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一歩の重さ  作者: burazu
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検討室での再会

 一輝が中継アプリを見て、将棋会館に向かってからしばらく時間が経過し、小夜と伊原は手を進めていた。


 伊原の方も小夜の振り飛車穴熊に対抗し、居飛車穴熊を組み上げる。相穴熊戦の様相となり互いに持久戦志向だ。


 膠着状態が続き、時刻が11:55となった時に現在手番である伊原が記録係に対して告げる。


「休憩にしてください」

「はい」


 本来昼食休憩は12:00からだが、手番の棋士が早めに希望する場合がある。


 もちろん12:00までの持ち時間は消費されるのだが、伊原は少しでもゆっくり考慮する時間が欲しく、早めに盤から離れ、一度自身を落ち着かせてから考えたいと思ったのだ。


 休憩を告げると伊原は最低限の持ち物を持って対局室をあとにする。


 小夜も伊原が対局室を出たのを見て対局室を出る。


 小夜が昼食休憩に入った頃、一輝は検討室を訪れていた。検討室には当日対局予定のない棋士や奨励会員、観戦記者達が進行中の対局を検討するのである。一輝は小夜と伊原の対局の検討に加わる為、訪れたがそこで思わぬ人物と遭遇する。


「黒木さん⁉」

「長谷君⁉」


 一輝が遭遇して驚いた人物とは黒木修一四段であり、一輝より10歳年上だが、同期昇段を決めた棋士である。


 そんな黒木に一輝が尋ねる。


「黒木さん、どうしてここに?」

「どっかの天才様と違って、1回戦負けで暇なもんですからね」


 黒木は少しばかり一輝に対して皮肉めいたことを言うが、同時に疑問も抱き一輝に尋ね返す。


「むしろ俺からしたらなんで長谷君がここに来たのかが不思議なんだが、どうしたんだ?」

「はい、今黒木さんが伊原さんと牧野さんの対局を検討しているなら僕も加えてもらっていいですか?」


 現在黒木が奨励会員と共に小夜と伊原の対局を検討している様子を見た一輝は黒木に検討に加えてもらえないか懇願し、黒木は奨励会員に確認を取る。


「俺は構わないが……いいか?」

「はい、僕も大丈夫です。むしろ長谷先生の考えを参考にしたいです」


 黒木と奨励会員の了承を得て、一輝も検討に加わることになった。


「それで長谷君はどうしてここに?」

「はい、牧野さんには昔から将棋を教えてもらっていて、何気なく中継アプリを見ていたら、振り穴を公式戦初採用だったのでこれは何かある予感がしたので」

「そういえば似たようなことを牧野さんも前にインタビューで言ってたな。俺達がプロ入りした直後に俺達の印象を聞かれたときに『長谷先生には昔から将棋を教わっている』って」


 一輝の小夜の対局の検討が始まろうとしている。

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