開始!指導対局
一輝達4人の研究会メンバーは佐藤神田道場にて、組み合わせを何度も入れ替えながら練習将棋を行っていた。
近くで見ていた梢子は感想戦を聞き取ろうと躍起になっていたが、手順の難しさ、特に一輝と天馬の感想戦は梢子にとっては高度過ぎて理解が追い付かなかった。
「お父さん、長谷君ってやっぱりすごいのね」
「そりゃそうだろ、10代でのプロ入りは将棋界においての天才枠だからな」
感想戦の際に時計を見た天馬が一輝に声をかける。
「一輝、そろそろ研究会は切り上げて指導対局の準備をしたほうがいいんじゃないか」
「そうだな、村田君、詰め将棋は?」
一輝が村田に対し自作の詰将棋は用意できているかの確認に村田が返答をする。
「ばっちりです、かなりの自信作を用意しました」
そう言って指導対局の為にテーブルの位置を移動し、道場に来ていた客に呼びかける。
「それでは皆さん、これより指導対局を始めたいと思います」
その呼びかけに道場の客が一輝達のテーブルに並び、1人づつ指導対局を受けている。
指導対局を待つ他の客たちは村田が作った詰め将棋を解いていた。
「はい、これは3手詰めです。どうでしょうか?」
「んーーー!、あ、そっか、これでこうして」
「はい正解です」
道場は指導対局、そして詰め将棋で盛り上がっており、佐藤一家もその様子に満足していたようだ。
そんな中、母である美晴が梢子に声をかける。
「ねえねえ、梢子、梢子も指導対局を受けてみたら」
「えっ?いいのかな私道場主の娘なんだけど」
「別にいいんじゃないの、将棋が強くなりたいんなら」
そう母に背中を押され梢子は一輝の前のテーブルに来て一輝に声をかける。
「わ、私も指導対局受けさせてもらってもいいかな?」
「どうぞ、座って」
一輝に促されてテーブルに梢子が座ると隣のテーブルにいる天馬が一輝に声をかける。
「一輝、何枚落ちにするつもりだ?本来なら6枚落ち辺りが妥当だが、この子はウイナビ女子でもいい所まで行ってるし、2枚落ちか飛車、もしくは角落ちでもいいと思うが」
天馬の言葉を聞いて一輝は少し考え思いついたように言葉を発する。
「佐藤さん、平手で指してみない?」
アマチュアである梢子に対し、なんと一輝は平手で指すことを提案する。その真意とは一体?




