1-1 鋼鉄の女
初投稿です。書きたいことだけ書いているのでご容赦ください。
独自設定・ご都合主義のオンパレードです。
それでもよろしいという寛大なお心の方はどうぞ!
※今後、一部宗教などの話題が出ますが、演出です。
記述している内容はあくまでも作者個人の思考や意見です。
特定の個人・団体・思想を非難または擁護するものではありません。
そんな人だと思わなかった。
本来であればシルヴィア・ベル・マクファーレンが人生において言いたくない言葉のひとつである。
面と向かって言わなかったのは、あまりのことに停止してしまった思考でも、ここで感情のままに行動したとしてシルヴィアに利益が一切ないことだけは辛うじてわかったからだ。
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シルヴィアは今年で19になる。
先日、王立学園の高等部を卒業し、来月からは王宮勤めだ。
ウェイクリング王国の成人は16で、貴族の多くは16歳までの中等部を出てすぐに王宮に入ったり、嫁いだりする者も少なくない。
が、勤めに入る前により多くの知識や技能を身につけるためにその後2年の高等部まで進む者も多いし、最近はそちらが主流になりつつある。
もちろん、家庭教師が優れているので学園には行かずに成人するというパターンもあるが、貴族であれば大抵人脈目的も含めて一度は学園に所属する。
では爵位を持たないものはどうかと言えば、原則12歳まで初等教育を国民の誰もが無償で受けられることになっている。
ただし、実際に受けている時間の余裕がどれほどあるかは個人による。
そのあたりのフォローに昼間の授業時間分とは別に賃金が支給される仕組みがあるので、年齢を問わず講義や補習が受けられる時間を講師が作ってくれる場合が多く、一応識字率は低くない。
その中で一部の成績優秀者は王都以外にもいくつかある中等教育機関に行く。
入学金や授業料の免除や減額であったり、寮が無料だったりと行きたい者に手を差し伸べようという制度はある。
それで充分なのかも、また別問題だが。
高等教育機関ともなると数えるほどしか存在せず、中でもほぼ全額が国の負担になる王立学園高等部の特待枠は熾烈な争いになる。
逆に、一定の身分があるか、一定の金額が払えれば入学は難しくないので、
極端ではあると思う。
これで学園内では皆平等にということになっている点はちょっと笑ってしまう。
そのどれも伯爵家の娘であるシルヴィアの、直接的な障害となったことはないけれど。
シルヴィアはマクファーレン伯爵家の長女だが、長子ではない。
次期当主で年の離れた兄がひとりと、弟がふたりいる。
優秀だが奔放なところがある兄と、遊びたい盛りのやんちゃな弟たちの面倒を見ることの多かったシルヴィアは、近しい親戚に令嬢がいないことも相まって、やたらと貫禄のある娘に育ってしまった。
学園時代、陰での呼び名が「鋼鉄の女」だったことは知っているし、実際その通りなんだろう。
おかげさまで、高等部に上がる段階で友人のご令嬢はほとんど卒業してしまったというのに全く気にせず2年を通した。
挙句の果てに、来月からの王宮勤め、知人は女官であったりするのに対してシルヴィアの職種は文官である。
まだ充分でないものの平民も王宮で政に関わる仕事に就ける仕組みがある、ということからもわかるが昔とは制度が変わってきている。未だ男性の世界という認識が強く女性官僚は少数派ではあるが、きちんと存在する。
シルヴィアは別に見目麗しいわけではない。身長は平均、痩せても太ってもいない。
髪色は、少し朱みがかっていて金髪と言うにはおこがましい、中途半端な暖色だ。
赤色の瞳は吊り目がちで、「貫禄がある」と言わせるのに一役買っている。
一応は貴族の娘が、美人じゃないのは十分に相手を落胆させられるし、気が強くて小賢しい伯爵家の娘など仮に自分が男性だったら真っ先に候補から外す。
しかもご令嬢から「シルヴィアの方が下手な男性よりもエスコートが上手」などと言われる有様、両親には悪いが早々に結婚を諦める以外にない。
そういう訳でシルヴィアは自分の力で生きていかなければならないので、高等部に進むことを決めたのだ。
自分を冷静に見た結果、恋愛と結婚は自身と縁遠いものと判断したのだが、恋とはするものではなく落ちるものだった、と後に地団駄を踏むことになる。
いや、一応はシルヴィアも年頃の娘なので、あくまで心象的にだが。
・今後の展開を踏まえて一部加筆いたしました。大きな変更はありません。(5/1)