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秋愁とラッキーラブコメ

秋の部活動編はこれにて終了となりますです;w;

楽しんでいただけたら幸いです!!

 そもそもOSO団を探す必要は無い。藤木田と黒川は気付いていないのだろうか? 図書室の最奥にいる男の事を。

 一見するだけで判断出来る同種のオーラを纏う男が一人。小太りで低身長、ボサボサの髪というオシャレを捨てたような外見と思いきや、妙にオシャレなスクエア型のメガネ。

 そして、手に持ってる書物はブックカバーという学内必須装備を外した美少女キャラを前面に押し出したライトノベル。

 黒川に倣って言うならば、迷彩服を着ないで戦場に飛び込んでいるのと一緒である。


 ウチの学校の図書室にはライトノベルが置かれていない事から、男の私物である事は明らかだ。家に帰って読めばいいのに、わざわざ学校の図書室で行っている。

 普通のオタクや陰キャならば、人目を気にしながらこそこそと隅っこの方にいるように自分の趣向を楽しむものなのだが、男は堂々としている。


 しかし、ここで俺が『見つからないから帰ろう』と促したらどうだろうか? いや……ダメだ。

 藤木田と黒川は明確な目的を持って行動しているから引く事はないだろう。

 全てを諦めた俺はミッションを淡々とこなすように藤木田と黒川の肩を一度叩き、最奥にいるOSO団の大橋の方へ視線を向けると藤木田と黒川は、財宝でも見つけた冒険者のように大橋の方へと歩いていく。


「あの、すみませぬ! お伺いしたい事がありましてお声がけさせていただきましたぞ!」


 軽音部の山内には、言葉を選んだ癖に同種の大橋には取り繕わないのか。

 藤木田の声に反応した男は、藤木田に返答をするのではなく足元にあった鞄を漁りブックカバーを取り出すとブックカバーを下敷きに読んでいたライトノベルのページにしおりを挟み置く。


 ブックカバーの使い方間違ってない? 小学校の給食のナプキンかよ。


「……何だい?」


 声ちっさ! 図書室の静寂さじゃなかったら聞こえない音量で男は藤木田に返答する。


「OSO団の部長の大橋氏でございますか?」


 大橋はズレてもいない眼鏡のフレームを手の甲で直し小声で藤木田へ返答する。


「……いかにも、よくぞ辿り着いたな」


 言葉だけならRPGの魔王のような威厳のある言い回ししてるんだから声も張ってほしい。こんな弱々しい魔王とか四天王からクーデター起こされるぞ。


「そうでしたか、某は藤木田と申しますぞ! OSO団に興味があり活動内容を見学させていただければと思いましたのですぞ!」

「俺は、アビスアンドサンのマスター兼AR担当のダークリバーだ、貴様の担当はなんだ?」


 相変わらず敬語使わないのか、今後困るだろうから後で矯正してやろう。そもそも言ってる事がおかしい事には突っ込まないからな。


「……え? 保険委員だけど」


 ほら真面目に答えちゃって逆に成立しないんだよ、これで俺が黒川の会話に修正を入れるのは本日二度目だ。さっさと帰りたいので積極的に黒川語の翻訳を行わせてもらおう。


「すみません、その男の話はスルーしてください。残暑で頭がやられてしまったんです」

「俺がヘッドショットを撃ち込まれるとでも?」


 言葉遣い以外にも矯正してやろう、その方がみんな幸せになれる。


「それで、OSO団では、どのような活動をしているのですかな?」


 藤木田も俺と黒川では話が進まないと感じたのか、割って入るように大橋へ本来の目的を訪ねると大橋は、先ほどブックカバーの上に置いたライトノベルを俺達に見せるように掲げる。


「……二次元を愛し真髄に向き合う、ただそれだけ」


 物凄くカッコイイ事言ってる風に聞こえるが、単純に好き勝手過ごせと言っているようなものである。しかし、大橋の理念は原点にして究極だと俺は思う。


 俺も消費豚とは言ってしまっているが、ただ好きな事を好きなように楽しむというのは難しい。

 頭を捻り嫌いな作品をディスったり、評論家の真似事をするように中途半端な知識で作品の改善案を主張する奴らが近年のオタク界隈では多い、俺も例外に漏れず嫌いな作品はディスる傾向にある。


 その中で、ひたすらに好きな事だけを選び続けて楽しむという行為は言葉のように簡単ではない。ある意味悟りを開いたと言っても過言ではないだろう。


「周りに左右されずに自分を貫くという事ですな……?」


 藤木田も大橋の理念を理解し納得した様子であった。


「……え? あぁ、うん……」


 前言撤回。

 それっぽい事言ってるだけだったわ、あれだけ思考を張り巡らせてた俺の方が恥ずかしくなってくる。

 しかし大橋のテキトー加減に、藤木田は気付いていないようでOSO団の入会に前向きなようだった。


「大橋氏の意見には大変感服致しました! 仮という形ですが、某もOSO団に入会したいのですがよろしいでしょうか? お願いしますぞ!」

「では俺も入会しよう。 フィールドは違うが、貴様から学ぶことはありそうだ」


 藤木田は、言葉を言い終えると同時に頭を下げると黒川も藤木田の横に並び入会の意思を示しているようだった。

 黒川に至っては理念を理解出来た事が驚きだ。

 しかし、こうなってくると俺も興味は無いとは言っているが入会せざるを得ないな。別に大橋も悪い奴ではないだろうし、何より俺だけ仲間外れにされる感じがするしな、うん。


「じゃあ先輩、俺も入会の方をしたいんですけどいいですか? アニメとかラノベとか結構好きなので」


 俺もこういう柄では無く積極性があるタイプではないので気恥ずかしい部分はあるが、一度言葉にしてみると楽なものだ。


「……君は、ちょっと」

「え?」

「……OSO団には唯一入会を断る条件があるんだけど……」


 藤木田の方を向くと藤木田も驚愕の表情を浮かべており、何が何だか分からないといった様子であった。

 礼節的には問題無かったはずだ、むしろ黒川の方が問題がある態度だった。

 まさか身長……? いやあり得ない、黒川と藤木田はそれなりに高い方とは言え、部長である大橋自体が俺よりも低身長だろう。

 理由が分からない……。


「えっと、その条件ってなんですかね?」

「……OSO団はリア充は入会禁止なんだよね、ごめんね」


 俺のどこがリア充だと言うのだろうか? むしろ非リアの陰キャでしかないと自負している。

 大橋の言う、リア充とは友情の部分を指しているわけでもない、黒川と藤木田が仮入会を認められたのが証拠だ。

 もしかして俺は、俺が気付かないだけで黒川を凌ぐ超絶のイケメンなのだろうか? それなら納得して帰ろう、うん。


「俺、非リアの陰キャなんですけど、どこら辺が……」


 大橋は、図書室の受付カウンターの方に顔を向ける。そこには名も知らぬ図書委員とマイエンジェルの笠木が忙しそうに貸し出し本の整理を行っている姿があった。


「……さっき、あれだけラブコメっぽい事やっといてリア充じゃないっていうのは無理があるよね、一部始終見ていた。というか見せられたという表現が正しいよね。嫉妬で愛読本を握り潰しそうになったよ、だから君の入会は認められないかな……」

「いや、あれは違くて! ……ラッキースケベではなくラッキーラブコメみたいな感じでして」

「……尚更ダメじゃないか、帰ってくれ」


 先ほどの笠木との一幕が、青春ジェットコースターとは言わないまでも、このような副作用を不随させるとは夢にも思わなかった。

 まさか同類に拒絶されるなんてショックが大きい俺は無言で図書室を後にして逃げるように家路へ急いだのであった。

 

 後日、黒川と藤木田も入会を取りやめた事を知り、俺は彼らの優しさを知り友情エンドも悪くないと初秋で訪れた憂鬱な出来事を記憶の彼方へ放り投げる事にした。

最後まで見ていただきありがとうございました!GWも残り僅かですが、この休暇を噛み締めながら日々を堕落に委ねていきたいと思いますますます!

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