攻めの棋風
ウイナビ女子オープン予選準決勝で島田女流二段と佐藤梢子アマが予選決勝をかけて対局をしている。
戦型は相掛かりとなり、梢子が早くも飛車先の歩を交換する。
これにより島田女流も飛車先の歩を交換し、互いに飛車先の歩が切れて、飛車が相手陣に直通している状態であり、互いに飛車の成りこみに注意する戦いが始まる。
ここで梢子は5八玉と玉を一段あげる。
それに対し島田女流は4二玉とする。
相掛かりの特徴として薄い玉形での戦いが起きやすい為、一手のミスが致命的になりやすいので互いに慎重に駒組を進める。
しばらく進むと梢子が少しづつではあるが相手陣を圧迫しはじめ、島田女流は大駒の飛車と角が少しづつ抑えられていく。
何とか働いてない駒を働かせようと島田女流は試みるが、その一瞬の隙を突き、梢子の攻めが始まる。
その様子を見て解説の竹田九段が梢子の棋風を見抜き、解説をする。
「この2局だけを見た私の印象ですが、佐藤さんはかなりの攻め将棋ですね」
竹田の言葉を聞き、聞き手の鎌田女帝が詳しく尋ねる。
「どういった部分を見てそう感じましたか?」
「第1に戦型選択ですね、振り飛車相手に右四間エルモは最低限囲ったら攻めに転じますからね。私なんかは振り飛車相手には穴熊か銀冠でじっくり戦う派ですからね」
「私も振り飛車には穴熊にするのが安心しますから先生のおっしゃることは分かります」
「この相掛かりにしたってそうですよ。自分から積極的に主導権を握ろうとしますからね」
竹田が梢子の棋風を解説していると梢子が次々と相手玉に迫っていき、島田女流は投了の意思を示す。
「負けました」
それを見た鎌田女帝は梢子の勝利を告げる。
「ここで島田女流二段投了、佐藤アマの勝ちとなりました」
「手数は長いですがこれは詰みですね」
「これにより予選決勝は牧野小夜女流初段と佐藤梢子アマとなりました」
「同年代同士の決勝ですか。非常に楽しみですね」
モニターで梢子が勝利した瞬間を見た小夜は敗北したが会場に残っていた美咲に告げる。
「あの子と決勝でやることになった」
「うん、頑張ってね。あ、そうだあの佐藤さんって子のことを係の人に聞いてみたんだけど、研修会には所属してないんだって」
「え⁉それであんなに強いの、どういうこと?」
「お父さんが将棋道場で教えているらしい話は聞いたけど」
梢子の強さを盤面を通して感じる小夜であったが、タイトル挑戦の為にはつまづくわけにはいかないのだ。




