現れる敵
休んでいたセアンは、謎の魔力が近付いてくることを察し、立ち上がった。
「敵が来るみたいだね。こっちに向かって来ているよ」
「俺たちがここにいるのを察したのか?」
「さっきのヘイトモンキーのせいだよ。あいつらと戦っている時に、魔力を使ったから」
カイトとライアは会話をしながら立ち上がり、武器を構えた。そんな中、コスタがカイトとライアに座ってと一言呟いた。
「今度は私がやる。二人は休んでいて」
「大丈夫か、コスタ?」
「うん。大丈夫」
コスタはカイトにこう返事をして、スナイパーライフルとショートソードを用意した。その横では、セアンが準備運動をしながら立ち上がっていた。
「じゃあ私も行くよ。カイトはディスターソースと戦ったし、ケアノスはヘイトモンキーのボスと戦った。だから、もう少し休んでいてよ」
「ああ……分かった」
「それじゃあ、ここで私たちはロベリー王女の護衛をするわ」
「うん。お願い」
返事をした後、セアンとコスタは敵の方へ向かって行った。それから少しした後、ズミタが立ち上がった。
「敵の数は三人のようですね。二人では分が悪い」
ズミタがこう言った後、ロベリーが慌てながら声をかけた。
「ちょっと待て! お前も戦うつもりか?」
「はい。王女を守るのが私の役目。王女を襲おうとする輩を排除してきます。カイト様、ケアノス様、ライア様、ラージュ様。王女をよろしくお願いします」
と言って、ズミタは行ってしまった。その時のズミタの足の速さを見て、ラージュは驚きながら呟いた。
「あら、結構足が速い」
セアンは道の真ん中、コスタは木の裏に隠れて敵が来るのを待っていた。二人が到着して数分後、セアンは敵の魔力を感じてハンドガンを発砲した。
「おわっ! いきなり弾が飛んで来た!」
「俺たちの魔力を察したみたいだな」
敵の話声が聞こえた。敵もこの声で存在がばれたと察し、セアンとコスタの前に姿を現した。
「はっ。ピラータ姉妹のリーダー格がお出ましか」
「噂通り、美人だな。どうだ? 一緒に寝ないか?」
敵の言葉を聞いたセアンは、舌を出して挑発し、こう言った。
「あんたらみたいな品がないバカとエッチなことはしたくないわよ!」
「これは残念だ。まぁこんなくだらない話はどうでもいい。俺たちは王女に用がある。先に行かせろ」
「嫌だね。あんたらはここで倒す」
「女のくせに生意気なことを言いやがって。腹が立ったから……やっぱりぶっ殺す!」
敵の一人が変わった二つの刃を取り出し、セアンに斬りかかった。セアンは男の斬撃をかわし、ハンドガンの銃口を向けた。しかし、敵の仲間がセアンに向けて弓矢を構えていた。それを察したコスタはスナイパーライフルを撃ち、弓矢を使う男に攻撃を仕掛けた。
「狙撃手のコスタか! おい、俺はコスタを相手にするから、お前はセアンと戦え!」
「分かった。あいつはどうする?」
「三対二だ! 余ったアイツはロベリー王女の元に向かわせろ! おい、話は聞こえたか? 分かったら返事をしてくれ!」
敵がこう叫ぶと、見えない場所から敵の声が聞こえた。
「分かった。言われた通り、王女の元へ向かう」
「ああ、頼んだぜ!」
「任せろ」
見えない敵はそう返事をした。セアンは急いで見えない敵を探し出そうとしたが、目の前の敵がセアンを襲った。
「よそ見をするなよ! お前の相手はこのルックだ!」
もう一人の敵は猛スピードで走りながらロベリーの元へ向かっていた。しかし、その途中でズミタと遭遇した。
「誰だ、お前は?」
「お前に名乗る必要はない。お前はここで死ぬ」
ズミタはそう答え、剣を抜いた。敵は背中のナイフを取り出し、深く深呼吸した。その直後、敵の姿が消えた。
「どうだ? 驚いたか? 俺は自分で作り出した特殊なスーツを着ている。魔力を使って、姿を消すスーツ、ステルススーツだ。これでどこにいるかは分からないだろう」
「バカかお前は? 魔力を使う以上、魔力を探知すれば居場所が分かる」
と言って、ズミタは素早く敵に接近し、剣を振り上げた。目の前の空間から鮮血が流れ、閃光を放ちながら敵の姿が現れた。
「グッ……俺のスーツが……」
「姿を消して攻撃するつもりだったが、こんな子供だましの手に引っかかる私ではない。大人しくしろ」
ズミタは敵に剣の刃を突き付けてこう言ったが、敵は左手の裏拳でズミタに攻撃を仕掛けた。突如動いた敵に動揺したズミタだったが、ズミタは冷静に敵の裏拳を受け止め、右手の拳で敵の顔面に攻撃をした。攻撃を受けた敵は小さな悲鳴を上げながら、鼻血を流した。
「弱いな、お前は。この程度で王女の命を取りに来たのか?」
「ヘッ、挑発するなよ! 優男さんよぉ! このテルスを怒らせたらどうなるか、その身を持って教えてやるよ!」
と言って、テルスは魔力を開放した。
弓を使う敵、ローシは深呼吸をしてリラックスしていた。スナイパーライフルと弓、狙撃的にも威力的にもスナイパーライフルの方が上である。しかし、それでもローシが弓を使う理由があった。
「さて……頃合いだな」
と言って、ローシは水の魔力を使い、上空に向けて発した。それから少しして、水の魔力は雨のように降りだした。
突如振り出した雨に困惑しながら、コスタは周囲を見回した。
「この雨は……魔力で作られたものだ」
すぐにこの雨がローシの魔力で作られた雨だと察し、急いで雨から逃れようとした。しかし、雨はコスタの予想よりも広範囲にわたって降っており、逃れることはできなかった。周囲の木々によってそれなりに雨を防ぐことはできたが、完全に防ぐことはできなかった。
相手が雨を降らせた理由が必ずある。だから、この雨に濡れてはダメだ。
そう思いながら、コスタは雨宿りする場所を探した。その時、後ろから矢が猛スピードで飛んで来た。風邪を切る音で矢の存在を察し、コスタは攻撃をかわすことができた。それと同時に、敵の居場所を把握することができた。コスタはすぐにスナイパーライフルを構えて反撃しようとするが、スナイパーライフルを見て、コスタは驚いた。
「嘘……錆びている!」
コスタが持つスナイパーライフルには、錆ができていた。特殊な素材でできたコスタのスナイパーライフルは、錆び付かないようにできていたはずだった。どうして錆び付いたと思ったコスタは、ローシが降らせた雨を見て察した。急に錆び付いたのは、この雨のせいだと。
反撃をしなかったコスタを見て、ローシはニヤリと笑った。ローシが銃ではなく弓を使う理由は、魔力を使って銃を錆らせる雨を降らせ、敵の攻撃手段を潰すためである。
これでコスタのスナイパーライフルが使えなくなったと思ったローシは、コスタの魔力を探知して、矢を放った。魔力を込めて放った矢は、コスタの魔力を探知して追尾する機能を持っている。そのため、何もできないコスタはこれで死ぬとローシは察した。
矢を放って数分後、ローシは矢がコスタに命中しただろうと思い、周囲の探索を始めた。
「奴の死体はこの辺りにあるはずだが……」
そう呟き、ローシはコスタの死体を探した。しばらく歩きまわると、ローシはある物を見つけた。それは、先ほど放った矢である。だが、その矢は何かで斬られ、折れていた。
「何! 俺の矢が!」
「残念だったね。私の武器はスナイパーライフルだけじゃないよ」
後ろからコスタの声が聞こえた。背後を取られたと思ったローシは振り返ったが、その前にコスタがローシの首元にショートソードを当てていた。
「グッ……ショートソードを持っていたのか」
「予備の武器ぐらい、ちゃんと用意しているわ」
「そうか……銃しか使わないと思っていたが、俺の見当違いだったな!」
ローシは右の肘でコスタを攻撃した。この攻撃を受けたコスタは怯んだため、その隙にローシはコスタから距離を取った。コスタは嗚咽しながらショートソードを構え、ローシを睨んだ。
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