ゴイチ王国のその後
ヴロミコ、ズライリー海賊団との戦いは終わった。ゴイチ城が解放された後、カイトたちの連絡を受けたシーポリスが城へ向かい、カイトたちが倒したズライリー海賊団の団員を捕らえ、酷い仕打ちを受けたメイドや兵士たちの保護を行った。その最中、シーポリスは戦いで傷を受けたカイトたち、暴行を受けたロベリーの保護を行った。保護された時、セアンはヴロミコのその後を伝えていた。
戦いが終わった後、カイトたちは病院でしばらく入院することになった。今、カイトたちは病室のベッドの上で横になっていた。そんな中、カイトたちは心の中でこう思っていた。ヴロミコやズライリー海賊団から、ブラッディークローの情報を得ることを忘れていたと。
「あーあ、やりすぎたなー」
「ええ。私もそう思う」
セアンとケアノスはため息を吐いてこう言った。コスタはボーっとしながら窓から外を眺め、ライアとラージュはテレビを見ていた。カイトはセアンの方を向き、口を開いた。
「また次はあるかな? もしかしたら、ブラッディークローって他の海賊も傘下に入れているかもしれないし」
「そうだね。情報はないけど、傘下の海賊団を狙って情報を聞き出そう。それしかないね」
気を取り直したセアンは頷きながら答えた。そんな中、病室の扉が勢いよく開かれた。ロベリーが来たかと思ったが、病室に来たのは予想外の人物だった。
「ヤッホー! 皆、お疲れー!」
「あああ! ツリーさん!」
病室に来たのはサマリオの同期、ツリーだった。ツリーは持って来たお見舞いの品を机の上に置き、セアンに近付いた。
「話は聞いたよ。ズライリー海賊団を倒したって。また皆に助けられたね」
「いえいえ。ロベリー王女のためです」
照れながらセアンがこう言った。ツリーはカイトたちを見回し、怪我の様子を見た。
「すぐに退院できそう?」
「三日はかかると言っていました。休みができたと思って、ゆっくりします」
と、ラージュがこう言った。ラージュの言葉を聞いた後、ツリーは何かを思い出したかのようにこう言った。
「あ、そうだ! 皆に伝えたいことがあるの」
「伝えたいこと?」
コスタがこう言い返すと、ツリーは持ってきた資料を手にして話を始めた。
「少し前、この城下町にいたディスターソースの一員を倒してシーポリスに連行したでしょ? 実は、ここのシーポリスがそいつから情報を聞きだしたのよ」
この言葉を聞き、カイトは町で戦ったディスターソースのミヤギのことを思い出した。ケアノスは目を開いて驚き、ツリーにこう言った。
「聞き出したって、どうやって聞き出したの? あいつらって、口が堅くて絶対に情報を漏らさないって話なのに」
「自白剤と催眠でね。あまりいいとは言えない方法だけど、ゴイチ王国のことがあったから、どんな手でも使って情報を得たいって気持ちだったのよ」
「そう……」
ケアノスはベッドの上に座り直した。その時、病室に新たな客が入ってきた。その新たな客は多数いて、分厚い鎧を身に着けていた。
「え? 何これ?」
突如現れた兵士を見たツリーは驚いたが、兵士の間からロベリーが現れた。
「皆、怪我の様子はどうだ?」
「王女!」
セアンは立ち上がろうとしたが、怪我の痛みを感じ、立つのを止めた。ロベリーはカイトたちに近付き、話を始めた。
「本当にありがとう。皆のおかげでこの国は助かった」
「困った人を見つけたら手助けする。それがピラータ海賊団の決まりみたいなものだからね。まー、もう一つ目的はあったけど」
「ブラッディークローのことか」
ロベリーがこう言うと、セアンは頷いて返事をした。ツリーは少しおどおどしながらロベリーに近付いた。
「王女様。今回は本当に大変でしたね。我々シーポリスも、王国の復興に力をお貸しします」
「うむ。ありがとう」
その時、セアンはあることを思いついた。
「そうだ! ツリーさん、サマリオに連絡できる?」
「うーん。メッセージぐらいならできると思うわ。どうしたの?」
「創成の力を持ってきてくれって伝えてほしいの! あれがあれば、壊れた建物はすぐに元通り!」
セアンは嬉々としてこう言ったが、ロベリーはこの言葉を聞いてセアンにこう言った。
「いや、大丈夫だ」
「え? だって、創成の力があればすぐに元通りだよ」
「これ以上、皆に迷惑をかけるわけにはいかないよ」
ロベリーの言葉を聞き、ラージュが近付いた。
「気にしないでください。我々は好きでやっているのですから」
「誰かの手を借りるのも必要だが、誰かの手を借りてばっかりでは、我は人として、王女として成長しない。自分の国は自分で元に戻す。そう決心した」
ラージュは決心したロベリーの目を見て、セアンにこう言った。
「大丈夫の用ね。今の王女なら、何でもできそう」
「大変だけど、頑張ってね」
「王女なら、きっとできる」
「ファイトですよ、王女様!」
「いざとなったら、皆がいるから!」
ピラータ姉妹がこう言った後、カイトがロベリーにこう言った。
「何かあったら、俺たちも力を貸すぜ」
カイトたちの言葉を聞き、ロベリーは少し照れた。
「皆……ありがとう」
カイトたちが話をしていると、ツリーは立ち上がった。
「ごめん、用があるから私は戻るね。それと、さっき言っていたブラッディークローの情報のコピーはそこに置くから。それじゃ、また会おうね、皆!」
と言って、ツリーは手を振りながら病室から去って行った。去り際、セアンはまたねと言いながら、ツリーを見送った。
その頃、カイトが倒したディスターソースのミヤギは、ツリーが乗って来たシーポリスの船に連行されていた。一度、襲撃されたと報告を受けていたため、ミヤギの連行は厳重な警備の中で行われていた。
「こんなに警備をしても、俺は殺される……」
連行されるミヤギは、何度も殺されると小さな声で呟いていた。その言葉を聞いたシーポリスの兵士は、ミヤギにこう言った。
「この警備の中、お前を殺しに来るような奴はいない。安心して船に向かえ」
「お前たちはディスターソースを、ブラッディークローを甘く見ている。あいつらは小さな情報を漏らしただけでも、確実に始末に来る」
「気にしすぎだ。我らシーポリスがそんな奴らに倒されるものか」
と言って、兵士は笑い始めた。その数分後、ミヤギはシーポリスの船の牢屋に入れられた。その前には三人の兵士がいるため、守りは完璧だと思われた。しかし、それでもミヤギは無駄だと考えていた。
「無駄だ。お前らみたいな奴が俺を守れるものか」
兵士を見て、ミヤギは小さく呟いた。それから、カイトたちが倒したズライリー海賊団のメンバーが、次々と連行された。誰もがカイトたちの手によって倒されたため、楽に連れて行くことができた。
ツリーは走ってシーポリスの船に乗り込んだ。息を切らせて走って来たツリーを見て、兵士は声をかけた。
「ギリギリでしたよ。久しぶりにピラータ姉妹と会って話が弾むのはいいのですが、少しは時間を気にしてください」
「あーい、すいませーん。でも、いろいろと知ることができたからいい気にしないで」
と言って、ツリーはピラータ姉妹から得たズライリー海賊団のその後のことを兵士たちに告げた。ズライリー海賊団の船長、ヴロミコの最期。ゴイチ王国にあると言われていたパーフェクトイレイザーのその後を聞いた兵士は、驚いた顔をした。
「無理矢理地面を消したため、地層がバランスを崩して土が流れて、埋もれるとは運がない最期だったな」
「生き埋めは本当に嫌な死に方だよ。ぜーったいにそんな死に方は嫌だね」
ツリーはオレンジジュースを飲みながらこう言った。ゆったりとしているツリーを見て、兵士はこう聞いた。
「ゴイチ王国はどうするのですか? 現地のシーポリスがいるとはいえ、復興作業が……」
「大丈夫よ。あの国にはしっかりとした王女様がいるから。私たちの手を借りなくても、きっと立ち直るわ」
ツリーはゴイチ王国の方を見て、兵士にこう答えた。
ゴイチ王国の話はもうちょっとだけ続きます。あと少しでビューティフルパイレーツも四章目に入ります。まだ素性が分からないブラッディクローのことは、少しずつ時間をかけて素性を明かそうと思っています。評価、ブクマ、いいね、感想質問お待ちしています!




