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守るためなら容赦しない


 ズミタと戦っているテルスは鼻血を手で拭い、ズミタを睨んだ。ステルススーツを着ているが、ズミタは居場所を察知する。格闘能力もズミタの方が上であるとテルスは感じた。しかし、少しでも隙ができるはずと思い、テルスはズミタを睨んだ。テルスが何かをすると予感したズミタは、テルスが行動を起こす前に走り出した。


「何をするか分からないが、覚悟しろ」


「ヘッ、カッコつけたセリフを言いやがって! これでも喰らいやがれ!」


 と言って、テルスは足元を蹴り、ズミタの顔に目がけて砂利を飛ばした。飛んで来た砂利から顔を守るため、ズミタは両腕で顔を覆った。その隙にテルスは小さなナイフを装備し、ズミタの腹に突き刺そうとした。


「死ねぇ!」


 これであいつは死ぬだろうとテルスは思った。しかし、ズミタは顔を両腕で覆ったまま、しゃがんでいた。その結果、テルスのナイフはズミタの左腕に命中した。


 心臓を狙ってナイフを刺そうとしたが、狙いが動いてしまった。この結果にテルスは動揺したが、逆に自分が有利な状況になったと把握した。ナイフはズミタの腕に深く刺さっている。これでズミタは左腕が使えなくなったと確信したからだ。


「死にはしなかったが、左腕が使い物にならなくなったなぁ。どうする? 今なら謝れば楽に殺してやるぜ?」


 と、テルスは笑いながらこう言った。しかし、立ち上がったズミタは左腕に刺さったナイフを抜き取り、素早く治療した。


「その必要はない。こんな傷、すぐに治る」


「チッ、魔力の治療ができる奴か」


 テルスは舌打ちをした後、ズミタを睨みながら構えを取った。


 それからしばらく、二人は動かなかった。何もしないズミタを見て、テルスは不気味な奴だと思った。次にどう動くのか、一体何を考えているのか分からないからだ。


「おい、一歩も動かないじゃないか。おしっこでもちびったか?」


「強がるな、小物が。腕に自信があるなら、お前の方から私を殺しにきたらどうだ?」


 と言って、ズミタは右手を動かして、かかって来いとジェスチャーした。テルスは挑発された、バカにされたと認識し、怒りだした。


「俺を雑魚だと思うなよ! あの世に逝っても後悔するなよ? 俺を怒らせたお前が悪いのだからな!」


 怒りの感情をあらわにしたテルスは、ステルススーツを使おうとした。しかし、最初にズミタと遭遇した時に、ステルススーツが故障したことをテルスは忘れていた。


「しまった……」


「マヌケ野郎だな、お前は! 私がスーツを壊したことを、ちゃんと覚えておけ!」


 ズミタは動揺するテルスに接近し、右足で蹴りを放った。勢いよく蹴られたテルスは近くの大木に激突した。木の葉が落下する中、テルスは歩いて近付いてくるズミタを睨んだ。


「クソ野郎が! 次は貴様が痛い目に合う番だ!」


 これ以上攻撃を受けてたまるかと思いながら、テルスは右手にナイフを装備してズミタに接近した。


「ほう。またナイフで斬るつもりか。やれるものならやってみろ」


 ズミタはにやりと笑い、ナイフを持って叫び声を上げるテルスにこう言った。テルスは叫び声と共にナイフを振り回したが、ズミタはこの攻撃を全てかわしていた。


「クソッ! 少しくらい当たってもいいだろうが!」


「当たってたまるか。ナイフの刃が命中したら、痛いからな」


 ズミタはそう言って、テルスの右手を掴んだ。強く握られたせいか、テルスは手にしていたナイフを落としてしまった。


「ぐッ……がぁ……」


「おいおい、勢いだけか? そんな腕で、よくズライリー海賊団の一員として働けているな」


「この……クソ野郎が!」


 テルスは左手のフックでズミタに攻撃を仕掛けた。その際、ズミタは電気の魔力を左手に発し、攻撃をした。その攻撃によって、ズミタの服が少し破けてしまった。


「おいおい、男の私を全裸にしてどうするつもりだ?」


 と、ズミタはテルスにこう言った。ズミタの体を見て、テルスは動揺した。ズミタの体には、多数の傷跡があった。


「な……何だよ……この傷は……」


「王女を、皆を守るために鍛えた証だ。お前には一生分からないだろう。守りたいものがあるから、私は強くなった。守りたいものがあるから、人は強くなれる」


「うるせぇ! 名言ぶって偉人のつもりかクソ野郎! どれだけ傷を負おうが、俺には関係ない! 俺のナイフの傷でぶっ殺してやるよ!」


 テルスは暴言を吐きながら落ちたナイフを拾い、魔力を開放した。強い魔力を開放したせいか、テルスの足元から強い電撃が放たれた。その衝撃で、テルスは高く飛び上がった。


「ほう。雷の魔力を使って飛び上がったか」


「フハハハハハ! いくらお前が強くても、上空からの攻撃は対処できないだろう! これでも喰らってくたばれ!」


 そう言って、テルスは雷の魔力をナイフに込め、振り回した。ナイフの刃から刃状の衝撃波が発し、ズミタに襲い掛かった。ズミタは刃の衝撃波をかわし、どんな攻撃か考えた。


「ナイフの刃で作った雷の衝撃波か。剣士が遠距離で使う手だな。鍛えた剣士なら、誰でもできる」


「誰でもできる? それじゃあこれはどうだ?」


 テルスは勢い良くナイフを突き出した。ナイフが突き出されたと同時に、刃に纏っていたオーラが、ズミタに向かって勢いよく飛んで来た。この攻撃は危険だと察したズミタは、ジャンプして攻撃をかわした。


「チッ、かわしたか……と思ったか!」


 テルスの言葉を聞き、ズミタは驚いた表情をした。下を見ると、地面に突き刺さった刃のオーラがズミタに向かって飛んで来ていた。


「方向転換もできるのか!」


「何でもできるさ! 刃の衝撃波をやる際の応用だ!」


 勝ち誇ったかのようにテルスはこう言った。ズミタが舌打ちをしたと同時に、下から飛んで来た衝撃波に命中した。


「が……はっ……」


 ズミタは口から少量の血を吐き、地面に落ちて倒れた。この攻撃でズミタを倒したと思ったテルスは、意気揚々としながらズミタの元へ近づいた。


「やーっとくたばったか。どれどれ、奴の死に顔を拝みましょうかねぇ」


 ズミタが死んだと思い込んだテルスは、ズミタの顔を見ようとした。その瞬間、ズミタは目を開けて起き上がり、魔力で作っていた刃でテルスの腹を突き刺した。魔力の刃はテルスの腹を貫通するほど突き刺さっており、この攻撃で受けたダメージが深いとテルスは察した。


「がっ……お前……死んだはずじゃあ……」


「やられたふりだ。攻撃に命中したが、魔力を使って防御をしていた」


「クソッ……格闘以外にも、魔力を使う技術もあるのかよ……」


 と言って、テルスは血を吐いた。こんな状況だが、テルスは自分が死なないと思っていた。理由は一つ、ピラータ姉妹は絶対に人を殺さないと知っているからだ。


「ヘッ……お前もピラータ姉妹の一味なら、俺を殺さないはず……」


「今、私と王女はピラータ姉妹と一緒に行動しているが、海賊の一味になった覚えはない。そして、彼女たちと違って私は優しくはない」


 ズミタの言葉を聞き、テルスはこれからどうなるのか察した。ズミタはテルスの腹に突き刺した魔力の刃を動かし、テルスの心臓を切り裂いた。心臓を切り裂かれたテルスは目を開き、その場に倒れた。




 テルスの魔力が消えた。セアンとルックは同時にこのことを察し、動揺した。


「テルスの野郎……あいつ……」


 ルックはテルスが死んだことを察し、怒りで体が震えていた。セアンはズミタが容赦なくテルスを殺したことを知り、動揺していた。


「ズミタさん……簡単に人を殺すだなんて……やりすぎだよ」


「仲間を殺しやがって! 絶対に許せない! お前を殺して、テルスを殺した奴をぶっ殺してやる!」


 ルックはそう言って、刃状のチャクラムを振り回し始めた。


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