が頬に近付いた直後、刃から激しい熱を感じた。
これはあの人の言う通り、刃を受ければ大変なことになるね。
と、ライアは心の中でこう思った。あのショートソードの一閃を受けたら大きなダメージを受けてしまう。だが、受けなければ問題ないとライアは考え、ナイフを構えた。
「凄い技だけどさ、敵に当たらないと意味がないよ!」
「だったら、当てるようにするだけよ!」
「やれるものならやってみな!」
ライアはそう言って、二本のナイフを同時に振るった。ナイフからは衝撃波が飛び出し、ジナに向かって飛んで行った。
「衝撃波! グッ!」
ジナはショートソードを振るい、襲い掛かって来る衝撃波をかき消した。その時、ライアは右手のナイフを小さく振るい、小さな風の刃を放った。その刃はジナの右手に命中し、持っていたショートソードを落としてしまった。
「あああ! 酷いことをするわね!」
「相手の武器を落とすのも戦法の一つ、文句を言わないでよ。おばさん」
おばさん。この言葉を聞き、ジナの怒りは爆発した。
「だぁれがおばさんだこのガキがァァァ! あんたみたいなガキは塵にして灰にしてボロボロにして鮫の餌にしてやらァァァ!」
激高したジナは、両腕を振り回しながらライアに向かって走って行った。呆れたライアはナイフを構え、迫って来るジナを見つめた。
「感情に任せた攻撃は隙が多いよ。海賊として、あまり強くなかったね、おばさん」
そう言うと、ライアは魔力を開放してジナに向かって走った。その時のライアの早さは雷のような速さで、最初に走り出しただけでジナから離れた所にいた。
「え? 早い」
ジナは振り返って後ろにいるライアを見て、目を丸くして驚いていた。その瞬間、腹に違和感を覚えたが、それと同時にジナは崩れるように倒れた。
ライアは倒れているジナに近付き、こう言った。
「もう終わりでいいよね?」
ジナは荒く呼吸をしながら、小さな声で答えた。
「はい……負けでいいです」
「よろしい」
ライアはそう言って、倒れているジナを背負い、ヴィーナスハンドへ向かった。
ジナたちを倒した後、カイトたちは下の地下牢にジナたちを入れていた。ライアはケアノスが持って来たジュースを飲み干し、安堵の息を吐いていた。
「ふぃー、あのおばさんが熱で周囲を熱くしたから喉がカラカラだったよー。用意してくれてありがとう、ケアノス」
「あの炎の熱がここまで感じたから、中にいると大変だと思ったからね」
ケアノスはジナの炎によって半壊したジナの海賊船を見て、ライアにこう言った。ライアは改めてジナの海賊船を見て、脱出が遅かったら大変なことになっていたと思った。そんな中、感じたことのある魔力を感じ、ラージュにこう聞いた。
「ねぇ。もしかしてウイークが来ているの?」
「ええ。もうしばらくしたらこっちに来るわ」
ラージュがこう答えると、ウイークの船がヴィーナスハンドに迫った。
新しい話が始まってしばらく立ちますが、物語の舞台である砂漠の国への到着は少し先になります。
読んでいる人の中に、今の話ってワン〇ースのアラ〇スタの話のパクリではと思う方もいるかもしれませんが、今回の話は異世界革命物語の後日譚として、主人公ミツルギとヒロインネレスがいろんな所へ旅をするという話の一つとして考えた話でした。ですが、異世界革命物語が受けなかったので、ボツにしました。が、話の内容としては大体固まっていたので、ボツにするのはもったいないという考えで今回の話を作りました。
たまーにあとがきで裏話も書ければなと思います。ブクマ、評価、いいね、感想質問、レビューをいつでもお待ちしています。面白いって思ったら周囲の人にも知らせてね。




