ゴイチ城への旅立ち
突如現れた黒い服の人物を見て、ヴロミコは目を開けて驚いていた。
「お前は確か、ディスターソースの……」
「幹部の一人だ。お前に周辺の情報を持って来た」
幹部はこう言ってヴロミコに近付き、話を続けた。
「部下の一人、ミヤギを倒したのはピラータ姉妹の彼氏、カイトだ」
「カイト? そんな奴、いた記憶がないが」
「最近仲間にしたようだ。女みたいな綺麗な顔をしているが、男だ」
「そいつがあなたの部下を……」
「そうだ。悪い、喉が渇いたからこいつをもらうぞ」
話を区切って、幹部は近くにあったワインボトルを手にし、手刀でボトルのフタを切り落とした。幹部はワインの中身を半分ほど一気飲みすると、安堵のような息を吐いた。
「失礼。話を続けよう。俺たちディスターソースは凄腕の戦士で作られた処分専門のチームだ。凄腕の戦士がやられたのだ、お前に伝えたいのは、これから戦うであろうピラータ姉妹たちは強敵ということだ」
「このことを伝えるためにここに来たのですか」
「そうだ。それと、ミヤギの処分だ。今頃、シーポリスに捕まっているだろう。情報漏れを防ぐために、殺さないと」
「部下の一人を殺すというのですか?」
「必要であれば殺す。情けは捨てろと俺は仲間に伝えている。もちろん、お前たちも倒され、捕まったら殺しに行く。覚悟をしておけ」
幹部はそう言って去ろうとしたが、あることを思い出したかのように立ち止まった。
「重要なことを伝え忘れた。逃げた王女、ロベリーはピラータ姉妹と共にいる可能性がある。近くの監視カメラをハッキングして、王女とその護衛らしき姿の二人組がピラータ姉妹と共にいた映像を見た。いいな? ピラータ姉妹は殺そうが犯そうがどうでもいいが、王女だけは手を出すな。あれは後で大事な手駒になるからな。それと、あれを見つけるためには必要になるかもしれないからな」
と言って、幹部は飲みかけのワインを手にし、素早く去ってしまった。ヴロミコは大きなため息を吐き、危険な海賊団の仲間になってしまったと思った。少しした後、ヴロミコは部下を呼んでこう言った。
「今命令して外に出た奴を連れ戻せ。命令を変える。いずれここに来るかもしれないピラータ姉妹を倒せ!」
翌日早朝、カイトたちとロベリー、ズミタはブルベリの外にいた。ロベリーは周囲を見回し、セアンにこう聞いた。
「なぁ、車はないのか?」
「ない。そもそも、私たち免許を持っていないよ」
「何? ここから歩くとどれだけ時間がかかるか分かっているのか?」
「分かっているわよ。でも、敵の攻撃で車が破壊されるかもしれないわよ」
ケアノスがこう言うと、ロベリーは残念そうにうつむいた。この光景を見て、カイトとコスタは小声で話をしていた。
「王女様に歩かせるのは難しいかな?」
「かもしれないわね。温室育ちのお嬢様には、長距離の旅路は難しいかも。私たちでフォローしないと」
「おい! そこの二人! 何を話しているのか分かっているぞ! 無礼だな」
ロベリーは怒ったような様子でカイトとコスタに向かって怒鳴ったが、ズミタがロベリーに近付いてこう言った。
「無礼なのは王女です。これから守ってもらうのに、この態度は何なのですか?」
「無礼者に礼儀などは必要ない!」
「王女?」
ズミタは威圧感を出し、ロベリーを黙らせた。ズミタの威圧感を感じ、ライアは呟いた。
「この人強い」
その後、カイトたちはゴイチ城へ目指して歩き始めた。カイトはすぐに戦えるように常に刀を持っていたが、セアンたちは何も持っていなかった。
「なぁ、敵が来るかもしれないのに身構えなくていいのか?」
カイトの問いに対し、セアンは振り返ってこう言った。
「大丈夫だよ。緊張していたら、逆に固まって戦えないよ」
「そうか……そうだな」
カイトは肩の力を抜き、刀を鞘に納めた。その直後、カイトの上から何かが降ってきた。
「うわっ! 何か頭にいる!」
「ちょっと待ってね」
ラージュは小さな風の刃を発し、カイトの頭上にいる何かを倒した。何かが落ちる音が後ろからしたため、カイトはそれを見た。
「何だ、こいつ? 猿?」
「こいつはヘイトモンキー。悪い意味で頭がいい猿よ。手癖は悪いからよく物を盗むし、強い奴は人を殺す」
「結構悪い猿だな」
「モンスター扱いだから、倒しても構わないわ。あと、こいつは群れで動いているから気を付けて」
ラージュがこう言った後、ヘイトモンキーの仲間が現れ、カイトたちに襲い掛かった。
「仲間の仇討ちか!」
「さーて、アホな猿さんを倒さないと!」
セアンはカトラスとハンドガンを手にしようとしたが、セアンの隙を見た一匹のヘイトモンキーがセアンのハンドガンを奪ってしまった。
「あっ! やばい! よりによってハンドガンを!」
セアンはすぐに奪われたハンドガンを取り戻そうとしたが、ヘイトモンキーはセアンに銃口を向けていた。それを見たカイトは素早くヘイトモンキーに近付き、刀を振り下ろした。カイトが振り下ろした刀は、ヘイトモンキーの両腕を切り落とした。セアンはすぐにハンドガンを取り返し、両腕を失ったヘイトモンキーに向けて銃を撃った。放たれた弾丸はヘイトモンキーの額を撃ち抜いた。
「まず一匹」
一匹のヘイトモンキーを倒した後、セアンは周囲を見回した。仲間を撃ち殺したためか、仲間のヘイトモンキーはセアンを仇として見ていた。セアンは近くにいたロベリーとズミタを見て、こう言った。
「私が狙われているから、えーっと……近くにいるカイトかラージュの傍で避難して」
「分かりました。行きましょう、姫様。姫様?」
ズミタはロベリーの顔を見て、白目をむいて気を失っているのを知った。先ほど、セアンがヘイトモンキーを撃ち倒した時の光景を見て、失神したとズミタは確信した。
「あの光景は姫様にとって残酷なものでしたね」
「ちょっと、冷静になっている場合じゃないですよ! 俺が近くにいるので、姫様を守ってください!」
カイトは周囲から襲ってくるヘイトモンキーを返り討ちにしながら、ロベリーとズミタを守っていた。そんな中、複数のヘイトモンキーがロベリーに襲い掛かった。カイトとズミタは急いでヘイトモンキーを返り討ちにしたが、攻撃から逃れたヘイトモンキーがロベリーに襲い掛かった。
「まずい!」
目の前のヘイトモンキーを斬り倒し、カイトは急いでロベリーに近付いた。その直後、コスタが放った弾丸がロベリーを襲おうとしていたヘイトモンキーを撃ち抜いた。
「危機一髪……」
スナイパーライフルを構えたコスタはこう言った。その直後、コスタに向かってヘイトモンキーが襲い掛かってきたが、ライアが現れてヘイトモンキーを斬り倒した。
「ふぅ、こいつらしつこいね」
ライアがこう言うと、コスタはため息を吐いて言葉を返した。
「確かにね。考えると、この群れを操るボスがいるかもしれないわ」
「ボスか……」
コスタの言葉を聞き、ライアは周囲を見回した。周りは木しかなかったが、一本だけ大きな木を見つけた。ライアはあることに気付き、コスタにこう言った。
「スコープであの大きな木を見られる? なるべく、ズームで」
「うん」
コスタはスナイパーライフルのスコープを使い、大きな木を調べた。大きな木には何匹かのヘイトモンキーがおり、木の頂上には大きなヘイトモンキーがいた。
「一匹だけやたらと大きいヘイトモンキーがいる。多分、アイツがボスだよ」
「え? ボスがいるの?」
途中でやって来たケアノスは、襲い掛かって来たヘイトモンキーをレイピアで突き倒し、話に参加した。
「うん。ヘイトモンキーは結構目がいいって話を聞いたことがある。多分、ボスが私たちを見つけて、襲うように部下に命じたかも」
「それだったら急に現れた理由が納得いくわ。さ、ボスを倒さないと」
ケアノスは大きな木を見て、こう言った。
またモンスターとの戦いかよ。そう思う方もいるでしょうが、人と人の戦い以外にも、モンスターとの戦いも少し含めようと思っています。勘弁してね。
この物語が面白いと思った方は、ブックマーク、評価、いいねをお願いします。皆様の評価が自分の励みとなります。よろしくお願いします。感想、質問、レビューもお待ちしています。




