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秋愁を切り裂く春の木漏れ日

私の作風では珍しい展開となっておりますが、楽しんでいただけたら幸いマンですぞ!

 いつも通り藤木田が先陣を切るのではなく、復活した黒川は先陣を切って図書室に突入すると、図書室独特の静かにしなくちゃならない雰囲気が充満している。

 個人的には静寂とは良き隣人であると思っている俺ではあったが、拒否反応が出ているように妙に緊張してしまうのは何故だろうと考えていると、カウンターには俺の見知った顔があった。


「あれ? 木立くん」


 あれ? ここ笠木部の可能性ワンチャンある? 笠木も俺に気付いたのか声を掛けてくる。何故笠木がこんなところにいるのだろうとか、一先ず置いておこう。

 最近めっきり姿を隠していたが、これは青春ジェットコースターに違いない。俺の経験と感覚がそう告げている、理由などそれだけで十分だ。

 そして夏祭りの経験から俺は調子に乗っているとロクな目に遭わない事も実証済みだ。俺は慌てずクールに笠木に返答をする事を心掛ける。


「笠木か、ウチに図書部なんてあったのか?」


 笠木は一度周りを見渡すと俺を手招きする。俺は反射で笠木の方へ歩み寄る。


「木立くん、ちょっとしゃがんで、しゃがんで!」


 笠木は、カウンターの前で両手を伸ばしてブンブンと振り、身体をしゃがませるように合図してくる、かわいい。すごくかわいい。

 俺は笠木に見惚れながらも、身体をしゃがませ座っている笠木と平行線になる高さまで頭を下げると、笠木はスッと俺の方へ顔を寄せてくる、シャンプーの香りだろうか? 鼻先を掠めるように香水とは違う優しい香りが鼻孔と通り抜け刹那に脳へ到達する。

 

「図書室では静かにしなきゃだから、気持ち悪いかもしれないけどごめんね。部活じゃないんだけど、今学期の図書当番に選ばれちゃって週に一回だけカウンター任されてるの」


 耳打ち……誰もが憧れるシチュエーション、不意に訪れる青春の悪戯。

 創作物の世界でしか確認出来ないと思われた現象は俺に訪れていた、くすぐったいような感覚に温度を感じる事の出来る吐息が耳を撫でる。

 

 一瞬の出来事、何度も寝る前に浮かべていた光景。

 恥ずかしさとむず痒い気持ちが、お互いに競り合う感覚に驚き俺は一歩引いてしまう。


「あっ……嫌だったよね? ごめんね……」

「嫌じゃない!」


 俺の声が思ったより大きく笠木の隣にいた図書当番と思われる女生徒だけではなく、周りの生徒や藤木田や黒川が俺の方を注目していた。


「あっ……すいません!」


 即座に謝り頭を生徒の居る方向へ下げると笠木の方へ向き直り先ほどの返答に付け加えるように俺は静かに気持ち小さめに声を出す。


「嫌じゃない……その笠木の顔が思ったより近くて……その、何やら恥ずかしいような驚いたような、すまん、何て形容していいか俺の語彙力では難しい……未来の俺に期待してくれ」


 俺は笠木を直視出来ず、目線を泳がせながらも笠木の表情を伺うようにしていた。


「そっか……うん、言われたら私まで何か恥ずかしくなっちゃったかも、意識しちゃうって言うのかな……あっ! そういう意味を含むんじゃなくてね! うぅ……でも私も何て言ったらいいか分からないから、お相子って事でいいかな?」


 恐らく笠木の表情と俺の表情はリンクしているだろうと思う。

 青春っていいな。そう思える感覚が今の一幕には満ちていた。


「あの、ここ図書室なんで……そういうのは二人きりの時にどうぞ」


 笠木の隣に座っていた図書当番は痺れを切らしたのか、俺と笠木のやり取りが場に相応しくないと苦言を漏らした。

 これには流石の俺も反論出来ん、そう捉えられても仕方ない光景だったと思う。


「何度もすいません! 俺達はそういう関係じゃ……あーえっと、もう静かにしますので!」


 そう言って俺は逃げるように興味もない本棚の方へ移動する。興味も無い本を取り中途半端なページを開く。

 しかし俺の頭には笠木は今どんな表情をしているだろうか? その事で頭の中は一杯になっていた。


「逃げましたな……?」


 背後から俺は肩を掴まれ、先ほどの笠木同様に耳元で囁かれる声に驚き振り向くと、顰め面をして俺を睨みつける藤木田が立っていた。


「に、逃げるって……」

「あれは逃亡ですぞ、もっとこう上手い言い回しをですな!」

「だって、そういう関係じゃないし、マジでないし……」


 藤木田は煮え切らないのか大きくため息を吐き、ヤレヤレと言いたげなポーズを決める。


「そういう関係になるのが木立氏の悲願でしょうに、あと一歩足りないのですぞ!」

「そんなん言われたって……そんなにダメだったか?」


 俺の言葉で藤木田は先ほどの表情とは打って違い、何やら一人納得するように数回頷く。


「いえ、某は言っているのは確証の無い物です、言わば理想かもしれないという程度の話で捉えていただいて構いませぬ、青春審査員の某から見ても青春ラブコメが感じられ、正直に申しますと悪くない絵が見れて満足ですぞ」

「……そうか」


 祝福されているような感覚で多少の恥ずかしさはあるが、藤木田のラインでは合格点と言えるのだろう。

 五月から、幾度となく失敗して何も成さずに後悔した日々を送ってきたと思っていた。だからこそ藤木田の言葉は嬉しくて言ってしまったら臭い台詞だと思うから言わない。

 ただ、心が温かいという気持ちを知ってしまった。

 今日、それが分かっただけでも俺にとっては大きな躍進と言えるのだろう。

 青春ラブコメは遥か彼方、それでも届かない星じゃない。


「そんな木立の表情は久々に見たな、最近何やら苦しそうな表情をしていると感じていた、何も出来ず不甲斐ないばかりだったが……」


 藤木田にも黒川にも本当に心配を掛けさせてしまう、不甲斐ないのは俺の方だって言うのに。

 どれだけ苦しくても辛くても間違えても、それでも俺はバカみたいに太陽に手を伸ばそうと思う。

 翼が灼かれ墜ちても受け止めてくれる友人がいるのだから。


「それじゃあ当初の目的を果たそう」


 黒川は爽やかな笑顔で切り替えるかのように静かに手を叩く。


「そうですな! OSO団を見つけましょうぞ!」

「OSO団を見つけてFPS廃人化計画を再開する!」


 綺麗に終わるという選択肢は無いのだろうか? 俺は先ほどの青春ラブコメの一幕に縋るように脳内で思い出しリピートをするのだった。

最後まで見ていただきありがとうございます! 多少の甘酸っぱさと言う要素が混じった結果になったかと思われますのですぞ!

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