始末チームの登場
カイトたちがロベリーと遭遇し、数時間が経過した。カイトたちに手を借りるかどうかでロベリーはずっと悩んでおり、うなり声を上げている。
「まだ答えが決まらないのね」
「そうだね。素直に手を貸してほしいって言えばいいのに」
ケアノスとセアンは話をする中、あることを考えたライアがこう言った。
「王女の中では、私たちはズライリー海賊団と同じ海賊ってイメージを持っているのかな?」
「それだ。それかもしれない。王女は海賊を同じような連中だと思っているかもしれないわ」
「はぁ、私たちは奴らを倒す側の人間なのに」
セアンはそう言って、ピーナッツを口に入れた。そんな中、銃の手入れをしていたコスタが周囲を見回してこう言った。
「あれ? カイトは? どこか行ったの?」
「散歩しに行ってくるって言っていたわ」
ラージュは体の包帯を取りながらこう言った。リビのアジッドゼリーの溶解液を受けた傷は、完全に治っていた。
「うん。これでもう戦える」
「傷の具合を見るのは大事だけど、ズミタさんがいるから無暗に裸にならない方がいいわよ」
ケアノスの言葉を聞き、ラージュは固まりながらもラージュの方を見ないようにしているズミタを見て、軽く謝った。
ブルベリの建造物の中で、一番高いのは教会。その頂上に黒い服装の男が立っており、携帯電話で連絡をしていた。
「昨日の夜、ピラータ姉妹によって捕まったペイリーチームとリビチームの連中を全員始末した。いつものように、誰が誰だか分からないように細切れにした。ついでにシーポリスの雑魚も始末した。了解。では、引き続きブルベリを支配する連中の見張りを行う。そいつらが捕らわれたらすぐに始末するように動く。了解」
男はそう言って携帯電話をしまおうとした。その時、氷の弾丸が放たれ、携帯電話を破壊した。男は剣を手にし、目の前を睨んだ。
「いつの間に……」
「忠告しておくぜ、電話をする時は周りに注意しろよ」
目の前には刀を鞘から抜いたカイトが立っていた。男はため息を吐き、カイトにこう言った。
「どうして俺の居場所が分かった? 気配と魔力は消したはずだ」
「適当に散歩をしていただけだ。怪我の回復を確かめるついでに魔力を使って飛んでいたら、お前がいたというわけだ」
「単なる偶然というわけか。お前は運がないな。偶然俺と出会い、死ぬことになるのだからな!」
男はそう言って素早くカイトの元に移動し、剣を振り上げた。カイトは後ろに下がって攻撃を回避し、魔力の水を放った。
「水か。魔力の水を使っても意味がないぞ!」
男は魔力を使って濡れた体を乾かし、カイトを睨んだ。カイトはにやりと笑い、発した水を霧状にさせた。
「霧か。これでは周りが見えない」
そう言いながら、男は周囲を見回した。この隙にカイトは刀を握り、男に一閃を与えようと考えた。カイトは刀を振り上げ、男に向けて勢いよく刀を振り下ろした。しかし、男は剣を盾にし、刀による一閃を防御していた。
「ぐっ……」
「周りは見えないが、気配は感じることができる」
男は反撃で剣を振るったが、カイトも刀を振るって男に攻撃を仕掛けていた。
「ここじゃあ動きにくい!」
斬り合いをする中、カイトは高くジャンプして別の建物の上に移動した。
「喧嘩を売ったのはそっちの方ではないか。仕方ないガキだ」
男は魔力を開放し、カイトの後を追いかけた。男が建物に到着したと同時に、カイトは男に向かって刀を振り回した。
「着地狩りか。ゲームかよ」
「敵を倒すためには、手段は選ばないさ!」
男はカイトの攻撃に対し、剣を使って防御した。そしてカイトに接近して蹴りを放った。
「グガアッ!」
蹴り飛ばされたカイトは屋根の上を転がり、下に落ちて行った。突如、上から落ちたカイトを見た人々は驚く声を上げたが、カイトはすぐに立ち上がった。
男はため息を吐きながら、携帯電話を手にした。
「俺だ。始末チーム、ディスターソースのミヤギだ。ピラータ姉妹の彼氏と思われる奴と遭遇し、戦闘に入った。暗殺できる状況じゃあないため、派手に暴れる。許可をよこせ」
電話の相手はこの言葉を聞き、動揺したのかすぐに返事をすることはしなかった。それからしばらくし、返事を聞いたミヤギはにやりと笑った。
「暴れてもいいか。ありがとう、これで安心して奴を殺せる!」
「殺されてたまるかよ!」
天井に上がって来たカイトが、ミヤギに蹴りを入れた。高台の壁に激突したミヤギは嗚咽しながら魔力を開放し、下に降りた。
「チッ、電話中に相手を攻撃するとか、お前は常識というのがないのか?」
「人殺しに常識についてあれこれ言われたくないね」
「ハッ! それもそうだな」
ミヤギはそう言うと、魔力を開放して剣を構えた。何かすると思ったカイトは刀を構え、ミヤギを睨んだ。
「覚悟しろよ。お前もペイリー共と同じようにサイコロステーキにしてバラバラにしてやる」
「仲間を斬り刻んだイカレ野郎が。斬られるのはお前の方だ」
「ガキのくせに生意気を言う。そういうガキはお仕置きをしないといけないねぇ」
ミヤギはそう言って、カイトの元に走り出した。攻撃が来ると察したカイトは足元を濡らして瞬時に凍らせ、高く飛び上がった。
「んなっ!」
足元を濡らして凍らせると考えていなかったミヤギは、そのまま凍った足場に踏み込んでしまった。その結果、ミヤギはバランスを崩して転倒し、頭から地面に落ちてしまった。
「ぐがぅ……」
「おいあんた、大丈夫かい?」
と、近くにいたおじさんが声をかけたが、ミヤギは剣を持っておじさんを睨んだ。
「邪魔だ、死にたくなければどけ!」
「ヒッ、ヒイイイイイ!」
剣を持ったミヤギを見て、おじさんは悲鳴を上げながら逃げて行った。それからすぐ、ミヤギは立ち上がって周囲を見回した。
「あのガキはどこだ?」
そう呟き、再び天井の上にジャンプした。その時、刀を構えていたカイトがミヤギに接近し、刀を振り上げた。
「グオッ!」
「うし!」
この一閃はミヤギに命中した。カイトの刀はミヤギの右胸付近から右肩に長い傷を付けた。しかし、あまり深くないためか、切り傷レベルのダメージとなった。
「グッ……下手をしたら腕を失っていた……」
「まだまだ行くぞ!」
カイトは刀を構え、男に向かって走って行った。まだカイトは戦うつもりだと察したミヤギは、ため息を吐いてこう言った。
「仕方ない。雑魚相手に本気を出したくないが……出さざるを得ないか」
「はぁ?」
ミヤギの言葉を聞き、カイトは何を言っているのかと思った。しかし、その直後にミヤギの姿は消えた。それと同時に、黒い霧が発した。
「き……霧?」
「お前と同じ手を使う。俺も前と同じ、水の魔力を使う」
その言葉を聞き、カイトは少し動揺した。だが、すぐに我に戻った。
「俺と同じ手か。それが俺に通じるかどうか分からないぞ」
「いーや。お前と俺では、戦いの年季が違う」
ミヤギはそう言った後、カイトの左足を一閃した。攻撃を受けたカイトは何とか黒い霧から逃れようとしたが、黒い霧はカイトを追って移動した。
「おいおい、あの霧動くのかよ!」
「魔力で動かしている。だから自由自在に動くのだ。こんな風に!」
ミヤギの叫び声の直後、黒い霧は大きく広がり、カイトを包み込んだ。
「うわっ! ヤベェ、何も見えない!」
「お前は俺を甘く見すぎていた。俺はブラッディクローの始末チーム、ディスターソースの一人、ミヤギだ。あの世へ逝っても、俺の名を覚えておくように」
ミヤギはそう言って、背後からカイトに近付いた。黒い霧のせいで焦っているカイトは、後ろから来ているミヤギの存在に気付いていなかった。
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