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一歩の重さ  作者: burazu
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研究会の後に

 天馬が師匠の大川のマンションを訪ねてから数日が経った頃、天馬のアパートの部屋に一輝、鎌田、村田が集まっており、天馬の次の対局相手である倉橋八段の対策の為の研究会をしていた。


 4人による練習将棋や直近の倉橋の棋譜からの傾向を研究していたのだ。そんな中、一輝が天馬に声をかけていた。


「多分、倉橋さんは序盤は相当時間を使わずに指してくるはずだ。天馬も時間配分には十分気をつけた方がいい」

「ふっ、前に俺の研究にはまって時間を大幅に使ったお前にそう言われるとはな」

「あの対局は最終的に俺が勝ったけどな」

「くっ!そう何度もあんな勝ち方ができるとは思うなよ一輝!」


 いつものように一輝と天馬がお互いの対抗心をむき出しにしていると村田が両者にツッコミを入れる。


「ちょっと待って下さい!今日は倉橋先生対策の研究会なのに何で2人が対抗心むき出しなんっスか!」


 村田のツッコミをよそに天馬が研究会の締めの挨拶をする。


「じゃあ、今日の研究会はこれで終わりだみんなお疲れ様!」

「お疲れ様です、真壁先生は対局が明後日だから、明日には大阪に行くんですよね」

「ええ、だから少し早めに寝ようと思ってます」


 天馬と鎌田のやり取りを聞いて一輝は村田に声をかける。


「それじゃあ村田君、途中まで一緒に帰ろうか、村田君作の詰将棋が解きたいし」

「でも長谷さん、すぐに解いちゃうじゃないですかーー」

「だからとっておきを頼むよ」

「うわあ、すごい無茶ぶりっス」


 一輝と村田が会話をしながら出ていくと、鎌田も天馬に帰りの挨拶をする。


「それじゃあ真壁先生、私も失礼します」

「あ、ちょっといいですか鎌田さん?」

「どうしましたか?」


 鎌田に問われて天馬は窓の外から一輝達が見えなくなるのを確認してから息を少し呑み込んで話す。


「実はですね、俺、今度の棋将戦でタイトルを獲得したら彼女にプロポーズしようと思っているんですよ」

「そうなんですか⁉いつもより気合が入っているとは思っていたけど……でもどうして私にその話を?」

「一輝や村田君に話したらあいつら俺の事をいじり倒しますからね。それに女性としてどう思うかなって気になって」

「私は結婚どころかお付き合いしている人もいないけど、きっと嬉しいと思いますよ」


 鎌田の返事を聞いて天馬が笑顔で礼を言う。


「そう言ってもらうと気合が入りますね、ありがとうございます」

「いえいえ、対局もプロポーズも応援していますよ、それじゃあ失礼します」


 そう言って鎌田は天馬の部屋をあとにする。天馬にとっては人生をかけた対局が今迫っていた。

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