ライバル視
天馬との対局が近くなり、研究会が休止となった一輝は兄弟子である西田が呼んだ加瀬五段、黒木四段も加えた研究会に参加することとなり、西田のアパートの部屋に入室する。
「それにしても何で黒木さんも加瀬さんもこの臨時研究会をしようと思ったんですか?お2人も別で研究会をやっているはず」
一輝の疑問に黒木、加瀬がそれぞれ返答をする。
「俺は少しの間でも長谷君と練習将棋をして長谷君に勝てる方法を見つけたいと思ってな」
「僕はやはり長谷さんの終盤の強さの秘密を知りたいと思いましてね」
一輝は特に加瀬の発言が気になり、加瀬に思わず尋ねてしまう。
「加瀬さんは僕に勝っていますよね、それで何で僕の終盤力をそこまで気にするんですか?」
「忘れたんですか?棋将戦で僕や佐渡会長よりも速く雲竜先生の勝ちを読み切ったのを、直接対決で作戦は上手くいきましたが、地力は長谷さんの方が上かも知れないと思いました」
「あの時の、でもあれは検討ですから実戦とは違いますよ」
「それだけじゃない、長谷さんに勝った次局で負けてしまい、5組昇級をかけた敗者復活戦にも負けました。でも長谷さんはその敗者復活戦でも勝って5組昇級を決めましたよね」
加瀬の言葉を聞いて西田が一輝に告げる。
「まああれだよ、ここにいるみんな、お前をライバルだと思っているんだ。そんなお前が期待の若手の1人とはいえ、真壁君に負けることは耐えられないんだ」
「西田さん……」
「早速始めようぜ、時間が惜しい」
「はい」
西田がそう言うと、将棋盤と駒を2セット用意し、練習将棋を始める。
持ち時間は各30分。1局終えたら感想戦も行う予定だ。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
全員そろって挨拶を行い、まず一輝と西田、加瀬と黒木の組み合わせで練習将棋を行う。
それぞれが対局を行い、結果が出る。
「負けました」
この宣言をしたのは西田と黒木であり、感想戦をそれぞれ行う。
「一輝、やっぱここの手がまずかったか?」
「そうですね、こう変えたら……」
「こう行けば、あ、それでもダメか」
「局面をもう少し戻して見ましょう」
少し休憩してまた組み合わせを変えてを繰り返し、夜まで研究会は続いた。
夜になり、一輝が言葉を発する。
「それじゃあ、そろそろ帰りますね」
「待てよ一輝、メシくらい一緒に食おうぜ」
「それはいいんですが、居酒屋とかは止めてくださいね」
一輝の言葉を受け、加瀬が言葉を発する。
「僕が近くでお弁当を買ってくるので大丈夫ですよ」
「1人じゃ大変でしょう、僕も行きますよ」
「4人分の弁当なら大丈夫ですよ」
天馬との対局は刻一刻と近づいている。このメンバーとどこまで強くなれるか。




