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城下町、ブルベリでの出会い


 タンクトップの男がナイフを持ち、セアンに向かって突っ込んで来た。セアンは欠伸をしながらタンクトップの男の突進をかわし、男の足を蹴って転倒させた。


「グウッ!」


「まだやる気? 勢いがあっても力の差が開いていたら、勝てないよ」


 セアンはにやりと笑いながらこう言った。男はすぐに立ち上がって再びナイフを持ち、セアンに向かって突っ込んだ。セアンはナイフ目がけて足を蹴り上げ、宙高く飛ばした。男は空高く飛んで行ったナイフを見て、口を開けて驚いていた。


「あ……ああ……」


「離れていた方がいいよ。ナイフに刺さる可能性があるから」


 と言って、セアンは周囲にいる人に避難を呼びかけた。それからすぐ、蹴り上げたナイフが回転しながら落下し、地面に突き刺さった。男は急いでナイフを取りに行こうとしたのだが、セアンは風の魔力を発してナイフを破壊した。


「クッ……覚えていろ! 後であったら必ずお前を殺してやる!」


「その程度の実力で大口を言わない方がいいよ」


 セアンは悲鳴を上げて逃げていく男を見て、こう言った。その後、フードを被った二人組に近付いた。


「悪い変態野郎は逃げたから安心です。怪我はありませんか?」


「ありがとうございます。助かりました。まさか、義賊で有名なピラータ姉妹に救われるとは思ってもいませんでした」


 二人組のうちの背の高い人物がこう言った。セアンは声を聞いて、この人物が男であると理解した。そして、何か武器を持っていることも理解した。


「いいってことですよ。でも、武器があるなら使ってもいいと思いますが」


「騒ぎを広げたくないのです。すみません、今は目立ちたくないので」


 その男性の言葉を聞き、セアンは周囲を見回した。すぐに終わったのだが、騒動があると察した人々が集まっていた。


「すみません。ちょっと目立ちましたね」


「仕方ない部分もありますが……」


「仕方なくはない! 早く行くぞ、ズミタ。こんな所で油を売っている暇はない!」


 と、横にいたフードの人物が叫んだ。戦いが終わって余裕があるセアンは、この人物の声のトーンと口調を読み取り、少女であると認識した。


「何かお困りですか? 私たちでよければ話を聞きますが」


「結構だ。海賊風情に我らの話をする時間はない!」


 少女はこう言ったが、ズミタと言われた男性の方は何かを考えていた。しばらくして、ズミタは口を開いた。


「話をさせてもいいのですか?」


「うん。他の皆は宿にいるから、そこでしよう」


「分かりました。では、宿に向かいましょう」


 ズミタはそう言った。その言葉を聞いた少女は呆れた様子で大きなため息を吐いていた。




 セアンは宿に戻る、フードの二人組をカイトたちに紹介していた。


「この人たちが変な奴に絡まれていたから助けたの。なんか訳ありみたい」


「訳あり? セアン、ちゃんと話を聞いてから紹介しなさいよ」


 ケアノスは少し呆れてこう言ったが、セアンはまぁまぁと言って話を続けた。


「あまり目立つことはしたくないって。だから、私たちしかいないこの場で話をするしかないのよ。でも、悪い人じゃなさそうだよ」


「セアンの勘は当たるからな」


 と、カイトは自分とピラータ姉妹の出会いを思い出しながらこう言った。そんな中、ライアが淹れた紅茶が二人の前に差し出された。


「部屋の中にあったティーパックだけど、どうぞ」


「まずはお前が毒見しろ」


 その言葉を聞き、ライアは戸惑った。だが、すぐにライアは笑いながらこう言った。


「毒見とか、まるでお姫様みたいだね。そんなこと言われたの、初めてだからビックリしちゃったよ」


「確かにね。強そうな人と一緒だし、本当にお姫様みたいな子だね」


 コスタもそう言って、小さく笑った。そんな中、ラージュは少女の方に近付き、フードの中を見ようとした。少女はラージュに気が付き、急いで振り払った。


「何をする!」


「どんな事情を抱えているのか分からないけど、話をするのであれば、素性を教えてほしいわ。セアンが連れて来たから悪い奴じゃなさそうだけど、まだあなたたちが悪人ではないと判断したわけじゃないから」


「そうですね。では、我々の身分を明かしましょう」


 と言って、ズミタはフードを外した。


「私はズミタ・プラーテル。ゴイチ王国の護衛兵です」


 この言葉を聞き、紅茶を飲んでいたセアンとケアノスは紅茶を吹き出してしまった。


「ゲホッ、ゲホッ! ゴイチ王国の護衛兵? そんな人が何で城下町に?」


「ちょっと待ってセアン。護衛兵がいるとしたら、この子は……まさか……」


 ケアノスは震えながら少女の方を見た。少女は仕方ないと呟き、フードを取った。少女の顔を見たピラータ姉妹は、動きが固まってしまった。どうしたものかと思ったカイトは読んでいた新聞を見ていると、記事の中に少女の顔写真が載っており、そこにはゴイチ王国の王女、ロベリー・ゴイチと書かれていた。それを見て、カイトはピラータ姉妹が固まった理由を把握した。


「セアン……とんでもない客を連れて来たな」


「うん……」


 セアンは口を開けたままカイトに返事をした。カイトたちが動揺で固まっている中、ロベリーはフードを被ってこう言った。


「というわけじゃ。素性を教えたから話を始めるぞ。おい、固まっている場合ではないぞ」


 ロベリーの言葉を聞き、セアンとケアノスは正座をし、コスタは慌てながら座り直した。ライアはすぐに高級な紅茶を探しに向かい、ラージュはごめんなさいと小さく笑いながらロベリーから離れた。


「知っての通り、今、ゴイチ王国はズライリー海賊団のせいで崩壊の危機に陥っている。奴らの手下が城下町や周囲の村や町で暴れ、被害が広がっている。このままだと、この国が奴らの手に渡ってしまう」


「我々兵士も奴らに挑んだのですが、奴らはとてつもなく強いです。仲間が大勢殺され、こちらの戦力は大きく失いました」


「だけど、このままやられるわけにはいかない。そう思った我は奴らの目を盗んで逃げ、強い戦士を探しに来たのじゃ。そうしたら、お前たちと会ったわけだ」


 カイトは話を聞き、ロベリーとズミタが城下町に来たことを知った。王女自らが城下町に出て、戦士を探しに来るほど大変な状況だと、カイトは改めて把握した。


「事情は分かった。俺たちもズライリー海賊団を倒しにここに来た」


「目的は違うけど、ズライリー海賊団を倒したいって気持ちは一緒だよ」


「そうですか。あなたたちがいるのであれば、こちらとしても心強いです」


 ズミタはセアンたちを見てこう言ったが、ロベリーは腕を組んでこう言った。


「我は嫌じゃ! 海賊の手を借りて奴らを倒したくない! シーポリスで強い奴を呼んで、仲間にすればいいのに!」


「シーポリスの強い戦士は、他の場所で働いているよ。いろんな所で大きな騒動があるから」


 コスタはこう言ったが、ロベリーは鼻を鳴らした。


「フン! こっちもこっちで大きな騒動になっている! 他の騒動なんて知ったことか、強い奴がこっちに来ればいいのに!」


「用があってすぐに来ることができないと思うよ。だけど、私たちがいるから」


 と、セアンはこう言った。その時のセアンの口調は優しく、ロベリーは心のどこかが安心するような気がした。


「じゃが、お前たちは海賊じゃ。戦いに勝ったら金品を要求するつもりだろ? 今、我らの国にそんな余裕はない」


「私たちが欲しいのは、ブラッディクローの情報。ズライリー海賊団がブラッディクローと関係しているみたいなの」


「本当か?」


「本当よ。私たちの故郷は、ブラッディクローによって滅ぼされたから。その仇討ちで海賊になったのよ。そうすれば、奴らと遭遇できるかもしれないから」


 セアンの話を聞き、ロベリーは何かを考えているのか、しばらく黙り込んだ。ズミタはロベリーをベッドの方に移動させて座らせ、セアンたちにこう言った。


「少し時間をください。答えを決めるのは、ロベリー王女なので」


「分かりました。ごゆっくり」


 セアンはそう言って、二人にゆっくりするように促した。


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