ランドセルで空飛ぶ夢
「ママ、本当にこれで行くの……?」
「歩いていくなら遅刻するわよ?」
「……いってきます」
ランドセルに軽量エンジンを詰め込んだら準備は完了。
これで本当に飛べるのか?
携帯のボタンをタップすると、体が宙に浮いた。さらに携帯で操作し、徐々に加速していく。
すごい、飛んでるよ!
少し先の軒並み連ねた屋根をみると、スズメがちゅんちゅんと鳴きながら休憩している。
頭上に広がるのは青空。ママの言うとおり、服を着込んできて正解だった。風が頬にあたって冷たい。
少し進むと、空を飛ぶおじさんが手旗信号をしていた。
「ちょっとちょっと! 止まって!」
僕は急いで携帯の減速ボタンをタップする。
「快速配達が通るから待って!」
「快速配達?」
僕が首を傾げたわずか数秒のこと。配達の人が宇宙服みたいな全身覆った服を着用して、新幹線みたいに目の前を通り抜けていった。
「もう大丈夫です。どうぞー」
「あ、ありがとうございます」
加速ボタンをタップしたそのとき、がくっと視界が傾いた。
まずい、エンジンの故障だ! 落ちる!
僕は目をぎゅっと閉じた。
いや、でも落下速度どれくらいか気になるかも? 目、開ける? どうせ見えないかも。
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夢か。
僕は今、ドローンに人が乗って空を飛ぶ研究をしている。そしていつか、小学生の頃抱いたランドセル背負って空飛ぶ夢を実現したいと思っている。
ランドセルを背負う年でもないけれど、それでもいつか、きっと。
みしみしと軋む体を起こし、「わっ!」と声をあげた。大事な専門書にお茶をこぼしてしまった!
元通りになる技術が早急にほしいな。……冷凍庫? うーん、それでも紙が波打つのは変わらないんじゃないか? はて、どうしようか?
僕は携帯とにらめっこしながらぶつぶつと考え込む。
夢は今日も膨らむばかり。