父と娘の本心
一輝との指導対局を終えた梢子は一輝より女流棋士になりたいと思っているかの質問をされ、一輝と同じクラスになり、プロ棋士を身近に感じた事、小夜という同年代の女子が活躍していることで憧れを打ち明ける。
梢子の本音を聞いた父である春秋は突如梢子の前に立ち、梢子は驚きのあまり、声を出す。
「お、お父さん⁉どうしたの?」
「どうもこうもねえ!梢子、お前本当に女流棋士になりてえのか?」
「実は正直ウイナビ女子で勝てればお父さんが認めてくれると思って出場したの。でも負けてしまったし、正直無理かなって……」
「バカ野郎!俺に認められるかどうかじゃなくて、お前はどうしたいかを聞いているんだ!」
春秋は大声をあげて一瞬梢子はたじろぐが、すぐに自らの言葉を述べる。
「私、やっぱり、もう1度挑戦したい。ウイナビ女子で実力を示せればなれるんでしょう、だったらもう1度出る。そして今度こそ勝つわ」
「それがお前の気持ちだな、じゃあ俺からも言わせてもらうぞ」
「うん」
「親としちゃあ、あんな不安定な仕事にはついてほしくねえ、と言いたいところだが、お前にも勝負師たる血がたぎっているかもしれねえ、だからお前に条件を2つ出す」
春秋の条件という言葉を聞いて、梢子は尋ねる。
「条件って?」
「まずは保険の為に大学に通う事だ、そしてもう1つは研修会試験を1発で合格することだ。研修会試験に落ちたら、大学に通いながらウイナビ女子にでも出てそこで勝つルートを目指せ。そこはもう年齢制限との戦いだ」
「いいの?」
「いいも何もこれくらいやってのけてみせろ」
父の言葉に梢子は発奮し、言葉に活気が出る。
「お父さん、私頑張るわ」
梢子の言葉を聞いて一輝が梢子に声をかける。
「良かったね、佐藤さん」
「とりあえずまずは研修会試験ね」
研修会試験という言葉を聞いて天馬があることを思い出し、言葉を発する。
「だけど、研修会試験を受けるには一応プロ棋士の師匠がいないとダメなはずだ。そこはどうする?」
「それは、竹田先生にお願いするのはどうだろう?」
「あ、私もあの人がいい。お父さんの後輩だし」
竹田の名前があがって思わず春秋が梢子に対し、制止に走る。
「待て、梢子!あいつはやめておけ」
「どうしたの、お父さん、もしかしてやばい人なの?」
「俺が気まずい」
「何よそれ、なんでお父さんの都合で師匠を決めなくちゃいけないのよ」
「うるせえ、とにかくあいつ以外……いや、待てよ……」
悩む父をよそに一輝が梢子に声をかける。
「とりあえず、俺達の師匠それぞれに当たってみるから、それでもだめならまた考えよう」
「え、ええ、お願い」
師匠はまだ決まらないが、梢子にとっては新しい一歩となった瞬間である。




