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ヘイトモンキーのボス


 ゴイチ城へ旅立ったカイトたち。だが、その途中でヘイトモンキーという猿のモンスターの群れに襲われる。ボスがいるかもしれないと考えたライアは、コスタと協力して周囲を調べてボスの存在を知る。それを聞いたケアノスは、コスタとライアの方を向いてこう言った。


「カイトとセアン、ラージュは王女の護衛で大変だから、私がボスを倒してくる」


「ボスは他の奴より強いかもしれないよ。大丈夫?」


「ええ。もし、怪我して帰ってきたら、ラージュにすぐ手当てをしてくれって言っておいて。それじゃ、行ってくるわ!」


 話を終え、ケアノスは猛スピードで大きな木に向かって走り出した。ケアノスがボスの所へ向かうことを察したヘイトモンキーは、ケアノスからボスを守るために襲い掛かったが、コスタの狙撃がヘイトモンキーを撃ち抜いた。


「ありがとう、コスタ」


 ケアノスは小さく呟き、ボスの元へ向かった。




 ヘイトモンキーのボスは、近付いてくるケアノスを見て、下の木の枝にいる部下に向かって叫んだ。声を聞いた部下は頷いた後、地面に降りてケアノスに襲い掛かった。


「まだいるのね」


 呆れたようにこう言った後、ケアノスは少しだけ魔力を開放してレイピアの攻撃力を上げ、襲い掛かって来たヘイトモンキーを一刀両断した。簡単に倒された部下の死体を見たボスは、怒りの声を上げながら地面に降りた。地面に着地した瞬間、地響きが周囲に響いた。


「かなり大きいわね。ボスだからでかいって言っていたわね」


 ケアノスがこう言った後、ヘイトモンキーのボスはケアノスに近付いて爪を振り下ろした。素早い動きを見たケアノスは驚いたが、攻撃される瞬間にケアノスは後ろに下がり、攻撃をかわしていた。が、爪はケアノスの予想よりも長く、少しだけ服が傷付いてしまった。


「服が……グッ!」


 爪の切れ味を察したケアノスは、攻撃力も他のヘイトモンキーよりも高いことを知り、どうやってボスを倒そうか考えた。だが、ボスはケアノスに考える隙を与えなかった。ボスは大きな声を上げながら何度も爪を振り回した。ケアノスは攻撃をかわしていたが、ボスの爪に命中した木々は倒れ始めた。攻撃後、ケアノスはボスの爪を見た。何本もの木を切り倒したが、ボスの爪に傷はなかった。


「かなり頑丈が爪ね。これで折ることができるかしら」


 ケアノスはレイピアを見て、小さく呟いた。その時、ボスはケアノスに向かって飛びかかった。噛みつかれると察したケアノスは高くジャンプしてボスの突進をかわした。攻撃をかわされたボスはそのまま近くにあった岩に激突したが、ボスの歯は岩を噛み砕いた。


「爪も固いけど、歯も固いのね。予想外に面倒な敵ね」


 ケアノスは岩を噛み砕くボスを見て、小さく呟いた。ボスはケアノスの方を振り向き、口を開けて襲い掛かった。また噛みついて来ると察したケアノスはレイピアに魔力を溜め、口の中を突いて倒そうと考えた。しかし、ケアノスの予想は大きく外れた。ボスはケアノスに近付いた瞬間、素早く両腕を前に突き出し、ケアノスの両腕を掴んでしまったのだ。


「なっ!」


 両腕を掴まれたケアノスはそのままボスに押し倒され、左肩を噛まれてしまった。


「あああぁっ!」


 ボスの鋭い歯はケアノスの左肩に何度も噛みついた。痛みをこらえながらケアノスはボスを蹴り飛ばし、距離を取った。噛みつかれた左肩を見ると、皮膚がボロボロになり、そこから血が流れていた。すぐに治療しようとしたが、蹴られたことに腹を立てたボスが、ケアノスに再び襲い掛かった。


「グッ!」


 ケアノスは右手でレイピアを構え、迫って来るボスに向けて攻撃を仕掛けた。しかし、ボスは体を反らして攻撃をかわし、ケアノスに噛みつこうとした。


「二度も同じ攻撃が通じないわよ!」


 ケアノスはボスの足を蹴り、転倒させた。転倒した際、ケアノスは確実にとどめを刺すつもりでボスの心臓部に向けてレイピアを突いたが、レイピアの刃が命中する寸前にボスは体を横に回転させて移動し、攻撃をかわした。


「そこまでできるのね」


 起き上がったボスを見て、ケアノスは悔しそうに呟いた。ボスは高く飛び上がって、爪でケアノスに攻撃を仕掛けた。ケアノスは攻撃をかわし、ボスが着地した瞬間に攻撃しようと近付いた。だが、ボスは着地した瞬間に右手の爪を突いて攻撃してきた。素早い動き、そして予想できない攻撃を受けたケアノスは後ろに吹き飛んだ。倒れたケアノスを見たボスは、挑発するかのように笑い始めた。


「この猿野郎!」


 ケアノスはメガネを直しながらボスの方を向いてこう叫んだ。その瞬間、周囲の草が揺れ始めた。ボスは一瞬、揺れた草を見たため隙ができた。その隙に、ケアノスはボスに近付いてレイピアで突いた。レイピアはボスの腹に命中したのだが、刃はボスの腹を完全に貫くことはできなかった。


「チッ。頑丈な腹ね」


 ケアノスは素早くレイピアを引き抜き、後ろに下がった。完全に腹を貫くことはできなかったが、ボスに大きなダメージを与えることはできた。このダメージを受けたボスは苦痛の表情になり、動きが鈍くなった。


「あんたみたいな猿野郎に本気を出すのは仕方ないけど……先に進みたいからあんたを倒すわ。覚悟しなさい」


 そう言った後、ケアノスは開放していた魔力をさらに強くした。動揺したボスに向かってケアノスは移動し、素早くレイピアで突いた。何度もレイピアで突かれたボスの腹から、血が流れた。激痛を感じたボスは悲鳴を上げたが、ケアノスは攻撃の手を緩めることはしなかった。


「これで終わったと思う?」


 そう言うと、ケアノスはボスの背後に回り、再びレイピアで突き始めた。その結果、ボスの腹や背中から血が流れ、ボスは大量に血を失った。


「これで終わりにするわ」


 ケアノスはレイピアに魔力を込め、切れ味を高めた。そして、ボスの首に向けてレイピアを振り回した。攻撃を受けた瞬間、ボスの表情は変わった。少しして、ボスの頭はゆっくりと動き、地面に落ちた。それから後を追うように、ボスの体は地面に倒れた。


「ふぅ。残酷な締めだけど……生き残るには仕方ないわね」


 魔力を抑えながらケアノスはこう言い、大きな傷を受けた左肩を見た。




 ヘイトモンキーの群れと戦っていたカイトたちだったが、突如ヘイトモンキーの動きが変わった。


「あれ? どうかしたか?」


「さぁ?」


 背中合わせで戦っていたカイトとセアンは様子が変わったヘイトモンキーの動きを見て動揺した。それからすぐ、ヘイトモンキーは慌てながら散って行った。カイトはどうかしたのかと思いながら周囲を見回すと、左肩を抑えたケアノスの姿が映った。


「ケアノス! どうかしたのか?」


「あいつらのボスを始末してきたのよ。つっ……」


 ケアノスの表情を見て、セアンは慌ててケアノスの左肩を見た。


「酷い傷! ラージュ、すぐに来て! ケアノス、酷い傷を負っているよ!」


「私の出番ね。ケアノス、大人しくしていてね!」


 治療キッドを持ったラージュは急いでケアノスの元に近付き、治療を始めた。それからすぐ、騒ぎを知ったコスタとライアが合流した。


「ケアノス、無事に戻って来たみたいだけど……酷い傷」


「倒したのはいいけど、無茶しすぎだよ」


「あいつらのボスがむかついたから、ついムキになってね……いたた」


「ちょっと待っていなさい。はい。手当終了」


 ラージュがケアノスの左肩に包帯を巻き、手当てが終わったことを伝えた。それから気を失ったロベリーを担いだズミタが合流した。


「皆さん、先に進みましょう。奴らがこの魔力を感じたかもしれません」


 ズミタの言葉を聞き、ケアノスははっとした顔でこう言った。


「かもしれないわね。皆、急ぎましょう」


 ケアノスの言葉を聞き、この場にいた全員が頷いて答えた。


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