恵まれた才能
一輝が通う高校は現在昼休みであり、梢子が一輝に質問をしている。
「それで長谷君、次はいつその綾小路さんと対局するの?」
「来週の月曜日」
「早いわね、大丈夫?」
「まあ、準備はしているし、放課後も練習将棋をする約束をしているからね」
一輝の言葉を聞いて、梢子は言葉を発する。
「私じゃ練習相手になれないけど、頑張ってね」
「うん、ありがとう、竹田先生から連絡があったら知らせるよ」
そう言って一輝は売店までパンの購入に向かっていった。
それから時間が流れて放課後、一輝はとある場所へと向かっていく。
その場所はとあるアパートであり、一輝はインターホンを押す。
インターホンを押すとドアを開けて出てきたのは兄弟子の西田であった。
「お邪魔します」
「来たな、一輝、早速VSを始めるぞ」
「はい」
そう言うと一輝と西田はVSを開始する。
何度か練習将棋を指し、休憩中に西田が一輝に声をかける。
「しかし、まさかお前が終盤間違えて綾小路さんに負けるとはな」
「ええ、デビュー直後は完敗でしたが、この間のMHK杯は勝てた可能性がありましたからね」
「まあ、綾小路さんは詰め将棋が得意だから終盤の詰む詰まないの読みの精度は高いからな」
「そうですね」
綾小路の終盤力の高さを語るが、それだけでは飽き足らず更に綾小路について語り続ける。
「綾小路一七段、通称貴公子一」
「に、西田さん」
「その端正な顔立ちから女性ファンが多く、実家は金持ち、料理、バイオリン、乗馬の腕前も凄腕。将棋だけでなくいろんなものが揃い過ぎてむかつくぜ」
ほとんど西田の個人的な羨望に近く、一輝は遠い目で聞いている。
「いいか、一輝!将棋だけでは負けちゃいけねえ!」
「西田さん、そんなに嫉妬するなら俺に託さず、西田さんが自分で勝てばいいんじゃないんですか」
「そ、それは……」
「ああ、西田さん、綾小路さんに公式戦3連敗ですもんね」
その言葉を聞いて西田は反論をする。
「俺はお前と違って1勝しているんだよ!」
「でもそれって、将棋イベントの公開対局でですよね」
「非公式戦だろうが1勝は1勝だろう」
「じゃあ、次の対局、俺も勝ってきます。しっかり公式戦で勝ちますよ」
一輝の勝利宣言を聞いて、西田があることを告げる。
「よし、お前が勝てばうなぎを俺からご馳走してやる」
「俄然やる気が出ましたよ」
将棋以外にも様々な才能を持つ綾小路七段。その天才に一輝が挑もうとしている。




