砂漠に眠る魔石
ゴイチ王国から旅立って数日が経過した。カイトたちは賞金首の海賊を倒し、襲い来る海のモンスターを倒しながら航海を続けていた。
そんなある日、カイトたちは道中倒した賞金首を連行するため、チットダケと言う島に来ていた。ケアノスはチットダケのシーポリスに賞金首を渡し、賞金を貰って宿屋にいるセアンたちの元へ戻った。
「戻ったわよ」
「こっちも今戻ったよー」
と、大きな金貨袋を担いだライアがケアノスの方に振り返った。ライアが持つ金貨袋を見て、ケアノスは声を上げて驚いた。
「いやー、私も驚いたよ。昨日倒したスケベイカが亜種でさ、珍しいからって言って高値で引き取ってくれたのよ。いやー、儲かった!」
ライアは満足したようにこう言った。ケアノスは手にしている金貨袋を見て、負けた気になった。そんな中、カイトの叫び声が聞こえた。
「どうかしたの、カイト? 何かあった?」
ケアノスが部屋に入ってみると、そこには半裸のカイトとセアンがいた。
「よかった。シャワーを浴びようと思ったら、セアンが一緒にいてさ」
「どさくさに紛れて一緒にシャワーを浴びようとしただけなのに、本当は嬉しいでしょ?~」
「いきなり入ってくれば誰だって驚くわよ。セアン、早く着替えなさい」
「へーい」
セアンは返事をし、着替えを始めた。そんな中、部屋で雑誌を見ていたコスタがケアノスの元にやって来た。
「これ見て、珍しいことが書かれているわ」
「珍しいこと?」
ケアノスと着替えを終えたセアンは、コスタが持つ雑誌を見た。そこには、砂漠の国に眠る宝と書かれていた。
「砂漠の国の宝か。何だかロマンチックな話だね」
セアンはそう言うと、ケアノスは文章を見てセアンにこう言った。
「ちゃんと文章を見て」
「どれどれ? ほう。噂だと強い魔力がこもった翡翠がデザートディッシュに存在すると。強い魔力の翡翠か。高く売れそうだね」
「強い魔力だから、かなり貴重よ。これ、いつの雑誌?」
コスタは雑誌の表紙を見て、発行された時期を調べた。
「先週号の雑誌だね。つい最近」
「最近の話ね。この話が本当なら、あらゆる場所からこの翡翠を狙って来る輩がいるわ」
「ねぇ。何だか面白そうな話をしているわね」
と、買い物から帰って来たラージュがこう言った。話を聞いていたセアンはワクワクした表情でラージュに振り返った。
「次の目的が決まったよ! 次はデザートディッシュに眠る翡翠! あるかどうか分からないけど、行ってみる価値はあるよ!」
「そうね。もしかしたら、ブラッディークローに関する奴もいるかもしれないし」
ケアノスの言葉を聞き、セアンは頷いた。
「よーし、それじゃあ早速支度して明日には行こう!」
と言って、セアンたちは支度を始めた。
翌日、カイトたちはチットダケを出港し、デザートディッシュに向けて出発した。カイトは望遠鏡で周りを見ながら、横にいるケアノスに話しかけた。
「なぁ、ここからデザートディッシュってどの位で到着するんだ?」
「スムーズに行けば一日で到着するわ。早くて夕方。まぁ、他の海賊や冒険家が来る可能性もあるから、騒動はあるかもしれないわね」
「ああ……そうだな」
カイトはシャワー中に聞いていたセアンたちの話を思い出した。最近発行された雑誌に載っていた情報のため、あらゆる場所からいろんな輩が来ると。
「変な奴がいなければいいな」
カイトは小さく呟き、ケアノスはそれに本当にそうだと反応した。
チットダケから出向して数時間経過したが、モンスターや他の海賊から襲われる気配はなく、スムーズに航海は進んだ。セアンとライアは釣り糸を垂らし、釣りをしていた。
「ふぁ~あ、何か釣れないかなー」
「そうだねー。とにかく食べられる魚だったら私は何でもいい」
「スケベイカは勘弁。下手すれば襲われるからね」
「確かに。あの触手で体中を触られたら気分悪いし」
スケベイカの餌食になりそうになったライアは、過去のことを思い出しながら気持ち悪そうな表情をした。そんな中、セアンの釣り糸が動いた。
「うおっ! 何か来た!」
「これは大物だ! 手伝うよ!」
ライアは急いでセアンのルアーを持ち、二人で力を合わせて針に引っかかった獲物を引き上げた。海から現れたのは、ノコギリの様な鼻が特徴のノコギリカジキだった。
「ノコギリカジキか。こいつは武器の素材になるけど、身が硬すぎるから食べられないからなー」
「逃がす?」
「そうだね。素材としての価値はないし」
二人は残念そうにノコギリカジキを海へ逃がした。
カイトは背中の上にラージュを乗せて、腕立て伏せを行っていた。ズライリー海賊団との戦いで、自分は未熟な戦士だと思い、暇な時間を使って体を鍛えていた。
「グッ……ウッ……」
「カイト、そろそろ休みましょう。鍛えるのもいいけれど、鍛え過ぎたら体が壊れるわ」
「そう……だな……グッ」
ラージュが上から離れた瞬間、カイトはその場で倒れた。両腕の痛みと体中に疲れが走っているため、カイトは立ち上がることはできなかった。ラージュはタオルを持ってきて、カイトに渡した。
「シャワーを浴びてきたら?」
「そうだな……汗の臭いがするだろうし……」
カイトはタオルを受け取った後、シャワールームへ向かった。その時、見張り台にいるコスタはカイトとラージュの会話を察し、大声でこう言った。
「今ケアノスがシャワーを浴びているよー!」
そう言ったのだが、コスタが叫んだと同時に大砲の音が響いた。
「何があったの!」
と、シャワーを浴びていたケアノスが慌てて部屋から出た。その時、カイトと鉢合わせした。
「ウワァッ! け……ケアノス!」
「ふぇ? キャア! どうしたのよ、カイト? まさか私と一緒に……」
「筋トレで汗をかいたから……というか、さっきの音は?」
二人が慌てていると、ラージュがやって来てこう言った。
「遠くの方で海賊同士が戦っているみたい。だからうるさいのよ」
「何だ、俺たちが襲われたってわけじゃないのか」
「そうみたいね……」
カイトとケアノスが安堵の息を吐く中、ラージュはあることを思いついた。
「さ、早くシャワーを浴びてきなさい。二人仲良くね」
「え?」
カイトはラージュの方を振り返ろうとしたが、それより先にラージュはカイトをシャワールームへ押した。そのせいで、カイトはケアノスを押すような形でシャワールームへ入ってしまった。中から二人の悲鳴が聞こえる中、ラージュは笑顔でこう言った。
「お幸せに~。余裕があれば私も入るから」
数時間後、特に異常はなく公開は進んだ。
「さっきの海賊同士の戦い以外、何もないね」
「そうだねー」
と、干し肉をかじりながらセアンとライアがこう言った。カイトとケアノスはリビングでデザートディッシュの情報を集め、コスタとラージュは上で見張りをしていた。騒動も何もないため、セアンは欠伸をしながらこう言った。
「誰でもいいからかかって来ないかなー? かーなーりー暇だよー」
「そんなこと言わないでよ。そう言ったら本当に何か起こるからさ」
ライアが笑いながらこう言うと、上にいるコスタとラージュから合図が来た。
「この合図は、私たちに向かって何かが来ている? 嘘でしょ! セアン、本当に何か来るよー!」
「おっ! 私たちに喧嘩を売るつもり? うおっしゃ! かかって来い!」
セアンは張り切りながら、カトラスとハンドガンを持って飛び出した。ライアはしょうがないなと呟きつつ、セアンについて行った。
ロビーにいるカイトとケアノスは近付いてくる海賊船を見て、相手のことを調べていた。
「こっちに来ているのはラダムキトーって奴らね」
「強いのか、そいつら?」
「うーん……船長のジナって女の賞金は……百万ネカ。それなりに強いらしいけど、ヴロミコよりは弱いかもしれないわ」
「そうか。まぁ、ヴィーナスハンドに何かあったら嫌だから、俺も戦うよ」
「ええ。お願い」
ケアノスがこう言った後、カイトは刀を持ってリビングから出て行った。
今回から新しい話が始まります。ピラータ姉妹に関する新キャラが出てきますので、どんなキャラなのか想像しながら楽しんでください。ゴイチ王国の時はちょいとだけシリアスなバトル物だったけど、今回は冒険物語です。今後ともよろしく! ブクマ、いいね、評価、感想質問お願いします!




