秋愁と白日
今日の二話目です!
「両親の馴れ初めや過程なんて知るわけないだろ、ハートフルな邦画でもあるまいし」
「オメーの言う誠実ってよ、裏返せば知らない事や勘違いを不誠実って言ってるようなもんじゃん。オメーは自分の両親の事も不誠実だと思うのかよ?」
別にロリ子の言うように不明確な部分や勘違いが誠実さを欠いているなんて思っちゃいないが、そこから始まった好意は真実ではない。
いや……俺は理由が欲しいだけなのだろう。
「勘違いだろうが、誠実じゃないとか重要かよ? 綾香が勘違いからオメーを好きになったとして何か不都合でもあんの? てか陰キャには勿体ねーくらいの相手だとウチは思うけどね」
田中に好意を持たれているのが分かっても、俺は鬱陶しいなんて思った事はない。嬉しいとさえ思っていた。
だからこそ、隠し事がバレた時を想像すると俺は怖かった。だから自分から突き放した。
見えない事が俺には恐怖なのだ。
「不都合……はない」
「オメー深く考えすぎ、純粋な好意ですら誠実じゃないって言いたいん? それこそ綾香の好意に対する誠実さを欠いてんじゃん、知らない事は存在して当たり前、勘違いの上に立つ好意でも培ってきたもんでしょ? 互いに全部見通せるのが恋愛とでも勘違いしてんのは二次元脳のオメーだろ。そーゆうのが陰キャくせーんだよ。過程がどんなんでも好意を素直な結果として受け止めればいいじゃん。器ちっせーんだよチビ」
「正直もう言葉を返せないんだが、その辺で収めてもらえると俺のメンタルが助かる、いや本当に勘弁してくれ、マジで」
ロリ子はまだ言い足りなさそうにしていたが、ボロクソに言われてズタボロな俺の泣き言を加味してくれたのか、それ以上の追及や口撃を止めてくれていた。
「ウチの目的は、ウチの居場所をちゃんと直せって言う事。オメーの色恋沙汰とかはどうでもいいとしても、関係があるならそこから解消しなきゃなんねーけどな」
「随分と遠回りしたな」
「あ? まだ言われたりねーのか?」
「すいません! 勘弁してください!」
ロリ子がどうして居場所に拘るかは知らんが、その部分を俺が問題視するべきではない。俺がやるべき事は、田中と笠木の関係を修復する事、そして条件として考慮しなくてはいけないのは俺自身を犠牲にしないで解決する事だろう。
「とりま、直ぐに解決出来るとは思ってねーけどオメーにはそれなりに期待してんだからウチの期待、裏切んなよ?」
先日の下駄箱でも思っていたが、俺はロリ子と接点が無い。ロリ子が俺に対する評価は何やら低いとは思えないし馴れ馴れしいまである。
それだけ田中が俺の印象を良くするレベルで陽キャグループの話題に出していたのだろうか?
「なぁ、俺の事どう思ってる?」
「は? この状況で口説いてんの? 気持ちわりぃんだけど……」
変な捉え方をされてしまったし、本気で気持ち悪いと思ってるのが表情から伝わってきて本当にメンタル死ぬよ? いいの?
「いや、そういう意味じゃなくてだな、接点無いのに妙に親身だからな、何か理由でもあるのかと」
ロリ子は俺の発言で意外そうな顔をしている、俺は何かおかしい事でも言ってしまったのだろうか?
「あー……もしかしてお前気付いてねーのか? それならそれで泳がしといた方が面白いか……」
何やら一人で言って、一人で納得している様子のロリ子の返答を待つが俺の欲する返答とは違う角度からの返答が飛んでくる。
「木立、貸しイチな! 主人公ちゃんとやれよー!」
俺を放置して階段を降りていくロリ子は去り際に嫌な置き土産を残していく。
どうやら俺は知らない間にロリ子に押し売りの如く貸しを作ってしまったらしい、それにしても主人公なんて似合わない役目を押し付けられてしまった。
口に出して言う事ではないし、その一言で我ながら単純だとは思うが、少し足掻いてやろうじゃないか。俺が壊してしまった物を元通りにするだけだが、俺の気分は久しく高揚していた。
ロリ子が階段を降りて行って数分、この高揚した状態を維持したままじゃないと俺は、また深く考えて悩んでしまうだろう。
腰かけていた身体を起こし、見えない背中に付いているであろう埃を払い、俺は階段を降りて教室へ向かう。
教室前方の扉を勢いよく開けると教卓を中心に談笑をしていた円卓の騎士一同の姿が見える。人目とかどう思われるかなんて知るか、元々無いような他人の好感度なんか気にするだけ無駄だ。
そんな事より、俺を好いてくれた人や俺が好きな人の事だけを考えろ。
ドアを勢いよく開けたにも関わらず田中は俺の存在に気付かないかのように笠木とハリボテの会話を続けていた。
「田中、話がある」
俺が声を掛けると田中はようやく俺と視線を合わせるが表情から察するに、俺と話すのは避けたいようにも思えるが、此処で乗ってもらわなきゃ埒が明かない。
「俺達についての話だ、時間を取ってもらいたい」
教室中からは、高橋と田辺を筆頭に囃し立てる声が聞こえるが、こんなもの近所の犬が吠えるのと変わらない、気にしなくていい。
「いやアンタと話す事なんて今更ないから、どっか行ってくんない?」
「え……?」
正直、この流れで会話すら拒否されるとは思っていなかった。池田のわざとらしい笑い声を皮切りに高橋達が先ほどとは真逆の意味で俺が振られただの、木立撃沈! と言った嘲笑う言葉を投げかけてくる。
犬が吠えるのと変わらんとは強がっていたが、メンタルには効くな……。
そんな俺は救いを意味を込めてパイプ椅子に腰かけていたロリ子の方を確認すると指でバッテンを作り俺の行動の結果を示していた。
どうやら俺が思ってる以上に深刻な問題で根は深いのだと悟る、そしてこんな状態で明日は笠木と二人三脚をしなくてはならないのだと自身の行動への後悔は強まっていくばかりだった。
最後まで見ていただきありがとうございました!!




