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怒りと憎しみに身を任せ


 ズミタが敵を殺した。この事実をカイトたちが知ったのはズミタがテルスの心臓を切り裂いた直後だった。今まで感じていたテルスの魔力が、急に消滅したからだ。


「魔力がいきなり消えたけど……ズミタさんが戦っていた相手の魔力か」


「おかしいわね、普通に倒しても魔力は微妙に感じるのに……全然感じなくなったわ」


 ケアノスはおかしいと思いながらロベリーに近付いた。ロベリーは呆れたような顔をしており、ため息を吐いていた。その様子を見ていたラージュは、ロベリーにこう聞いた。


「王女、もしかしてズミタさんは敵を容赦なく殺すことができる人なのですか?」


 この質問を聞き、カイトが声を上げて驚いた。カイトから見て、ズミタはクールで物静か、だけどロベリーを必ず守るという使命を持っている真面目な男に見えていた。そんな男が、悪人相手だが人の命を奪うとは思ってもいなかったからだ。ロベリーは唸り声を上げながら、コスタの質問に答えた。


「ああ。奴は我を守るためなら人の命を奪う。ためらいもせずに」


 答えを聞いたカイトたちは動揺した。まさか、ロベリーを守るために人の命を奪うとは思ってもいなかったからだ。


「ちょっと待って、ちょっと待ってよ! じゃあ急に魔力が消えたのもまさか……」


 慌てながらライアが言葉を発した。その言葉に対し、カイトやケアノス、ラージュは反応しなかった。誰だって、ズミタが人を殺したと思いたくなかったからだ。


「そ……そんな物騒な人と一緒に行動していたなんて……」


「落ち着いてライア。とりあえず……詳しい話は皆が戻って来たからにしましょう」


 動揺を抑えながら、ケアノスは体中を震わせているライアにこう言った。




 セアンはルックの激しい攻撃をかわしていた。仲間であるテルスが殺されたことを察し、それがきっかけで怒り出したのだ。


「うおおおおおお! 早くくたばれ! 俺は早くテルスを殺した奴を殺しに行きたい!」


「仇討ちで戦いたいらしいけど、そんなことはさせないよ!」


 セアンは迫って来たチャクラムに対し、カトラスを振るって弾き返した。弾かれたチャクラムは宙に舞ったが、ブーメランのような動きをしてルックの元に戻って来た。


「チッ、いい加減負けを認めてくたばれ! そしてさっさとそこをどけ!」


「嫌だね。それより、冷静になった方がいいと思うよ。頭に血が上ったら余計なことしか考えられなくなるよ」


「うるさい、黙れ! 仲間を殺された怒りと悲しみ、貴様に理解できるか!」


 叫び声を上げながら、ルックはセアンに接近した。セアンは後ろに下がりながらハンドガンを構え、ルックの足元に向かって発砲した。数発撃った結果、一発がルックの右足に命中した。


「グガッ! クソッ! ふざけたことを!」


「海賊の戦いにルールはない。その前に、今のあんたじゃあ私を倒すことは絶対にできない。仇討ちなんて、諦めなよ」


 溜息を吐きながら、セアンはこう言った。その言葉とセアンの態度を見て、更にルックは怒りを爆発させた。


「クソアマ! これ以上俺を侮辱するな!」


「あーあ、こうなったらどうしようもないね」


 セアンは走って来るルックを見て、呆れてため息を吐いた。そんな中、ルックはチャクラムを変形させた。


「あ、変形した」


「こいつはブレイドチャクラム。チャクラムモードとロングソードモードの二つの姿がある」


「投げてもよし、接近して斬るのもよし、か。接近戦も遠距離もできるってわけか」


「その通りだ! こいつの斬撃を受けてくたばれ!」


 と言って、ルックはロングソードモードに変形させたブレイドチャクラムをセアンに向けて振り下ろした。セアンは攻撃をかわし、魔力の風を発した。しかし、ルックは瞬時にブレイドチャクラムをチャクラムモードに変形させ、魔力を開放した。


「もう一ついいことを教えてやる。こいつは盾にも使えるのだ!」


 ルックは盾にするかのようにブレイドチャクラムを構えた。すると、チャクラムの内側に大きなバリアが発し、セアンが放った風を消し去った。


「万能な武器だね。でも、それが戦いの勝利につながるってわけじゃないよ」


 驚きつつも、セアンはにやりと笑ってこう言った。ルックは動揺しないセアンを見て、怒りと同時に不信感を覚えた。これだけ万能な武器を見ても、セアンは勝つ気でいるからだ。


「お前に勝利の道はない。何を考えているか分からないが、これで終わりにしてやる!」


 と言って、ルックは再びブレイドチャクラムをロングソードモードに切り替え、セアンに斬りかかった。セアンはカトラスを構え、ルックに向かって走って行った。


「斬り合いをするつもりか! だが、刃の長さは俺の方が上だぞ!」


「残念! あんたと斬り合いだなんてしないよ!」


 セアンはルックに接近する少し前にジャンプした。ルックはどうしてジャンプしたと考えたが、セアンの狙いがルックの持つブレイドチャクラムであることをすぐに理解した。


「何をするつもりだか分からないが、近付いてくるなら好都合だ! このままお前を斬ってやる!」


「悪いけど、そんな剣の腕じゃあ私を斬ることはできないよ!」


 二人の叫び声が同時に響いた。それから少しして、剣が降る音が鳴り響き、間を開けて何かが落ちる音がした。ルックは自分が持つブレイドチャクラムを見て、目を開けて驚いていた。


「そ……そんな……俺の……俺のブレイドチャクラムが……」


 ルックが持つブレイドチャクラムは、セアンのカトラスの一撃で壊れていた。セアンはブレイドチャクラムの変形の軸となる部分に向かってカトラスを振り下ろしていたのだ。


「頑丈にできていると思っていたでしょ? 意外とそうじゃないのよ。あんた、何年もその武器を使っているでしょ? 手入れはしていると思うけど、長い間使っているとどうしても劣化するのよ。だから、私の一撃で簡単に壊れるの。変形する部分って、他の場所と比べて劣化が早いよ」


 両腕を腰に当て、誇らしげにセアンはこう言った。ルックはその言葉を聞き流し、折れたブレイドチャクラムの部品を持ち、魔力を開放した。


「これで勝ったわけじゃないぞ! 勝負はこれからだ!」


「あらまぁ。折れた部品を使って二刀流ってことか。私も似たようなスタイルで戦っているけど、経験しないと結構難しいよ」


「うるさい! 黙れ! その減らず口、二度と聞けなくしてやる!」


 ルックは叫び声を上げながらセアンに向かって走って行った。そして、何度もブレイドチャクラムを振り回したが、セアンは攻撃をかわしていた。


「クソッ! 二つの武器を使っているのに、どうして当たらない!」


「二つの武器を使うと、ややこしいことになるから逆に攻撃の速度が下がるのよ。そのせいで、攻撃を見切るのが楽になる」


 と言って、セアンはルックが持つブレイドチャクラムに向けて、魔力の弾丸を放った。魔力の弾丸はブレイドチャクラムを破壊し、消滅した。


「ああっ! クソ!」


 ルックは残ったブレイドチャクラムでセアンに斬りかかろうとしたが、まだ魔力の弾丸は残っており、残った弾丸がブレイドチャクラムを撃ち抜いた。


「そんな……」


「早く戦いを終わらせたいって言っていたでしょ? あんたの言う通り、戦いを早めに終わらせてあげたから、感謝の一言が欲しいな」


 セアンはそう言って、魔力を開放した。武器を失ったルックは対抗して魔力を開放したが、セアンはその前にルックに接近し、カトラスを振るっていた。


「なっ……」


「はいおしまい。私もいろいろとズミタさんに聞きたいことがあるからさ……さっさと倒れてよね」


 セアンがそう言った後、ルックの腹から血が流れた。それから少しして、ルックは静かに倒れた。セアンは倒れたルックを背負い、ため息を吐いて小さな声で呟いた。


「さーてと、後でどうして敵を殺したか話を聞かないとね……」


 そう呟いた後、ズミタに言う言葉を考えながら、セアンはその場から去って行った。


 この物語が面白いと思った方は、ブックマーク、評価、いいねをお願いします。皆様の評価が自分の励みとなります。よろしくお願いします。感想、質問、レビューもお待ちしています。


 ゴイチ城へ向けて移動している途中ですが、あと少しで今回の話の大詰めであるゴイチ城での激しいドンパチの話が始まります。バトル回がどんどん増えるので、バトル好きは注目していてください。

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