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一歩の重さ  作者: burazu
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デビュー戦

 四段昇段、そして小夜との公園将棋を指した日から約3か月が経過し、一輝はプロデビュー戦へと向かおうとしていた。


 今日は12月24日、クリスマスイブである。クリスマスイブの朝、一輝は自宅より将棋会館へと向かおうとしていた。


 そして母親にある事を告げた。


「今日は持ち時間が長い将棋だから夕飯はいらないよ」

「それ昨日も聞いたわよ、何度も同じこと言わないでよ」

「念押しだよ、あと対局中はスマホをロッカーに預けなくちゃいけないから、連絡しても出ないよ」

「分かってるって、お母さんそんなに忘れっぽく見える?」


 一輝のこのやりとりから母親は少し抜けてる部分があるように感じており、一輝は思わず念押ししてしまうのだ。


 そして一輝はようやく出ることを告げる。


「じゃあ、行ってくる」

「うん、クリスマスパーティーは明日にお預けね」


 母親の言葉を聞いて一輝は考えた。明日のクリスマスを良き日として迎えられるかは今日勝利するかどうかにかかっていると。


 そんな思いを噛みしめながら、一輝は電車に乗り将棋会館へと向かう。


 千駄ヶ谷駅に着き、徒歩で将棋会館へと向かいたどり着くと会う人に挨拶し、ロッカーに自身のスマートフォンを預け、それ以外の荷物を対局室に持ち込む。


 対局室に着くと既に記録係が盤の上に駒箱を置いており、座布団も敷かれており、一輝が座る左側に脇息が置かれていた。


 脇息(きょうそく)とは脇に置いて肩ひじを置いて寄りかかるものである。


 一輝は防寒着を脱いで後ろのふすまロッカーに入れて、記録係に挨拶する。


「おはようございます」

「おはようございます」


 将棋の対局の記録係というのは基本的には奨励会員が務めるものであり、当然彼も奨励会員だ。


 先日まで彼と一輝の立場は同じものであったが、今や一輝はプロ棋士の一員なのだ。


 本日一輝が臨む対局は竜帝戦というタイトル戦の6組ランキング戦なのだ。


 竜帝戦は1~6までの組に棋士を割り振り、成績に応じて組のランクが上がっていくものだ。


 デビューしたばかりの棋士は6組に割り振られるが、活躍次第で5組昇級、6組を優勝して本戦トーナメントを勝ち抜けば竜帝への挑戦権を得られるのだ。


 そんな中、9時50分を少し過ぎたころに対局相手が現れる。


 彼の名は富田八段で50代のプロ棋士である。


 富田もふすまロッカーに防寒着を入れて座布団に座って、駒箱を開け、駒袋の紐をほどいて、駒を並べていく。


 格上である富田が王将を持ち、駒を並べ終えると記録係の振り駒が始まる。


「振り駒です。富田八段の振り先です」


 記録係がそう告げ、駒を両手で包み駒を振って畳に転がす。


「と金が3まいなので、長谷四段の先手です」


 いよいよ一輝のデビュー戦が始まろうとしている。

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