ピラータ海賊団VSヴロミコ その2
ヴロミコは荒く呼吸をしながらカイトたちを睨んだ。一人一人の力はヴロミコより劣っているため、大した敵ではないとヴロミコは思っていた。しかし、その考えは間違っていた。焦ったヴロミコは確実にカイトたちを倒すためにブレイドアーマーを剣状にしたが、ブレイドアーマーの防御力がなくなったと考えたカイトたちはヴロミコに総攻撃を仕掛けた。
「クソッ! もう一度やるしかない! 変形しろ、ブレイドアーマー!」
ヴロミコはブレイドアーマーを変形させ、鎧にさせた。しかし、その隙にコスタが変形するブレイドアーマーに向けて何発も弾丸を放った。
「ああ! 止めろ、銃で撃つのは止めろ! 変形中はもろくなるって説明書に書いてあった! あ、しまった!」
「いいこと聞いちゃった! コスタ、もっとやっちゃって!」
セアンの言葉を聞いたコスタは頷いて返事をし、何度も変形するブレイドアーマーを狙って撃った。その結果、ボロボロに変形したブレイドアーマーが地面に落ちた。
「ああ……そんな……」
「弱点を漏らしたのが致命的だったわね」
「チェックメイトだ。あんたはもう俺たちに勝てない」
「観念しなさい」
と言って、カイト、セアン、ケアノスがヴロミコに武器を向けてこう言った。絶体絶命だと思ったヴロミコは、この状況を打破する選択がないか周囲を見回した。すると、頑丈なケースを見つけた。それを見て、ヴロミコは本来の目的を思い出した。
「そうだ。俺はこんなガキに構っている暇はない!」
ヴロミコは頑丈なケースに向かって走り出した。突如動いたため、反応が遅れたカイトたちは慌ててヴロミコの後を追った。ヴロミコはケースの前で動きを止め、ケースを叩き、下から持ち上げようとした。
「上がれ、上がれ! 何でもいい。ケースの中を見せろ!」
焦りながらヴロミコは力を込めた。その時、ケースは後ろにひっくり返り、中の物が姿を現した。それは、長方形で少し大きい消しゴムのようなものだった。
「やっと見つけた。何でも消してしまう消しゴム、パーフェクトイレイザー!」
「まずいことになりそうだ。これで!」
ヴロミコが何かを手にしたことを察したセアンは、ハンドガンの銃口をヴロミコに向けて発砲した。発砲音でセアンが発砲したことを知ったヴロミコは、パーフェクトイレイザーに魔力を込めた。魔力が注がれたパーフェクトイレイザーは光輝いた。
「実験だ。その弾丸を消してやる!」
そう言って、ヴロミコは飛んでくる弾丸を向けてパーフェクトイレイザーを振るった。弾丸に命中したパーフェクトイレイザーは光を発しながら、弾丸を消した。それを見たヴロミコは歓喜の声を上げ、セアンは驚きの声を上げた。カイトは驚いて動きが固まっているセアンを連れ、ケアノスと共に後ろに下がった。
「やばい! あいつが消しゴムを手にしやがった!」
「まずいわ。今のあいつは何でも消してしまうわ!」
「一度、コスタの所まで下がろう!」
三人は大急ぎでコスタの元へ戻り、この状況をコスタに伝えた。
「それじゃあ、私が奴を狙って撃っても意味がないってこと?」
「そういうこと。どうしよう。何をするか分からないよ」
「ここで倒す……って考えたけど、逆に消しゴムで消されるかも」
カイトがこう言った直後、ヴロミコはパーフェクトイレイザーで床を消し、そのまま下の階へ移動した。
「あいつ、逃げやがった!」
「そのままこの国から出るつもりだよ」
「逃がしたら世界が奴の手で消される! あんなのを使ったら、そんなことを考えるかもしれない!」
「急いで追うわよ!」
その後、カイトたちはヴロミコの後を追い、下の階に移動した。
パーフェクトイレイザーを手にしたヴロミコは高笑いしながら走っていた。
「これがあればブレイドアーマーなんていらない! 何でも消す、最強の力を俺は手に入れた! 俺は最強だ!」
「はっきり言うわ。あんたは最強じゃないわよ」
と、ラージュの声が聞こえた。衝撃波がヴロミコに向かって飛んで来た。ヴロミコはパーフェクトイレイザーを使い、飛んで来た衝撃波を消し去った。
「おおお! 強い魔力の衝撃波も簡単に消してしまうとは! 本当に素晴らしい」
「あらら、その消しゴムを手に入れたのね」
と、大剣を構えたラージュと、ナイフを構えたライアが姿を現した。二人の姿を見たヴロミコは、舌打ちをした。
「チッ。残りの二人がここで現れるか」
「あんた、ちゃんと本は読んだ? この本に消しゴム……パーフェクトイレイザーのことがちょっとだけ書かれていたわよ」
ラージュはそう言って手にしている本をヴロミコに見せた。だが、ヴロミコは鼻で笑ってこう言った。
「それがどうした! 今、パーフェクトイレイザーは俺の手にある! どうした? 本を読んでこれが欲しくなったのか?」
「いらないわよ。そんな危険な物」
「そうか。それじゃあ、そんな危険な物でお前たちを消してやろう!」
ヴロミコはそう言って二人に襲い掛かった。その時、無数の発砲音が聞こえた。ヴロミコは後ろを振り向いて、セアンとコスタの弾丸をパーフェクトイレイザーで消した。
「何度も同じことをやらせるな。お前たちがいくら弾を撃っても意味がないぞ!」
「それじゃあ魔力で足を止めてやる!」
カイトは魔力を開放し、氷の刃を放った。それに合わせ、ケアノスも魔力を開放して風の刃を放った。
「お前たちは知らないか。魔力で放った衝撃波も、このパーフェクトイレイザーの前では無力だ!」
と言って、ヴロミコは氷の刃と風の刃を消去した。その後、ヴロミコを挟み撃ちにした状況のピラータ姉妹とカイトだったが、何でも消してしまうパーフェクトイレイザーの前では何もできなかった。だが、ラージュが高く飛び上がってセアンたちの前に降り立った。
「皆、この本を読んで。奴が使うパーフェクトイレイザーのことが書かれているわ」
「パーフェクトイレイザー? 何それ?」
「消しゴムの名前よ。とにかく急いで。何でも消すって言っているけれど、使った奴がどんな目に合ったか書かれているわ」
セアンたちはラージュが持ってきた本を読み、声を出して驚いた。
「それじゃあ、このままあれを使っていたらアイツは……」
「そうね。ロガンの時と同じように自滅する可能性はあるわ。力を欲する者は、力に溺れるって言葉があったような気がする」
「そうだな。とにかく、皆消されないように行動しようぜ」
カイトがこう言うと、ライアもラージュと同じように高く飛び上がってセアンたちの前に移動した。
「話している場合じゃないよ。あいつ、どこか行っちゃったよ」
ライアの言葉を聞き、セアンたちはヴロミコが壁を消し、そこから逃げ出したことを把握した。
「あ! 逃げた……けど、いいのかな?」
「分からないわ。とにかく、奴を追いかけましょう」
その後、カイトたちは急いでヴロミコが開けた穴から外に飛び出した。
カイトは走る中、ラージュから教わった本の内容を思い出していた。その本には、こう書かれていた。
我が国の科学者は、消しゴムの材料に魔力や魔石を込めた消しゴムを作り出した。作った理由は、文房具に魔力を込めれば何が起こるのか知りたい。それだけだった。
作り出し、どんな反応が起こるか使ってみた。すると、消しゴムは紙に書いた文字を消すだけではなく、紙やその下の机の一部を消してしまった。恐ろしいながらも、好奇心が動いてしまった。作成者の一人が魔力を込めて、柱に消しゴムを押し当てて動かした。すると、柱の一部を消してしまった。それから少しして、その一人の指が消滅してしまった。恐らく、消しゴムを使った際に指が触れていたからだろう。それを見た製作者たちは、恐ろしいものを作ってしまったと次々と口にしていた。それから消しゴムはしばらく光っており、おそらく消しゴムに込められた魔力がまだあり、その状態だと何でも消してしまうことが判明した。
その後、製作者代表はそのことを国王に話し、城の最上階にある隠し部屋で消しゴム、パーフェクトイレイザーを封印することにした。時が流れれば、パーフェクトイレイザーはその存在を消すだろう。人も物も消してしまう物騒な消しゴムは、この世に存在しない方がよかったかもしれない。我々は、恐ろしい道具を作ってしまった。
ヴロミコとの決着は近いです。何でも消してしまう消しゴム、パーフェクトイレイザーを手にしたヴロミコをカイトたちは止められるか? 明日更新予定の次回をお楽しみください。あと、俺のツイッターで更新するとか更新を休むとかいろいろ書く時がありますので、読んでいる方はフォローの方をお願いします。では、評価、ブクマ、いいね、感想質問お待ちしています。




