セアンVSテーナ
テーナは不敵な笑みを浮かべるセアンを見て、少しだけ冷静になった。倒された仲間の仇を取るため、本気でセアンを倒そうと考えていたが、セアンは少ししか魔力を使っていないことを察し、本気を出したら負けるとテーナは思った。そう思った時、テーナは自分の頬を叩いた。
「あまり負けるとか考えるな。必ず勝て、何が何でも勝てよ、俺!」
気合を入れた後、テーナは魔力をヨーヨーに込めた。魔力が込められたヨーヨーは勝手に動き出した。
「ヨーヨーに魔力を込めてどうするつもり?」
「まぁ見てなよ!」
テーナはヨーヨーを動かしながら移動を始めた。セアンは周囲に動くヨーヨーを狙ってハンドガンを発砲したが、すごい勢いで回転するヨーヨーはセアンが放った弾丸を弾き飛ばした。
「弾丸を飛ばすだけの力はあるか」
「俺のライジングヨーヨーをおもちゃだと思うなよ!」
と言って、テーナはライジングヨーヨーから雷を発し、セアンに向けて放った。セアンはカトラスでライジングヨーヨーを弾き返そうとしたが、刃に当たる寸前にライジングヨーヨーは軌道を変えた。
「俺はヨーヨーの名人だ。魔力を使えば軌道を変えることぐらいできる! そして、これが俺の必殺技だ!」
テーナが叫んだ直後、ライジングヨーヨーから無数の小さな雷がセアンに向かって飛んで行った。
「必殺、ニードルサンダー。針のような雷がお前を襲うぜ」
「こんな雷、楽に対処できるよ」
飛んでくるニードルサンダーを見て、セアンはバリアを張って防御した。すると、もう一つのライジングヨーヨーがバリアの横から現れ、セアンの脇腹に命中した。
「ウガァッ!」
悲鳴を上げながら、セアンは吹き飛んだ。バリアが解除されたのを見たテーナは、素早くライジングヨーヨーを動かして転倒したセアンに追撃を仕掛けた。
「一か八か、これで終わってくれ! お願いだから!」
「神頼みのような言葉だね。運じゃなくてさ、自分の腕を信じてみれば?」
セアンはそう言いながら立ち上がり、魔力を開放してカトラスを振り回した。カトラスによって弾かれたライジングヨーヨーは、テーナの元に戻った。
「失敗したか。次のチャンスがあればいいが……」
「残念だけど、そんなものはないよ!」
セアンはカトラスを振り回し、テーナに向けて巨大な竜巻を放った。巨大な竜巻は船の床を巻き上げながらテーナに向かって動いていた。横に避けようとしても、横に避けられる場所はなく、後ろに逃げても追い詰められる。テーナの選択は、竜巻を消す以外存在しなかった。
「チクショウ! こうなったらやってやる!」
テーナは強い魔力を開放し、ライジングヨーヨーに込めて振り回した。
「これで! 消えろ!」
ライジングヨーヨーから大岩のような雷が現れた。大岩のような雷は巨大な竜巻と絡み合い、しばらくして巨大な竜巻は消えた。
「よ……よかった……消えた」
テーナがありったけの魔力を使った結果、セアンが放った巨大な竜巻を消すことに成功した。セアンは安心して隙だらけのテーナに接近し、飛び蹴りを放った。
「ウボッ!」
「竜巻を消したのは褒めてあげるけど、戦いは終わってないよ」
飛び蹴りを受けたテーナは後ろの壁に激突し、吐血した。
「ぐぐぐ……クソ……」
テーナは床に降り、ライジングヨーヨーを構えた。その時、セアンが放った風の刃がライジングヨーヨーの紐を斬ってしまった。
「なあっ!」
「これじゃあヨーヨーは使えなくなるね」
と、どや顔のセアンはこう言った。テーナは深いため息を吐き、床に落ちたライジングヨーヨーを拾い、魔力を込めた。
「紐がなければ、魔力で補えばいい! 残念だったな、俺にはまだ魔力がある!」
テーナは魔力を紐代わりにし、ライジングヨーヨーをセアンに向けて放った。セアンはカトラスを使ってライジングヨーヨーの攻撃を防御し、別の方向から飛んでくるもう一つのライジングヨーヨーをハンドガンで狙って撃った。
「厄介な奴だね。こんな奴がいるなんて思わなかった」
「そうか。俺が強いと思っているのか。それなら観念してくれ! 頼むから!」
と、テーナはそう言った。だが、セアンはにやりと笑った。
「こんな面白い戦いを終わらせるのはもったいないよ! あんたが本気を出すなら、私も本気を出すよ!」
この言葉を聞き、テーナは口を開けて驚いた。本気を出したセアンは魔力を開放し、カトラスを構えてテーナに接近した。猛スピードで接近したカイトを見て、テーナは慌て始めた。
「うわっ! ちょっと待って! 頼むから、この魔力でカトラスを受けたら俺、やられるって! お願い、手加減して!」
「あんたを倒すつもりで本気で斬る! 死にたくなければ、歯を食いしばってね!」
セアンは慌てるテーナにそう言うと、力を込めてカトラスを振り上げた。攻撃を受けたテーナは悲鳴を上げながら宙に舞い、小さく呟いた。
「あーあ……こんなことになるなら……海賊にならなければよかった……無念」
そう呟いた後、テーナの体は船の床に激突した。
ヴィーナスハンドで待機しているコスタ、ケアノス、ラージュは望遠鏡でセアンたちの戦いを見ていた。
「セアンの戦いが終わったようね」
「後はカイトとライアの戦いだけか。二人の戦いもすぐに終わりそうだね」
「三人とも、戦いが終わったら腹が減ったと言いそうだから、私何か食べるものを用意してくるわ」
「うん。お願い」
コスタはそう言ってキッチンへ向かうケアノスを見送った。そんな中、周囲を見ていたラージュが声を出した。
「あら。あの船は……」
「ん? 何か来たの?」
コスタはラージュが見ている方向を見て、声を上げた。
「うわ。あの人たちか。こんなタイミングで再開するなんて思ってもなかったよ」
「そうね。まぁ、こんな状況で会っても……ま、別にどうでもいいわね」
と、二人は話をしていた。
二人が見たのは新たな海賊船だった。その船に乗っている男は笑顔だった。
「こんな所で愛しのピラータ姉妹と会えるとは思ってもいなかったぜ! なぁ、皆!」
男は後ろにいる女性たちにこう言ったが、女性たちは欠伸をして言葉を返した。
「愛しって、何回も告白して振られたよね」
「それに、セアンちゃんたちにはカイトって彼氏君がいるのに」
女性の一人がそう言うと、男は体を震わせながら叫んだ。
「そんなことは知らん! 俺は知らん! カイトだか何だか分からないが、そんなものは俺知らん!」
男の叫びを聞き、女性の一人が呆れたようにため息を吐いた。
「あーあ、目の前の現実から逃げているよ、ウイークの奴」
ウイークと言われた男は涙を流していたが、しばらくして立ち上がった。
「気が済んだ。うし、セアンたちの所に急ぐぞ!」
と言ったが、女性たちはその場に座ってトランプで遊んでいた。ウイークは何もしない女性たちを見て、ずっこけた。
「おいおい、船長の言うことを聞いてくれよ~」
「動かない方がいいわよ。セアンちゃんたち、別の海賊と戦っているし」
「変なタイミングで割り込んだら邪魔になるし、後から叱られるよ。そうなっても、私は知らないから。船長が命令したからって言うから」
その言葉を聞き、ウイークの動きは止まった。しばらく考え込み、答えを出した。
「仕方ない。戦いが終わったらセアンたちの所に行こう。カイトって奴にあれこれ言いたいから、早く終わればいいが……」
「その前に、向こうが私たちの存在を察しているかもね」
この言葉を聞き、ウイークはヴィーナスハンドを見た。再びしばらく考え、こう言った。
「とりあえずヴィーナスハンドに近付こう。俺たちが近づいたころには、戦いが終わっているかもしれないし」
「賛成。それじゃ、動かすよ」
その後、ウイークの船はヴィーナスハンドへ向かって動き始めた。
新キャラ、ウイークとその仲間が新登場です。今回の話にがっつりと関わります。ギャグ面が多い兄貴分的キャラの位置付けで作りました。どんな活躍をするのか今後を楽しみにしてください。評価、ブクマ、レビュー、いいね、感想質問お待ちしています。応援よろしく!




