仕事の依頼
竜帝戦6組ランキング戦3回戦で敗北を喫して以降に一輝は棋将戦予選、皇将戦予選に敗北し来年度までこれらの棋戦への参加資格を失う。
だがMHK杯トーナメントというテレビ棋戦の予選を勝ち抜き、本戦への出場権を勝ち取る。
3月に入り、対局、学校、研究と忙しい日々を過ごす一輝だが、突如スマートフォンが鳴り、将棋連盟の電話番号であった為、応答する。
「はい、長谷です」
「長谷四段ですね、私は将棋連盟の職員の今永という者ですが、よろしいでしょうか?」
「あ、はい」
「実は会長があなたに話があるとおっしゃっていまして今週の金曜日の午後5:00頃、将棋会館にいらしてもらって大丈夫でしょうか」
将棋連盟の会長が何故自分にと疑問を抱きつつも断る理由もないので承諾した。
「はい、是非行かせていただきます」
「それではそのようにお伝えしておきます」
職員の今永はそう言って電話を切った。
それから金曜日を迎え、一輝は将棋会館に赴き、受付に声をかけていた。
「あ、すいません棋士の長谷です。今日は会長とお会いする予定になっているんですが」
「少々お待ちください、ただいま確認いたします」
そう言って受け付けは電話確認を取り、確認を終えると一輝に声をかける。
「確認が取れました、会長室までおこしくださいとおっしゃっていました」
「ありがとうございます」
受付に礼の言葉を言って、一輝は会長室へと向かい、部屋の前に来るとドアをノックする。
ドアをノックすると中から声がする。
「どうぞ」
中の声に促され、一輝は中に入っていく。
一輝が中に入っていくと、そこには紳士然とした振る舞いの中年男性がいた。
彼こそまさに将棋連盟の会長である佐渡高文九段である。
会長職の傍ら、現在も順位戦でA級の座を保持している、トップクラスの棋士の1人なのである。
そんな佐渡から一輝に話しかける。
「どうぞ、お座りください」
「はい、ところで私に話というのは?」
一輝が尋ねると佐渡が返答をする。
「実はあなたに棋将戦の第5局の大盤解説をしてもらおうと思っているのです。まあ何人かで交代でやるので、あなたの負担はそこまで大きくはありません」
「でも確か第5局が実現するかはまだ分からないんじゃ……」
「解説棋士のスケジュールだけでも早めに抑えておかなくては、ギリギリになると都合のつかない方が多くなってしまうので」
「ですが、電話で済む話なのに、どうしてわざわざ直接呼んだんですか?」
次の瞬間、佐渡は口元を緩めて発言をする。
「あなたと将棋を指したいと思いましてね」
佐渡会長の思わぬ誘いに一輝は?




