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暗雲と別れの時


 シーポリスがゴイチ王国から去った後、黒いローブを身に着けた男が船を見つめていた。


「ディスターソースから逃げようと考えても、無駄だ」


 男は小さく呟き、隠すように置いてあった小さな船に乗り込み、エンジンを動かした。小さな船はシーポリスとの距離を置き、存在がばれないように動いていた。




 カイトたちは病室でツリーから貰ったブラッディークローの資料を見ていた。


「ブラッディークローを束ねているのは魔女と言われる女か」


 資料を見ながら、セアンは呟いた。カイトはブラッディークローのリーダーはマッチョの男だと思っていたが、予想外のことを言われ驚いていた。


「私はゴリゴリのマッチョマンがリーダーだと思っていたけど、女がリーダーとは思わなかったよ」


 と、ライアがこう言った。その言葉を聞き、カイトは呟いた。


「俺も同じことを思ったよ」


「実は、私も似たようなことを思っていたの」


 コスタが少し恥ずかしそうに手を上げてこう言った。ケアノスはため息を吐き、口を開いた。


「相手の性別は関係ないわ。それに、大規模な組織のリーダーだから、かなり強いと思うわ。今の私たちで、勝てるかどうか……」


 ケアノスの言葉を聞き、ラージュがこう言った。


「ま、どんな奴でもサビナを滅ぼした以上、コテンパンにやっつけないと」


「ラージュの言う通りだよ。この資料、ズライリー海賊団とは別で繋がっている海賊の名前も書いてあるから、今後これを参考にして情報を集めてよう」


 セアンはそう言って、資料を置いた。それから、カイトたちはすぐに退院できるように身を休めることに専念した。




 その日の夜中、ミヤギを乗せたシーポリスの船は近くの港に停泊していた。休むために停泊しているのだが、ミヤギや他のズライリー海賊団の団員がいる牢屋の前には見張りの兵士がいた。


「ふぁーあ、交代まだかなー」


 見張りの兵士は欠伸をしながら呟いた。牢屋へ向かう通路は一つしかないが、他に侵入するとしたら牢屋の中にある小さな窓だけ。その窓は人が入れるほどの大きさはない。そのため、牢屋の中にいる囚人に合うには見張りがいる通路を通るしかない。


 見張りが欠伸をしながら周囲を見回していると、パジャマ姿のツリーが現れた。


「ツリーさん、どうかしましたか?」


「おしっこ……トイレどこ?」


 ツリーの返事を聞き、見張りは呆れてバランスを崩した。


「トイレは向こうです。ここではありません」


「連れて行って~」


「子供じみたことを言わないでください。今、俺は見張り中ですよ?」


「連れて行って~! こんな所でもらせって言うの? この変態が! ロリっ子が漏らす所を見てお前は喜ぶのか? この変態野郎!」


 と、ツリーは文句を言い始めた。見張りは呆れ、別の見張りに連絡を入れた。


「俺だ。見張りのエイだ。ツリーさんがトイレに行きたいって言って文句を言い始めた。代わりに見張りに来てくれ。すぐにだ、頼む」


「早く~!」


「悪い、ツリーさんが限界みたいだ! 少し場を離れるから、早く来てくれ、頼む!」


 連絡を終えた見張りは、急いでツリーを連れてトイレへ向かった。その時、黒いローブの男が現れ、牢屋の中に入った。


 牢屋の中にいるミヤギは、横になって眠っていた。だが、気配を感じ、すぐに立ち上がった。


「誰かいるのか?」


 そう言った後、目の前に黒いローブの男がいることを察した。男を見たミヤギは驚きながら後ろに下がり、座り込んだ。


「な……何でお前が……」


「ディスターソースの決まりだ。お前を殺しに来た。ついでに、ズライリー海賊団の連中も始末しに来た」


 男の言葉を聞いたミヤギは逃げようとしたのだが、その前に男は魔力を使い、ミヤギの首を斬り落とした。騒動を聞いたズライリー海賊団の団員も異変に気付き、ざわつき始めた。男はズライリー海賊団に近付き、魔力を開放した。


「お前たちも始末する。覚悟しろ」


 と言って、ズライリー海賊団を始末した。ミヤギとズライリー海賊団を始末した後、男は音を立てないように走り出し、シーポリスの船から脱出し、自分の小さな船に乗り込み、どこかへ去ってしまった。その間、わずか数秒だった。別の見張りが惨殺されたミヤギたちの姿を見て、すぐに連絡を入れた。


 トイレを済ませたツリーは、手を洗って自室に向かった。その時、ミヤギたちが殺されたことを察した。


「なんか大変なことになっちゃったな。ファ~ア」


 そう呟くと、欠伸をしながら自室に戻り、扉を閉めた。




 ブラッディークローの関係者は、どこかの島で集まり、会議をしていた。


「情報が少し漏れてしまった」


「ボスの正体がばれたか?」


「ばれたと言っても、性別だけだ。それ以外の重要項目は漏れていない」


「そうか。性別以外が漏れていないなら少し安心だ。女と言っても、この世には女はたくさんいるからな」


「それより、他の情報は?」


「ズライリー海賊団以外で我らとつながっている海賊の情報が漏れた」


「まぁ、その情報はいずれ流出するだろう。で、その海賊はどんな海賊だ?」


「あまり重要な海賊ではありません。ブラッディークローの名を借りるため、仲間になった奴らだ」


「我らの名前を借りて、威張りたいだけのバカな連中か。そいつらの情報が漏れてもあまりリスクはないだろう。重要な海賊の情報は?」


「ボスの情報と同じように厳重にしてあるから、情報は漏れていない。だが、重要な海賊のことを知っている下の奴らもいる。うーむ……威張る奴らの情報が漏れたことも多少のリスクがあったな」


 話し合いをしていると、参加者の一人の携帯のバイブが鳴り響いた。その参加者は詫びの一言を告げて、携帯を操作した。


「ボスからだ。ディスターソースのミヤギとズライリー海賊団は始末されたようだ」


「そうか。情報を漏らした罪は大きいからな」


「さて、会議を続けよう。これから何を狙う? パーフェクトイレイザーは地面の中、古の海賊、リティーヒが持っていると言われていたウラミニクシーミも前の騒動で消息不明。素晴らしい力を持つ道具は……あるか?」


「見当がつかないな。よし。次に何を狙うかが次の会議まで考えよう」


 参加者の一人がこう言った後、少し話をして会議は終わった。会議が終わったと同時に、テーブルの上に置いてあったカンテラの火が消えた。




 数日後、無事に退院したカイトたちはヴィーナスハンドへ向かい、旅立ちの準備をしていた。


「ライア、食料と水の準備はできた?」


「うん、バッチリ! 三ヶ月分はあるよ!」


 ライアはセアンにこう言った。セアンはラージュの方を見て、こう聞いた。


「ラージュ、医療道具はたくさん買った?」


「ええ。今回の戦いで消費した分はちゃんと買ったわ。それと、お城の人から少し貰ったわ」


 ラージュはセアンの方を向いて返事をした。その時、上にいたコスタがセアンにこう言った。


「皆、ロベリー王女が来たよ」


 コスタの声を聞き、カイトたちは下に集まった。ロベリーはカイトたちを見回し、こう言った。


「皆、本当に助かった。多数の犠牲はあったが、ゴイチ王国は救われた。我はこれから、国を復興するために頑張る」


「うん。ズミタさんも見守っているから、きっとできるよ」


 セアンの言葉を聞き、ロベリーはありがとうと呟いた。


「本当にお世話になった。もし……もし、また近くに来たらゴイチ王国に来てくれ。歓迎する」


「ありがとう。いつ来られるか分からないけど、また会いに来るよ」


 セアンはそう言って、ロベリーの手を握った。それから、カイトたちもロベリーの手を握り、一言を告げて行った。


 その後、カイトたちはヴィーナスハンドに乗り込み、出港した。その時、カイトたちはロベリーたちに向かって手を振っていた。


「行ってしまいましたね」


 と、ロベリーの横にいたメイドがこう言った。ロベリーは短く返事をした後、ずっとヴィーナスハンドを見ていた。


「いろいろあった。ズミタを失った、城も半壊した。いろんな人が命を落とした。それでも……我らは先に進む。セアンたちも同じだ。過去にいろいろ失ったが、それでも前に進んだ」


「ええ。でも、海賊が私たちに手を貸してくれるとは思ってもいませんでした」


 メイドがこう言うと、ロベリーは少し笑いながらこう言った。


「セアンたちはただの海賊ではない。美しい見た目と美しい心を持った海賊……ビューティフルパイレーツってことだな」


 今回でゴイチ王国の話は終わりです。今回この話を書いたのは、前の話が洞窟での宝探しで、人対人の戦いがあまり書かれていなかったこと。それと、カイトたちの敵対関係にあるブラッディクローのことを少し書きたかったからです。ゴイチ王国の話の途中で一話の話数を増やしましたが、このまま一話3000文字で書いていきます。かなり時間がかかるけど、頑張ります。


 今回の話でブラッディクローのボスに関する情報を少し出しました。まだ見ぬ新キャラ化、もしかしたら元々いるキャラが実はボスでしたという展開なのか? それはまだ理由です。もし、正体が分かったとしても、心の中でしまっておいてください。感想欄とかで書かれても、俺はごまかすことしかできないので。評価、ブクマ、感想質問、いいねよろしくお願いします。お待ちしています!

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