乙女の怒り
ケアノスはロベリーを連れて、木の上に避難していた。武器があればレビリーを倒せると思っていたが、武器は服と一緒に簡易テントの中にあり、レビリーはその周辺を歩いている。服と武器を取りに行くだろうと考え、周辺を歩いているのだろうとケアノスは思った。
「おいケアノス。どうするのだ? スッポンポン……バスタオルは羽織っているが、こんな状態でどうやって勝つ?」
焦ったロベリーがケアノスにこう聞いた。ケアノスは少し考えた後、右手の人差し指をレビリーに向けた。
「コスタみたいに狙撃できるか分からないけど、魔力で風を作って、弾丸を作れば……」
コスタのように風の弾丸で狙撃しようとしたのだが、それより先にセアンとライアの飛び蹴りがレビリーに命中した。
「グハァッ! お前ら、俺は電撃を発しているのにどうして痺れない!」
「そりゃ当然! 周囲に風を発しているからあんたの電撃は効かないよ!」
「バスタオルがめくれるのが気になるけど」
と、セアンとライアはどや顔でこう言った。その言葉の通り、二人は魔力で風を発し、電撃が体内に通らないようにしていた。だが、そのせいでバスタオルが動いていたが。レビリーは顔に付いた泥汚れを拭き取り、にやりと笑った。
「悪いな、ガキの生足なんて見ても俺は嬉しくないね。サービスするならその辺のロリコン野郎どもにでもしていろよ」
「そんなことしないって! ライア、もう一回あの野郎を蹴り飛ばすよ!」
「オッケー!」
セアンとライアは後ろに下がり、レビリーに向かって強烈な飛び蹴りを放った。レビリーは両手を前に出し、電撃を発した。
「このまま飛んで来るなんてお前たちは飛んだバカ野郎だな! そんな攻撃、俺の電撃で跳ね返してやるよ!」
レビリーがこう言った直後、上から何かが飛んで来て、レビリーの両腕を撃ち抜いた。
「グガァッ! だ……誰だ!」
攻撃を受けたレビリーは周囲を見回すために顔を動かした時、セアンとライアの飛び蹴りが再び命中した。
「ウッガァッ!」
「隙あり!」
「このままあんたを倒してあげる!」
倒れたレビリーを見て、セアンとライアは飛びかかった。レビリーはすぐに立ち上がり、叫び声と共に電撃を放った。木の上からセアンとライア、レビリーの攻防を見ていたケアノスは、右手に魔力を発し、強力な風の刃を放った。
「何! そこにいたのか!」
「横やり悪いわね。でも、あんたみたいな悪人相手にはルールは無用ね!」
「ナイスだよ、ケアノス! 風の刃、ちょっと借りるね!」
セアンはケアノスが発した風の刃を手にし、そのまま剣を使うかのように振り下ろした。この斬撃はレビリーの腹に命中し、深い傷を与えた。
「グファァッ! グ……こんな奴らに……」
傷を受けたレビリーは、ゆっくりとした動きで後ろに下がった。その時、強い風を発したラージュがレビリーに近付いた。
「さーてと。そろそろこんな戦いに幕を閉じましょう。乙女の裸を見た、不埒なクソ野郎に制裁を与えてあげる」
と言って、ラージュは強い風をレビリーに向けて振り下ろした。風の中にはいくつもの小さい風の刃が発生しており、そのせいでレビリーの体はズタズタにされた。
「さて、これでおしまい」
ラージュは風を止め、ボロボロになったレビリーを確認した。レビリーはボロボロになったが、まだ魔力と意識はあった。
「気合で立っている状態ね。その剣も、使える状態じゃないわね」
「黙れ……女は黙っていろ!」
レビリーは叫び声を上げながら、両手を地面にぶつけた。その瞬間に周囲の地面から雷が発し、セアンたちを襲った。
「おわっ! 地面から雷が!」
「魔力を地面に埋め込んで発しているようだね。避けるしかないよ!」
セアンとライアは慌てながら雷をかわし、ラージュもレビリーから下がった。ケアノスは慌てるロベリーを抱え、小さな声でこう言った。
「コスタのいる場所まで飛びます。しっかりとつかまってください!」
「へっ? 飛ぶ?」
ロベリーがこう聞き返したが、ケアノスは離れた所にいるコスタの元へジャンプした。ロベリーが大きな悲鳴を発してしまったため、レビリーに居場所がばれてしまった。ロベリーの存在を察したレビリーは、雷を使って大きな手を作り出した。
「王女様見つけた! さて、仕事に取り掛かるか!」
「しまった!」
ラージュは風の剣を作ってレビリーの雷の手を斬ろうとしたが、ラージュの行動を察したレビリーはラージュに向けて電撃を放った。
「グウッ! まだ……こんな力が……」
「悪いな。俺はまだ戦えるぜ。あんたの風で深い傷を負ったがなぁ!」
感電するラージュに向けて、レビリーはこう言った。それからすぐにロベリーを抱えたケアノスの方を向き、雷の手を動かした。
「取ったぁ!」
雷の手に何かの感触がしたため、レビリーはロベリーを捕まえたと考えた。しかし、雷の手が持っていたのはバスタオルだった。
「え? 何で? 王女じゃない」
「何で? じゃないわよ……この変態野郎!」
と、ケアノスの震える声がした。雷の手がバスタオルを奪ってしまったため、ケアノスは完全に裸となってしまったのだ。手で恥ずかしい部分は何とか隠しているが、それでも完全に隠し切れなかった。レビリーはケアノスの方を見て、深いため息を吐いた。
「何だよ、お前のバスタオルか……つまらない。ほら、これ返すよ」
前に出されたバスタオルを見て、レビリーのこの言葉を聞き、ケアノスの怒りが爆発した。その後、激しい風の音とレビリーの悲鳴が轟いた。
一方その頃、気を失っていたカイトとズミタは動けるようになり、セアンたちを探していた。
「魔力を感じた。近くにいるはずだ!」
「皆は全裸だから……うまく戦えていないようだけど……多分」
カイトは激しい風の音を聞き、こう言った。その時、上から多数の傷を負ったレビリーが飛んで来て、地面に激突した。
「来たぞ! 何故かボロボロだが……」
「何をするか分かりません。様子を見ましょう」
カイトはズミタにこう言った。カイトの声を聞き、レビリーは下品な声を出した。
「ケケケ……どうせくたばるなら、可愛いショタを汚してからくたばりたいなぁ……俺はそっちの方が好きだからなぁ」
この言葉を聞き、カイトはレビリーがどんな男か完全に把握した。レビリーがカイトに襲い掛かろうとしたその時、空から現れたケアノスが風を使ってレビリーに一撃を与えた。
「私の好きな人に変なことをしないでよ、この変態野郎!」
強烈な風はレビリーに命中し、そのままドリルのような動きでレビリーと共に地面にめり込んだ。攻撃が合った直後からレビリーの悲鳴が聞こえていたが、奥深くにめり込むにつれてレビリーの悲鳴は聞こえなくなった。
「ふぅ……やっとくたばったようね」
ケアノスはこう言うと、その場に座り込んだ。カイトはケアノスに近付き、涙を流しながら抱き着いた。
「ありがとうケアノス! 早く来てくれなかったら、俺……とんでもないことになっていたよ。助かった……本当に助かった」
「落ち着いてカイト。あのクソ変態野郎は地面の奥深くで眠ったから、安心して」
と言って、ケアノスはカイトを抱きしめた。その直後、二人の抱擁を目撃したセアンの声が聞こえた。
「あー! ケアノス、バスタオルの姿でカイトに抱き着いている! 羨ましい!」
文句を言うセアンに対し、冷静になったロベリーがこう言った。
「何かあったじゃないか? カイトの奴、泣いているし」
「敵に出も襲われたのよ。さ、すぐに着替えましょう」
コスタはそう言ってロベリーやライアたちと一緒に更衣室のテントへ向かった。それからすぐ、ケアノスは今の状況を理解し、顔が赤くなった。
「か……カイト……今のことは忘れてね」
「ああ。恥ずかしいからな……お互いに」
と、ケアノスと同じように顔が赤くなったカイトはこう言った。
タグにも書いてあるように、たまーに温泉回とかいろいろ書くつもりです。バトル回も好きですけど、たまにはちょっとした平和な話もあった方がいいよね。
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