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秋愁における台風の被害は甚大です

今日の更新分となります!!! 深夜に執筆しておりますが、Twitterで行っている(0:39現在)アンケート結果によっては、そろそろサブ作品である【わた転】でも書き進めようかなと思ったりしております;w;

 ケバ子と登校した際のルール……俺は教室へ向かう前にトイレへ向かう。

 理由は幾つかあるが、基本的には陽キャグループにイジられるのを避ける事が大きな要素となっている。俺とケバ子両者へのメリットでもある。

 その為、最近では三日程トイレへ向かうのでケバ子は俺の事をお腹が弱い奴として認識している事だろう、一度も聞かれた事はないけどケバ子なりの気遣いだと思う。


 トイレで行う事はスマホでネットニュースを見たり、イジる必要もない髪型を捏ね繰り回したり、前髪の長さを確かめたり、制服の汚れを確認したりと様々だ。

 そして頃合いを見計らいトイレから脱出し教室へ向かう。今日に限っては非常に憂鬱だが自分の行動のツケみたいなものだと思い無理やり納得させる。


「アンタ、前々から思ってたけどアタシは別になんとも思ってないからね、アンタが嫌だってんなら別だけど」


 ケバ子は廊下の壁に背中を預けながらスマホを触る指を止めて俺の方へ向き答える。どうやら最初から俺の性格を見抜いていたらしい、考えれば数ヵ月の付き合いになるのだ。俺の性格くらい把握していても別におかしくはない。


「……そうか、それなら余計な配慮だったな、悪い」

「それにアンタ今日は教室に入りづらいっしょ? アタシと行った方が得じゃん」


 得という表現は物に対する言い方みたいで好きな表現ではないが、間違っちゃいない。俺が陰キャ過ぎて深く考えすぎだったのだろう。


「アタシは自然にしてればいいと思うけどね、男女で登校とか別に普通っしょ。中坊じゃあるまいし意識しすぎ」

「これまでそういった経験がないから中学生どころか小学生レベルだけどな」


 教室へ向かう廊下を歩きながら俺達は会話をいつもより長く続ける。俺の中のスタンダードや常識が塗り替えられていく気分だが、悪くはないと思っている俺がいる。

 教室へ着く直前、予鈴ギリギリの時間で廊下に生徒の影は少ないからか、はたまた関係ないのかケバ子は一度立ち止まる。


「ん? どうした?」

「一応、誤解が無いように言っておくけど、アタシもアンタの言うそういった経験ての無いかんね」


 このタイミングでゴールデンタイムに抵触しかねない発言をしないでもらいたい、正直反応に困る。


「そ、そうか……意外だったがお互いに青春からは程遠いみたいだな」


 俺の発言でケバ子は動く様子はなく、何かを考えている。何か喋るのだろうと俺も足を止めたままケバ子の言葉を待つ。


「……程遠い、ね」


 その言葉がどんな意味を持つのか俺には読み取れないが何か悩んでる事は明白だった。嫌な予感とかではないが、このまま予鈴が鳴っても仕方ないので俺は教室への移動を再開する。

 後ろから小走りする足音が聞こえて俺の隣で速度を緩めて並び歩く。その後、教室へ着くまでは他愛の無い会話を続ける。

 

 この日、俺が懸念していた教室の雰囲気は案外悪くなく、いつもより少しだけ多くの視線を感じる事のみであった。

 前方ドアから俺が入ってくるといつもは自席で寝ているか教卓の傍にあるパイプ椅子で寝ている池田は俺が入ってくるなり睨みつけてくるが、後ろにケバ子がいると分かると、気まずさから視線を逸らしていた。

 常に正解を選び続けるケバ子が主人公ではないか? と錯覚しそうになるが俺が想定した最悪の結果は俺との面会を避けたらしく何事も無かったかのように窓際後方にある自席に座る。


 藤木田も俺が気になっていたのか、俺の方を見ているようだったが気にしない振りをして、久しぶりのフェイクスリーピングをしようとしていたが、肩を叩かれて顔を起こすと円卓の騎士ごっこに勤しんでいた笠木が隣の席へ戻ってきていた。


「やっぱり起きてた」


 俺のフェイクスリーピングは笠木には既に通じないけれども、仮に俺が本当に寝ていたらどういった反応をするのか気になるところだ。


「何か用か?」

「昨日はありがとう」


 個別チャットで既に目にした言葉だったがこういう部分が律儀な笠木らしいと俺は思う。


「俺が勝手にやった事だから気にしなくていいぞ」

「それでも結果的にクラスのみんなが助けられたのと一緒だし気にしちゃうよ」


 何やら以前、藤木田と似たような話をした事がある。少々苦い思い出だし今思うと青春してて恥ずかしい気分になるが表情は何事も無かったかのように振る舞う。


「じゃあ有難く受け取っておく、貰えるものは全て貰う性分なんだ。悪意も善意も全てな」

「木立くんらしい、言い回しだね」


 いつもの笠木なら最後の一言はスルーするはずなのだが、反応を示している。何か心境の変化でもあったのだろうか?


「それでね、例の件だけど早めに話し合いたいから今日とか暇かな?」

「んあ!?」

「え? 何か用事あったりした?」


 これが俗にいう、ダブルブッキングというやつなのか? 確かギャルゲのシステムでも低確率イベントとして稀にある。しかし俺は今日ケバ子との先約がある。

 優劣を付けるわけでは無いが、こういった状況ならば先約が優先されるのは当然の事である。


「まぁ……あるな」

「そっか、もしかして綾香と何かあったりとかかな?」


 鋭いな、正解をピシャリと当てる考察能力に敬礼。俺の交友関係の少なさから予測するのは簡単ではあるのだが……。


「正解、何で分かったんだ?」

「半分くらいは勘だけど、今日は綾香と一緒に登校してたみたいだし何かあったのかなって思ったの」


 誤魔化しても仕方ないし正直に言っといた方がいいだろう、そもそも最近の笠木相手に隠し事や嘘が通じるとは思えん。


「あぁ、放課後に遊びに行く事になっただけだ、何をするかまでは俺も知らんけど」

「へ、へぇ~放課後に遊びに行くなんてデートみたいだね……」


 何やら焦っているのか引いているのか分からない表情をしているが、笠木としては芳しくない状況なのだろう、二人があの日何を話したのか俺は知らないし考察しても仕方がない、笠木の表情の理由など俺が知る由もないのだ。


「デートという名目らしいぞ、陰キャの俺にしては天変地異でも起こりそうなくらいに激レアイベントだけど、内容的には遊びに行くのと変わらないはずだ」

「う、うん……」


 返答をした後、笠木は予鈴に合わせて一時限目の準備を始める、俺も返答は無いと判断してフェイクスリーピング体勢に移行しつつも授業開始のチャイムを待つ。


 この時の俺は知らない。

 いや、知っておくべきだったのだ。

 あの日、笠木とケバ子の間でどのような会話が行われたのかを。

最後まで見ていただきありがとうございました!

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