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秋愁と強欲な大罪人

 数日前、知り合ったXX。XXと過ごす日々は私に彩りを与えた。灰色と形容する事すら生温い。

 限りなく黒に近い日常というキャンパスを白で塗りつぶした。これから何を描こうか? そう思いながら過ごす毎日が好きだった、ささやかな幸せでいい。


 でも……最初から知っていた、気付かない振りをしていただけ。

 私は怖かった、臆病だったのだ。

 消えゆくXXを見て避けられない運命から目を逸らしていた事実を突きつけられる。

 XXが私に云う。


「来年また訪るよ、織姫と彦星みたいな関係もロマンチックでいいじゃないか?」

「違う……違うよ! 次のXXじゃなくて今のXXじゃないとダメなんだよ……」


 『我儘を言わないで』そう言いたげな、子供をあやす様にXXが私の頭を撫でているような気がした。

 あぁ、私は最後まで甘えてしまうのだろう、抗えない運命を受け入れるXXのように強くなれないのだ。


「それでも君は来年の僕も愛してくれるでしょ?」


 今のXXを裏切るような返答をしたくない私は、駄々を捏ねる子供のように口を噤む。

 それが答えだと言わんばかりにXXは先ほどよりも一層薄くなり、生命を燃やし続ける。


「やめて……止まって!」


 私だって分かっている、受け入れられないだけ。

 人の老い同様、逃れられない運命に無駄な抵抗をしているだけ。


「ねぇ、お願いがあるんだ」

「……お願い?」


 XXの最初で最後のお願いであり、我儘を私が聞かないわけがない。

 私が断れない事を知った上で、この質問は卑怯だ。


「最後の一日は明日に怯える君じゃなくて、好きな事をして楽しんでる笑った君が見たいな」


 既に消えかけて表情は無いXX、それでも私には出会った日のXXの表情が見えるのだ。

 それが答えだと言わんばかりに、どこまでも優しいXXに私は無理やり笑ってみせよう。

 きっと来年の私は来年のXXを愛してしまうだろう。それでも後一日だけは……

 

 今のXXを好きな私でいさせてくださいね。





 ―バイバイゴールデンウィークー

 残暑も過ぎ去り、夏と冬の間にある秋という日本特有の四季の中でも比較的過ごしやすい季節、夏服から冬服へ衣替えしている生徒が見受けられる通学路、そろそろ俺も冬服へ衣替えするかと考えながら歩く。


 俺は一介の平凡以下の高校生に過ぎず世界を救うだの、登校中に幼馴染に後頭部をぶん殴られるといった非日常や二次元の世界ではありがちな大それた問題に頭を悩ませる事もなく、三次元と二次元を統合したらかなり幸せな部類になるだろう。


 しかし分母が大きくなるから目立たないだけで、俺にも悩みの一つや二つは存在する。そして数ヵ月に渡る悩みの種を未だに解決出来ずにいる。

 少なくともこの時点で俺がヒーローになるという未来は無いに等しい。モブキャラにトゥルーエンドを求めるなんて笠木も難儀な事を課してきたものだと思いながらも逃げるつもりも無いので俺は考えるのだ。


 俺の武器は、全てを許し包み込む包容力と大胆さを兼ね備えたハーレム主人公でも無く、チートを使って別の正義を大量虐殺をする異世界主人公でも無く、友情と努力のみで勝利を得るスポコン主人公では無く、陰キャ特有の捻くれた思考回路を巡らせる事のみである。


 どれだけ祈ろうが、俺には異能の力は宿らないし、現実で大量虐殺なんかしてみろ。よく聞く名言で一人殺したら殺人者、百人殺したら英雄というものがある。

 俺はあえて言わせてもらう。バカか、一人殺そうが百人殺そうが殺人者だし犯罪者だ。くだらない正当化をするなと。

 そんなファンタジーが許されない世界にいる俺だからこそ、ひたすらに考える。

 笠木が望むトゥルーエンドを、今度は間違えないように。


 そんな事を思いながら、俺は学校へ向かう通学路を一人ナメクジが這いずるようにゆっくり歩いていると、何やら頭を突かれる感触があった気がするが、どうせ風で髪の毛が揺れて勘違いしたのだろうと気にせず歩くことにした。

 数秒後にまた頭部を触れられたような感覚がして、流石に勘違いではないと振り返ると浄化されたケバ子が立っていた。


「お、おはよう」


 なにやら余所余所しい、化粧のせいなのかギャルギャルしい感じが抜けている。

 野暮ったい人の事、まぁ俺の事だが。そういう人間がビジュアルや性格を改善する事を垢抜けると言われる事があるが、今日のケバ子は逆だ。

 別にギャルギャルしく無くても外見自体は垢抜けているが、喋り方に違和感を感じる。こういうのを垢足すと表現してみよう。


「あぁ、田中か。いつもみたいに後頭部を殴られないから誰かと思ったぞ」

「そういうの止めよっかなって……普通に挨拶してみたけど変?」


 しおらしさすら感じるケバ子の振る舞いに少しだけ照れてしまうのは、笠木への裏切りではなく思春期の男子高校生として正常な反応だと俺は主張したい。

 夏祭り以降、意識しないようにはしているし何事も無かったかのように振る舞っているが、追及されたらどうしようと内心冷や汗の水溜りが出来ている。

 助けてくれ藤木田! この際、気狂いの黒川でも可とする。


「変では無いが、調子が狂う。馴れの問題だとは思うけどな」

「へぇ、アンタはこういう方が好みかと思ったんだけど、いつも通りのアタシの方がいいって事?」

「物凄い端折ると……そうなるな」

「そっか!」


 ケバ子の返答を境に、俺はケバ子に分かるように止まっていた足を動かすと、ケバ子も俺に歩幅を合わせて歩き始める。

 

「そういやアンタ体育祭どうすんの?」

「体育祭?」


 そういえば今月の何日だったか興味が無さ過ぎて覚えていないが、体育祭があった事を思い出す。


「アンタ本当に興味の無い事にはとことん興味ないよね」

「運動自体が好きじゃないからな、しかしラノベの新刊の発売日は熟知しているぞ、ラノベ新刊発売日クイズでもやるか?」

「いやいや、その遊び知らないし、普通にキモイかんね」


 え? これ普通じゃないのか? ラノベじゃなくても漫画とかでもやらないのだろうか?

 やはり陽キャの趣向と言うのはよくわからんな。


「キモくない陰キャなんて存在しない、そういう田中は何の種目に出たいんだ?」

「アタシは何でも大抵一位取れるし、言うほど出たい種目はない感じ」


 流石陽キャ、運動能力に極振りが当たり前だよな。


「てか、アンタも体育とかプール見てて思ったけど運動とか苦手じゃないじゃん」

「ソロプレイ可能な運動は得意だぞ、チームプレイではコミュニケーション能力が邪魔をして俺VSチームメンバーの構図になるから試合が別の場所で始まる」

「それ、自慢するように語る事じゃないかんね……周りもアンタをちょっとでも知れば印象変わるはずなんだけどね~」


 何を言う、俺は噛めば噛むほど味が出るスルメじゃなくてサルミアッキのような存在だぞ、更に印象が悪くなるどころか二度と絡まなくなるに一票。


「まぁそれでもアタシは知っちゃってるし、とりまアタシいればいいっしょ?」


 屈託の無い笑顔を見せるケバ子に一切の偽りはない。唯一彼女だけが絶対的な善人である。その優しさに甘えた自身が申し訳ない、そして恥ずかしくなる。

 だからこそ俺は答えを出せるように、ちゃんと考えて解を出さなくてはいけない。

 一人で楽になろうとせず、俺が笠木に負わせてしまった後悔を拭いケバ子も救われるそんな未来を迎えられるように。

最後まで見ていただきありがとうございました;w;w;;w;

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