色々あるけどネットも報道もまだまだ捨てたもんじゃないと思った日~高校生と男性と6万円~
先日、沖縄を代表する新聞のひとつに「島に帰る為の飛行機代6万円を貸してくれた男性を、男子高校生が探しています」という内容の記事が掲載されました。
沖縄は沖縄本島を始めとした無数の「島」で形成された県で、小さな島に住む子供はたいてい高校生になると沖縄本島や大きな島にある高校に通う為、親元を離れ島を出ます。
少年も島から高校に進学する為、沖縄本島にやってきたのだろうと思います。
少年が帰ろうとしていた与那国島は小さな島です。昔平均視聴率20%台をたたき出したとあるドラマのロケ地としても有名なので、検索して頂ければどれくらいの島か判ると思います。
沖縄本島から与那国島へ行く飛行機は、1日1本しか飛んでいません。船も不定期にしか出ていません。
伯父の葬儀に参列する為、1日たった1本の飛行機に乗る為、きっと慌てていたのでしょう。
空港があるモノレール駅に到着した時に、ようやく「財布が無い」事に気付く程に。
電車や新幹線が走っている都道府県にお住まいの方には判らない感覚かもしれませんが、沖縄本島以外の島に住む沖縄県民にとって飛行機はかなり身近な交通機関です。なんくるないさーやうちなーたいむなど、時間にルーズと言われる沖縄県民ですが、飛行機の時間だけは必死に守ります。バスは待ってくれても飛行機は待ってくれないのです。
急に帰らなくちゃいけない時の飛行機運賃がいくらかかるかは、有名な飛行機会社の普通運賃を見て頂ければ判ると思います。高いです。
学生だとカードという手段はとれないでしょうし、きっと飛行機代を前の日に口座からおろして、お財布に入れて、当日空港に着いたら飛行機のチケットを買って島に帰るつもりだったのでしょう。
私も身内の不幸の時に空港に駆け込んだ事がありますので、少年の焦燥が手に取るように判ります。
どうにか出発時刻前に空港に着けた。
飛行機に乗れる。間に合った。良かった。
後はチケットを買うだけ。
そこで「財布が無い」
絶望です。
搭乗時刻ギリギリの状況、お金を取りに家に帰る事は出来ても帰ったら間違いなく飛行機に間に合わない。
本当に頭真っ白になったと思います。
そんな少年に、きちんと身元確認もせずに飛行機代6万円を貸し、飛行機に乗り遅れないよう気遣い送り出してくれた男性がいました。
警察にも「貸した相手が判る訳がない」
知人からも「騙されたんだよ」
男性はそのように言われたと記事に書かれていました。
それでも男性は、お金を返しますと言った少年を信じてくれました。
少年も、学校の先生方や新聞社まで巻き込んで必死に男性を探しました。
そして二人はようやく連絡を取る事が出来ました。
そもそも借りた時に少年がきちんと連絡先を聞いていればと思うかもしれませんが、10代の子供です。
身内の死に直面し、更に財布が無いとパニックを起こしている時に、そこまで冷静な対応なんて出来なかったのでしょう。
少年は、少年の訴えを聞いて力を貸してくださった通っている高校の先生方と一緒に、今度男性に会ってお金を返し、手作りの贈り物を渡すそうです。
少年の力になってくれた先生方。
少年や先生方の頼みを聞いて「探しています」記事を載せてくれた新聞社の方。
ネットニュースになる位、二人の行動に感動して記事を拡散してくれた、たくさんの人達。
皆さんの善意が集まって、今回の素敵な再会が生まれたのだと思います。
本当に色々言われているし色々あるけれど。
ネットも。
報道も。
まだまだ捨てたもんじゃないなぁと心から思った今日でした。