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悲劇は急に訪れる


 エイツとベルフェルを倒したコスタとライアは、カイトたちと合流して再びゴイチ城へ向けて歩き始めた。歩いている中、カイトはコスタにこう聞いた。


「なぁ、さっき戦った奴って強かったか?」


「狙撃の腕は私と同じ。ただ、奴は冷静にならなかったからそのせいで負けた」


「そうか。腕は同じだけど、状況が悪かったのか」


「うん。もし、相手が冷静になっていたらもっと戦いは長引いていたかも」


 その話を聞いていたズミタは、二人の話に入った。


「コスタさんが戦った敵は、ズライリー海賊団のスラノスかもしれません」


「スラノス? 何ですか、そのスライムみたいな名前は?」


 カイトがこう聞くと、ズミタは少し間をおいて話を始めた。


「スラノスはズライリー海賊団の戦闘専門のチーム。恐らく、私とセアンさん、コスタさんと戦った奴らよりも強い可能性があります」


「でも、私が戦った奴はあまり強くなかったよ。変な武器は使っていたけど」


 と、話を聞いていたライアがこう言った。


「チームの中でも弱い奴の可能性があります。気を付けてください。奴らの戦闘力は私でも把握していません」


 ズミタの言葉を聞き、カイトの中に緊張感が生まれた。その時、カイトたちは謎の魔力を感じた。すぐにロベリーを囲むかのような隊形を取り、武器を構えた。


「見えない敵かしら? 厄介ね」


「私が戦った敵にステルススーツと言う姿を消すスーツを着て戦う奴がいました。恐らく、それを着ている可能性があります」


「姿が見えなくなるスーツか、厄介ね」


 ラージュは大剣を構えて慎重に周囲を見回した。すると、ガラスの破片のような物がどこからか飛んで来て、カイトたちを襲った。


「気を付けて! 変なのが飛んで来る!」


「何とかしてロベリー王女を守るぞ!」


 セアンやカイトはガラスの破片を叩き壊し、ケアノスやライアはレイピアやナイフを振るってガラスの破片を跳ね返していた。コスタとラージュ、ズミタはロベリーを守るかのように武器を構え、ガラスの破片を攻撃していた。


「敵がどこかにいるわね。コスタ、遠くに敵がいたら狙撃できる?」


「この状況じゃあスナイパーライフルを使うのはきつい。セアン、ハンドガンで何とかできる?」


 と、コスタはショートソードでガラスの破片を叩き落ちしながら、セアンにこう聞いた。セアンはすぐに周囲を見回し、魔力の元を見つけた。


「そこぉ!」


 セアンは狙いに定めてハンドガンの銃口を向け、発砲した。発砲した直後、男の舌打ちが聞こえた。カイトは刀を構え、舌打ちが聞こえた方向に向かって走り出した。


「卑怯な手を使いやがって!」


 カイトは叫びながら刀を振るった。カイトが放った一閃は見えない敵を切り裂き、大きな傷を与えた。


「グッ! しくじった!」


 男の声が聞こえた。すると、電撃が鳴り響く音と共に血を流す男が姿を現した。男は傷を抑えながらカイトを蹴り飛ばし、大声で叫んだ。


「早く王女を捕まえろ! 他の奴は殺してしまえ!」


 この声を聞き、セアンたちは仲間がいることを察し、すぐにロベリーに近付いた。不安になったロベリーはズミタに近付き、こう言った。


「ズミタ……この状況どうなるのだ?」


「何が何でも王女を守ります。決して私たちから離れないでください!」


 と、ズミタは言葉を返した。その時、見えない敵がズミタに襲い掛かった。敵の攻撃はズミタの腹に命中し、腹に深い傷を与えた。


「ガハァッ……」


「ズミタさん!」


 カイトは立ち上がり、ズミタの元に近付こうとしたが、男の仲間が接近して襲い掛かった。ラージュはすぐにズミタに近付いて治療しようとしたが、その前に敵の二撃目がズミタを襲った。二撃目の攻撃は、ズミタの腹に大きな穴を開けていた。ズミタは震える手で剣を取ろうとしたのだが、敵の攻撃はさらに続いていた。強烈な破裂音と共に、ズミタの体はバラバラに吹き飛び、細かくなった体の破片は破裂した。


「ズミタ!」


 破裂したズミタを見て、ロベリーはズミタの名を大声で叫んだ。その直後、突如ロベリーの体が宙に浮いた。


「しまった! 王女が!」


 ズミタが殺されたことで動揺していたコスタだったが、すぐにロベリーが危険だと知って見えない敵に攻撃を仕掛けた。しかし、見えない衝撃によってコスタが手にしていたショートソードは宙に浮いた。


「ああっ!」


「私に任せて!」


 セアンはカトラスを構え、ロベリーを連れ去ろうとする見えない敵に攻撃を仕掛けた。しかし、周囲に散らばっていたガラス片がセアンを襲った。


「キャア!」


「セアン!」


 ケアノスは傷ついたセアンに代わってロベリーを助けようとしたが、ガラス片はケアノスたちにも襲い掛かり、足止めを受けていた。そんな中、敵の声が聞こえた。


「姫は俺たちの手に落ちた! さっさとずらかるぞ!」


「おう!」


 声を出した男はカイトに向かって魔力の衝撃波を放ち、カイトを吹き飛ばして仲間と共に去って行った。




 突如敵に襲われ、ロベリーが連れ去られた。ラージュはズミタの体の破片を見て、悔しそうに地面を殴った。


「こんな……こんなことって……」


 カイトは命を落としたズミタを見て、膝を落とした。ライアはズミタの体が破裂する瞬間を思い出して嗚咽し、コスタは四つん這いになって何度も深呼吸をしていた。


「ズミタさん……」


 コスタが深いため息を吐いていると、セアンが立ち上がってこう言った。


「皆、早くゴイチ城へ行こう。そして、早くズライリー海賊団を倒そう。今は悲しいけど、それしかできない」


 この言葉を聞いて反応しなかったカイトたちだったが、ケアノスも立ち上がってこう言った。


「セアンの言う通り。私たちがすべきことはズライリー海賊団を倒すこと。ズミタさんの無念を晴らすことにもつながるから……早くあいつらを叩き潰しましょう」


 そう言うケアノスの周りには、怒りのオーラが発していた。残酷なズミタの最期を目の当たりにしてショックを受けていたコスタとライアだったが、セアンの言葉を聞き、ケアノスの怒りを察しショックから立ち直った。


「そうだね。あいつらを倒して王女を助けよう」


「私たちの怒り、奴にぶつけてやる」


「その勢いよ」


 立ち直ったコスタとライアを見て、ケアノスはこう言った。カイトは大きく深呼吸をし、周囲を見回した。少し離れた所に、城の一角が見えた。


「あと少しで城に着くみたいだ。行こう」


「うん。奴らを倒さないと!」


 会話を終わらせ、カイトたちはゴイチ城へ向かって歩き始めた。




 ゴイチ城前では、ズライリー海賊団の手下が見張りをしていた。手下は欠伸をしながら地面に寝転がり、トランプをして仕事をさぼっていた。


「あーあ、暇だなー」


「暇ならお前もトランプに参加するか?」


「悪い、ポーカーのルールは理解していない。だったら、寝ている方がましだ」


「そうか。見ていれば理解できると思うけど」


 そんな話をしていると、トランプをしていた手下は小さな悲鳴を上げた。寝ていた手下はすぐに立ち上がったが、その直後に気を失った。


「周りの雑魚は皆倒したかな?」


「見張りは三人。かなり少ないな」


 カイトとセアンはそう言って、倒した手下を茂みの中に隠していた。茂みの中には縄とタオルを持って準備していたコスタとラージュがいて、すぐにカイトとセアンが倒した手下の身動きと口を封じた。


「さて、ここからは二手に分かれるわよ。暴れるチームと、潜入して王女を救うチーム。暴れるチームは囮みたいなものだけど……皆、暴れたいよね」


 ケアノスの言葉を聞き、カイトたちは同時に頷いた。ズミタの死を見て、カイトたちの怒りは爆発し、今すぐにでもズライリー海賊団を相手に暴れたい気持ちで一杯だった。


「どうやって決めるの?」


 ライアがこう聞くと、ケアノスは長い枝と短い枝、それぞれ三つを用意して長さが分からないように握った。


「くじ引きよ。長い方が救出チーム。短い方が暴れるチーム」


「分かった。それじゃあ私はこれ」


 セアンがくじを決めたと同時に、カイトがくじを決めて行った。くじ引きの結果、以下のようになった。




 ロベリー救出チーム カイト、セアン、ライア


 暴れる囮チーム コスタ、ケアノス、ラージュ




「チームは決まったわね。文句はない?」


 ケアノスの言葉を聞き、カイトたちは一斉に文句はないことを伝えた。


「それじゃあ行くわよ。あとで生きて会いましょう」


 その後、救出チームは城の裏側に回り、囮チームは真正面から城に潜入した。


 今回の話でズミタさんは亡くなります。いろんな作品では死亡フラグと言うのがありますが、俺はそんな物は作りません。いよいよこの話もラストスパート。ヴロミコとの戦いまで見届けてください。評価、感想質問、レビューやいいねをお願いします!

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