表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/203

秋愁に置ける試練が訪れました、と俺は思っていたわけです。

今日の更新分になります>< 楽しんでいただけたら嬉う!

「はぁ? アタシそれ聞いてないんだけど!」


 朝の通学路。基本的に学生の登校は一週間の内、平日の五日間のみとなっている。高校入学当初はソロプレイを満喫していた俺だったが、今や道中でケバ子とエンカウントしパーティーを組んで登校する回数は五日中三日に増量キャンペーンも真っ青な数に膨れ上がっていた。


 というより、通常のエンカウントでは無くシンボルエンカウントのようにケバ子は道中で俺を待っている。目が合ったらバトルどころの話ではない。目が合わなくてもバトルくらいにぶっ壊れている。


 そんな中、陰キャの俺としては珍しく昨日の起こった池田のクラス軟禁事件をケバ子に振ってみるとケバ子は案の定知らなかったらしい。


「やっぱり知らなかったか、今クラス内では俺と池田がヘイト王として競り合っている状態でもある」

「ヘイト? 何それ? そんなん知らないけど話は流れたって事でいいんしょ?」


 話が完全に流れたとは言い難い。藤木田先生曰く後日持越しとなっている事から再加熱する可能性も否めない。

 しかし、これ以上ケバ子のボルテージを上げても仕方ないし、池田はケバ子にビビってるから可能性としては低いだろう。


「完全に流れたとは言えないが、まぁ台風の目は過ぎ去ったという感じだな」

「それにしてもアンタにしちゃぶっ飛んだ行動したね~」


 確かにネジが外れたかのような行動だったと自覚はしてるし、少しばかり後悔もしている。そして今日教室に入るのは怖いまである。

 池田が何か手回しをしたならばヘイトは完全に俺に向けられてゲームオーバーだ。

 あれ……? 中学や高校入学当初に戻るだけだから別に問題ないな。最初からゲームオーバーだったわ、うん。


「俺がこの世で一番嫌いな人間が池田のようなタイプだからな、俺の貴重な放課後が潰されたんだ」

「いや、アンタの放課後とか絶対直帰っしょ……」

「俺にだって色々あるぞ。深夜のアニメの撮り溜めを確認したり藤木田と黒川とアニメやゲーム業界について語り合ったり、放課後デートしたりとかな」

「は……? デート!? 相手は!?」


 冗談で付け加えてみた話題に凄い勢いで食いついてくるとか止めてほしい、そこはいつも通りに流してほしい部分だ。

 陰キャの中でも屈指と言っていいくらいに俺は偏屈なのだ、そんな特殊な人間にデートをする甲斐性などあるものか。


「そこは冗談だけどな、そんな俺の放課後だって俺にとっては重要なんだよ。個人の感じ方の問題だし今の田中みたいに実はそれ重要じゃんって内容を相手が抱えてる可能性がある事を考慮しない発言を池田はしたんだからな、俺も文句を言う事くらいある」


 言い終わると最近和らいだとは思えない威力で後頭部を叩かれる。俺を叩いたケバ子の方へ視線を向けると、少し機嫌が悪くなっている事が伺える。またオレ何かやっちゃいました? 一回くらい言ってみたい台詞を脳内で言ってみると少し楽しい。


「冗談……冗談ねぇ。まぁアンタの言いたい事は分かるかな~どうせ後で話す事になるだろうしアタシからも釘は刺す」


 何やら納得していないような雰囲気を出すケバ子に違和感を覚えるが、ケバ子から釘を刺されると池田も強く動く事は出来ないだろう。

 陽キャグループ勢力図作ったらじゃんけんみたいになってそうで想像すると少しだけ笑えてくるな。


「そりゃ池田にとっては厄日だな、俺は池田から何も仕掛けてこない限りは傍観者を貫かせてもらう」

「アタシは池田の言う事も少しは分かるけどね、強制の部分じゃなくてクラス一丸となってそういうイベントに取り組むって姿勢とかってやっぱり学生の特権じゃん、今回のは空回りだけどね」


 ここら辺がケバ子と俺の違いなのだろう。基本的に全ての事に前向きで前進を続けるケバ子に対して、全ての事に後ろ向きまではいかないが、横向き程度で様子を伺った後に後退する俺。

 確かにケバ子は悪い奴じゃない、俺が今まで出会った人間の中では断トツトップに君臨するくらい出来た人間だ。

 相容れない部分は存在するのも間違いない。


 しかし……仮にどちらかが歩み寄った時にその関係はどうなるのだろうか?

 いや、既にケバ子は歩み寄ってきている、ケバ子がこれ以上、歩み寄れない壁を置いているのは俺の方なのだ。

 ケバ子はもう歩み寄れない壁の奥にいる俺に話しかけてきてる、その言葉に返答をしたら……恐らく。


 俺が目指す誠実には程遠い、予感はする。

 そう遠くない未来に俺の周りの関係性は変わるだろう、俺の選択で壊れるか新たな世界が出来上がるのかは断言は出来ない。

 ただ、その部分に対しては誠実に横向きながら前進して確かめる他ないのだ。


「空回りを一人でする分には構わないんだけどな、ん? もう学校か」


 ケバ子と話しながら登校をしていると、校門が見えてくる。なにやら最近時間の経過が早い気がするがピーターパンシンドロームの俺からすると、もう少しゆっくり時が進んでくれる方が嬉しい。


「……そ、その言い方だと、アンタも学校着くまでって早く感じてるって事ね」

「あぁ、それがどうしたんだ?」


 何やら別の意味があるのだろうか? またオレ何かやっちゃいました? というキラーワードが本来の意味を持って俺の脳内で表示される。


「べ、べ、別に! アンタさ、今日暇でしょ?」

「え? 暇じゃない、直帰するからな」

「それ世間では暇って言ってるのと一緒だかんね、まぁいいや。さっき言ったの正夢ってのとは少し違うけど、叶えさせたげる」


 俺の願い? 何を言ってるか分からんが、最終的に魔女化しそうなのでお断りさせていただきたい。俺は白い悪魔の営業と池田の話は聞かない事にしてるんだ。


「俺の願いは直帰なのだが」

「うるさい、黙れ! アンタ今日はアタシと放課後デ、デ、デートね!」


 何気ない俺流の冗談は現実にブートされてしまったようだ、しかし俺もS級の陰キャを自称する男だ。直帰に掛ける情熱は本物だ。


「いや、直帰するん――」

「断ったら池田の味方するかんね、アタシも嫌だけど」

「分かりました、お供します」


 再度池田と対立する恐怖を避ける為に反射的に了承をしてしまう。

 ケバ子は、冗談と笑いながら俺の頭をポンポン叩くが、放課後デートは冗談では無さそうな雰囲気だ。

 別に放課後デートと言う魅力的な単語ではあるが、夏休み中に遊んだのと変わらないのだろうと俺は思う。


 懸念されるべき事は一つだけだが、俺が不誠実から誠実へ昇華する為には必要な事なのだろうと思う。

最後まで見ていただきありがとうございました!!!ドン!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ