開かれる秘密の扉
ロベリーを連れて隠し通路を走っているヴロミコは、下の階で戦っているサマオとホタイの魔力が弱くなったことを感じた。
「クソッ! あいつら……負けたのか……」
「残念だったな」
ヴロミコの言葉を聞いたロベリーは笑ってこう言った。その態度に腹を立てたヴロミコはロベリーを壁に強く押しあて、持っていたナイフをロベリーの目の前に突き出してこう言った。
「これ以上俺を怒らせない方がいいぞ。片目を失ったら、どうなるか分かっているだろう?」
ヴロミコを挑発すると、片目を失う。そう察したロベリーは小さな悲鳴を上げて黙った。ヴロミコはナイフをしまい、周囲を見回した。
「まずいな、奴らがここに来るのも時間の問題か。しかし、目的の消しゴムはどこにある?」
そう言いながら、ヴロミコは行動を再開した。
しばらく走っていると、ヴロミコとロベリーは扉の前にたどり着いた。その扉はとても大きく、扉の中央部分にはダイヤルのようなものが付いていた。
「これを合わせて開けろというわけか……」
ダイヤルの桁数は四つ。どの数字が正解なのかロベリー聞き出そうとしたが、ロベリーは何も知らないと言っていたため、聞くだけ無駄だとヴロミコは察した。
「さて、どの数字が正解なのか根気よくやらないと……」
呟きながら、ダイヤルの操作を始めた。ヴロミコがダイヤルの操作に集中している中、ロベリーはその場から逃げ出した。ヴロミコはロベリーが逃げ出したことに気付き、急いで魔力を開放し、風の鎖を作り出してロベリーを捕らえた。
「キャアッ!」
「じっとしていろ。お前は人質だ。今度逃げだそうとしたら、腕を切り落とすぞ」
そう言った後、ヴロミコはロベリーが逃げ出さないように風を使ってロベリーを壁に貼り付けた。
しばらくヴロミコはダイヤルを操作していたが、扉は開く気配はなかった。
「クソッたれ! どれが正解の数だよ!」
苛立ったヴロミコは、髪をかきむしりながらその場に座った。その後、冷静になったヴロミコはさっき読んでいたゴイチ王国の歴史の本を思い出していた。
「どこかに鍵があるかもしれない。確か、この国が作られたのは……」
そう呟き、ヴロミコはゴイチ王国が生まれた年代を入れた。しかし、違った。
「これは違うか。それじゃあ、二代目国王が生まれた年か?」
次に、ヴロミコは二代目国王が生まれた年代にダイヤルを合わせた。しかし、これも違った。それから当てはまる数を手当たり次第にダイヤルに合わせて行った。だが、どれも開くカギとはならなかった。
「クソッたれ! 全部違うか! 一体どの数が……」
その時、ヴロミコはあることを思った。この消しゴムに関しての情報は一切本には書いていなかったが、それらしい物を手に入れた年代が書かれていた本があった。
「そう言えば、危険な道具を見つけ、ゴイチ城のどこかに封印したって書いてあった本があったな。確か、その年代は……」
ヴロミコは本のことを思い出しながら、その年代にダイヤルを合わせた。その時、ダイヤルが急に回りだし、扉の周りの装飾品が音を立てて動き始めた。いきなり動き出したため、ヴロミコは動揺したが、扉が開くことを察し、興奮しだした。
「おお! ついに、ついに! 最強の武器が俺の手に入る! これさえあれば、ブラッディクローの中でも高い地位に就くことができる!」
そう言って急いで中に入ろうとしたが、後ろから弾丸が飛んで来て、ヴロミコの足元に命中した。それに気付いたヴロミコは小さくジャンプして弾丸をかわしたが、背後からカイトが斬りかかった。
壁に貼り付けられたロベリーは、現れたセアンを見て涙を流していた。
「ちょっと待ってね。今解放するから」
セアンはロベリーを封じていた風を破壊し、動きを封じていた縄をカトラスで斬った。動けるようになったロベリーは泣きながらセアンに抱き着いた。
「大丈夫だよ。もう大丈夫」
「セアン……うわぁぁぁぁん……」
泣き始めたロベリーを見て、セアンはあることを察した。ロベリーの体には、暴行された痕が多数残っていたのだ。
「あの野郎にやられたのね」
「ああ……頼む。あの野郎を倒してくれ」
「任せて。王女、危険な戦いになると思うから、後ろに下がっていて。敵のほとんどは私たちがやっつけたから安心してね」
セアンの言葉を聞き、ロベリーは頷いて逃げて行った。
カイトは刀を振り回し、ヴロミコに攻撃をしていた。ヴロミコはカイトの攻撃をかわしつつ、大剣を手にして反撃した。
「このガキが! 目的の物を手にするあと一歩で邪魔しやがって!」
「あんたみたいな奴が物騒な物を手にしたら、大変なことになる」
「そんなこと知ったことか。いいから、そこをどけ!」
ヴロミコは大剣の刃に風を発し、カイトに襲い掛かった。カイトは攻撃をかわし、氷の刃を作ってヴロミコに斬りかかった。
「何と!」
突如現れた氷の刃を見て、ヴロミコは動揺した。だが、すぐに我に戻ったヴロミコは後ろに下がってカイトの攻撃をかわし、大剣を突いてカイトに攻撃した。
「グフッ!」
大剣の先端を受けたカイトは後ろに転倒し、近くの置物に激突した。
「チッ、イッテェ」
「このままあの世へ送ってやる!」
ヴロミコは大剣を振り上げ、カイトを斬ろうとした。しかし、セアンがハンドガンを発砲し、ヴロミコの右腕を撃ち抜いた。
「カイトをやらせないよ!」
「グアッ! チッ、うざい!」
セアンを見たヴロミコは、左手から大きな風を発した。セアンは風を受け、飛ばされないように踏ん張ったが、しばらくしてセアンは吹き飛ばされてしまった。
「キャアアアアア!」
「セアン!」
カイトは立ち上がり、ヴロミコに向かって再び刀を振り下ろした。ヴロミコはカイトの攻撃に対し、片手で大剣を持って盾代わりにした。
「なっ! 片手で大きな剣を!」
「俺は貴様らと違って、長年も海賊をやっている。その分、力も増した!」
と言って、ヴロミコはそのまま片手で大剣を振り下ろし、カイトを吹き飛ばした。吹き飛んだカイトは壁に激突しそうになったが、何とか態勢を整え、床に降りた。刀を構えなおしたカイトを見て、ヴロミコはにやりと笑った。
「ほう。噂通りなかなかやるようだな。だが、俺の敵じゃあない」
「戦いが始まって数分も経っていないぜ。そんな時間で俺の力を見極めるなよ」
カイトの言葉を聞き、ヴロミコは大剣を構えて走り出した。
「なら、俺の攻撃を受けてみるがいい! それで、俺との差を感じろ!」
体験を持つヴロミコの走る速度は、カイトが予想以上に早かった。カイトは素早く身構えたが、それより先にヴロミコがカイトに目の前に到着し、大剣を振り回した。カイトは魔力を使って防御したが、ヴロミコの大剣はカイトが発したバリアを破壊し、カイトの体に傷を付けた。
「グワアアアアアア!」
「やはり詰めが甘いな! そんな甘さを持っていたら、この先の海では生きていけないぞ!」
「だったら! あんたを倒して俺たちは先に進む!」
カイトは大声でそう言うと、魔力を開放してヴロミコを吹き飛ばした。ヴロミコはすぐに床に着地し、迫って来るカイトを睨んだ。
「若さがあるから勢いはあるが、それだけで俺を倒せると思うなよ、小僧!」
ヴロミコは迫って来るカイトに向かって、大きな風の刃を放った。カイトはこの攻撃をかわし、魔力を使ってヴロミコに水を放った。
「水?」
いきなり現れた水を見て、ヴロミコは水から離れた。しかし、カイトが放った水はすぐに固まり、氷となった。
「凍った? 何をするつもりだ?」
「こうするつもりだ!」
カイトは氷の上に乗り、猛スピードで滑ってヴロミコに接近した。この動きを予想できなかったヴロミコは、目を開けて驚いていた。
いよいよ今回のラスボス、ヴロミコとのバトルが始まります。消しゴムは一体誰が手にするのか? カイトたちはゴイチ王国を救えるのか? この物語の結末まで見届けてください。感想質問、いいね、評価、ブクマお願いします。




