スラノスの魔の手
いろいろあったが、無事にレビリーを撃破し、カイトたちは一晩休むことができた。だが、カイト以外の男に全裸を見られたせいで、怒っていたケアノスの怒りはまだ収まらなかった。その様子を見たセアンとライアは、顔を見合わせてこう言った。
「怒りが収まるまでそのままいよう」
「だね。触らぬ神に祟りなし」
翌日、眠ることができたカイトたちはキャンプの片付けをし、再び城に向かって歩き始めた。歩く中、ロベリーがズミタにこう言った。
「なぁ、改めて思ったが、もう少し人数を増やした方がいいのではないか?」
「この人数で大丈夫だと私は思います。よく考えてください。大人数で歩いていれば目立ちます。それに、ピラータ姉妹の力は私の予想よりも上です」
この言葉を聞き、セアンはズミタが自分たちの力を認めたと思った。そんな中、カイトがあることを考え、ケアノスにこう言った。
「もしかしたら、昨日の奴と似たような変態が襲ってくるかもしれないな」
「その可能性はあるわね。セアンたちが戦った奴よりも、多分強いわ。変態だけど」
言葉を返したケアノスだが、まだ怒りのオーラが収まっていなかった。やばいことを思い出させてしまったと思いながら、カイトはごめんと呟いた。
そんなカイトたちを見張るかのように、遠くの木の上にいる二人組の男がいた。
「あーあ。あのホモ野郎、あっさりやられたみたいだ」
「腕に自信はあったようだが、所詮は雑魚。俺たちコンビの方が実力は上だ」
「だなだな! さーて、どうやって動く? まだ奴らは俺たちに気付いていないから、奇襲するか?」
と、一人の男が腕を鳴らしながらこう言った。相方の男はため息を吐き、言葉を返した。
「止めろ。お前の技は周りに被害を与える。俺たちの目的は王女だ。王女を殺してしまったら、意味がない」
「そうか……そうだな。あの消しゴムのありかの鍵になるかもしれないからな」
「その通り。さて、ここは俺が動く。お前は周囲を見張ってくれ」
と言って、男はスナイパーライフルを構えた。スコープの中には、カイトが映っていた。
コスタは欠伸をしながら周囲を見回していた。昨日の騒動があったせいであまり眠ることができなかったのだ。欠伸をするコスタを見て、ライアが近付いた。
「休む状況になったらコーヒー飲む?」
「うん。そうしたい。朝に一杯飲んだけど、あれだけじゃあ眠気覚ましにならない……」
と、ボーっとした様子でコスタはこう答えた。だがその直後、何かに気付いたコスタは素早く動き、カイトを押し倒した。
「おわっ! どうしたコスタ!」
「皆、すぐに後ろに下がって!」
焦った表情のコスタを見て、セアンたちは一斉に後ろに下がった。それからすぐ、遠くから発砲音がし、猛スピードで弾丸が飛んで来て、カイトいた場所に着弾した。
「う……嘘だろ。魔力を感じていないのに」
「敵に凄腕の狙撃手がいる。銃の腕があれば、魔力を使わなくても遠距離から攻撃できる」
コスタはすぐスナイパーライフルを構え、スコープを使って周囲を見回した。そして、謎の二人組を見つけた。
「いた! 一人は狙撃手。もう一人の武器は分からない。何をしてくるか分からないから注意して!」
コスタが叫んだ直後、敵の狙撃手は再び発砲した。コスタは横に移動して弾丸をかわし、反撃を行った。コスタが放った弾丸は敵の狙撃手に向かって飛んで行ったが、もう一人の男が前に出て魔力を開放し、バリアを展開した。そのせいで、コスタの弾丸は狙撃手の男に届かなかった。
「相方はバリアを使うか……」
「コスタ、私が敵に接近するよ。どこにいるか教えて」
と、ライアがナイフを持ってコスタにこう言った。コスタは少し心配しながらも、ライアに答えた。
「私が銃口を向けている方にいる。さっきのバリアで魔力を感じた? 奴らはまだあそこから動いていないわ」
「了解。狙撃手に狙われると思うから、カバーをお願い!」
「分かった。気を付けて!」
コスタの返事を聞き、ライアは猛スピードで敵に向かって走り出した。
敵の狙撃手は飛んでくるライアを見ながら、相方の男にこう言った。
「ライアがこっちに向かって走って来る。ベルフェル、相手をしてくれ」
「おう。それじゃあエイツはコスタを始末してくれよ。あいつ、いい腕だ」
「ああ。お互いに生きてまた会おう」
二人はそう話した後、ベルフェルは木の下に降り、かぎ爪を装備してライアに向かって走り出した。
近付いてくるベルフェルを見たライアは、にやりと笑ってこう言った。
「どうやら、敵さんが自ら突っ込んできてくれたようだね!」
「ケケケ! そのナイフで俺に勝つつもりか? そんな考えは愚かだと、思わせてやるよ!」
そう叫びながら、ベルフェルはかぎ爪を振り下ろした。ライアはかぎ爪の動きを見て攻撃をかわし、体を回転しながらナイフに魔力を発し、回転する体に合わせてナイフを振るった。そのせいで、ナイフの刃から衝撃波が放たれた。
「うおっと。衝撃波を出したか」
ベルフェルは衝撃波の存在に気付き、かぎ爪を使って衝撃波をかき消した。それを見たライアは驚いた顔をし、後ろに下がった。
「結構力を込めてナイフを振るったけど……」
「俺のかぎ爪はただのかぎ爪じゃないぜ。こいつはマジキルクロー。魔力に反応して硬度が上がる魔石を使っているかぎ爪だ! 相手がどんな強い魔力を使った攻撃を放ってもかき消すことができるぜ!」
「へー。すごい武器だね」
ライアはそう言いながら、ベルフェルの腹元に移動し、ナイフを突き刺そうとした。だが、ライアの存在に気付いたベルフェルは後ろに下がり、攻撃をかわした。
「チッ。避けられたか」
「避けるに決まっているだろう。俺だってナイフが刺されば痛い」
ベルフェルは深呼吸をし、構えを取った。ライアは何かをすると思い、ナイフを構えたが、その前にベルフェルはかぎ爪を大きく下から上に振り上げた。すると、爪のような形の衝撃波が発し、地面をえぐりながらライアに迫った。
「おわっ! こいつは!」
「俺の必殺技、クローウェーブ! 避けても無駄だぜ、こいつは狙った獲物を追尾する!」
大声で叫ぶベルフェルの言葉を聞き流し、ライアは後ろに下がって逃げようとした。だが、ベルフェルの言う通りにクローウェーブは後ろに下がったライアに向かって動いていた。
「嘘じゃあなさそうだね」
「嘘など言うか! とにかくだ、お前に勝ち目はない!」
得意げに叫ぶベルフェルだが、突如ライアの魔力が強くなったことを察し、何かをするつもりと察した。
「何をするつもりだ!」
「見ていれば分かるよ。あんたが衝撃波を出すなら、こっちも出す!」
ライアは高く飛び上がり、強い魔力をナイフに注いだ。その際、ナイフの刃から強いオーラが発した。
「ナイフにオーラが! そんなので俺のクローウェーブをかき消すつもりか?」
「その通りだよ! 強い魔力を消すには、それ以上に強い魔力をぶつければ消える。これ、魔力を使う時の一般常識!」
ライアはそう言って、ナイフを振り下ろした。それに合わせ、ナイフに纏っていたオーラが勢いよく飛び出し、クローウェーブに向かって行った。しばらくし、ライアが放ったオーラがクローウェーブに激突した。激しい音が鳴り響き、強い風が周囲に待った。ベルフェルは強い風から目を守るため、目をつぶってしまった。風が収まり、周囲がどうなったか確かめるために目を開けると、目の前にはライアが放った衝撃波があった。
「嘘だろ! 俺のクローウェーブが……」
ベルフェルが驚きの言葉を発している中、ライアの衝撃波はベルフェルに命中した。
サービスシーンまみれだった前回、前々回と比べて今回からバトルが多くなります。そろそろゴイチ王国の話も佳境に入るので、どんな展開を迎えるかお楽しみに。評価、ブクマ、レビュー、いいねなどお願いします。とことん応援お願いします!




