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幕間:愚者のワルツ1

久々の幕間です

「小説家になろう?」


 夏本番と言える八月某日、久々に集まった事もあり会話も弾むと思っていたが、趣味の範囲が狭い陰キャである俺たち三人は、大した会話もないまま、それぞれの時間を過ごしていた。


 同じ部屋にいるのに、各自自由行動とは実に陰キャらしいと俺は思う。だけどそれなら帰ってほしい。


 そんな事を思いながら時間を浪費していると、パソコンで暇つぶしをしていた藤木田が話題を提供してきた。


「通称なろうでございますな。未来のラノベ作家が日々研磨するサイトですぞ!」


 未来のラノベ作家……と言う事は素人の物書きが集う場所か。よく分からんが夏に関係あるんだろうか?

 何がそんなに嬉しいのか、藤木田は少々興奮気味な様子である。


「そのサイトがどうしたんだよ?」

「実はですな、最近の異世界転生系のアニメ……原作がなろうに置いてあったりするのですぞ!」

「そうか、んで夏と何か関係があるのかよ?」


 藤木田は疑問符を浮かべたような表情をしていた。

 この様子だと夏に一切関係が無さそうだ、俺も別に夏を推したいわけではないが、この狭い部屋に三人収納されてる事で室内温度が高いのだ。

 少しくらい夏の清涼感という物に縋りたくもなる。


「木立氏、某たちも小説を書いてみませぬか?」


 直球できたな。だがしかし、夏のクソ暑い中で更に暑くて、湿度の高くなりそうな事なんざやってられるかよ。


「断る」

「嫌ですぞおおおぉぉぉ! やりましょうぞおおおぉぉ!」

「うるせぇ、そして触るな。暑苦しい……」


 駄々を捏ねる子供のように騒ぎだす藤木田を見ても可愛いなんて感想はなく、ただひたすらに暑苦しい。

 だが、一先ずは理由を聞いてから否定をしよう。絶対に否定する、負けないんだから!


「そもそも書きたいなら藤木田一人で書きゃいいだろ、何で俺が書かなくちゃダメなんだよ?」

「え、その……小説書いて見てもらうのってなんか、恥ずかしくないでしょうか?」

「道連れによる羞恥の緩和が目的だな、下衆野郎め!」


 まぁ、藤木田の言っている事は分からんでもない、何故なら俺は既に二度通った道だからだ。


 一回目は某動画サイトに歌ってみたを投稿する時、二回目は自作ポエムをSNSに投稿した時。

 慣れると違うんだろうが、内心恥ずかしさがあったなぁ。

 両方とも別の意味でバズってしまい、強メンタルを持つ俺でも耐えきれずに削除してしまった。転載が出回ってないといいんだが……。


「木立氏? いきなり表情筋が死んでしまいましたが何かございましたかな?」

「……別に」

「ふっ……では、木立が付き合わないならオレが付き合おう」


 俺が藤木田の話に乗らないと判断したパンツ一丁で転がっていた黒川が急に話し始める。


「おぉ! 誠でございますか!?」

「任せろ、オレも青い鳥のSNSでは敵対クランを煽るくらいに文章を書く、期待しろ」


 そういや黒川のSNSたまにチェックしてるけど、大体知らない奴とレスバトルしてる気がする、ワンチャンあるんじゃないだろうか?


「では、木立氏抜きでやりましょうぞ!」

「そうだな、木立が書いたところでポエムしか出来上がらん」

「ど、どれだけ煽られたって俺はやらんぞ!」


 一度だけじゃなく二度も痛い目を見たんだ、誰がやるか。


「もしかしたら人気が出て本になってアニメ化もいけるかもしれませんな!」


 本……? アニメ化? え、単に恥文を投稿するサイトじゃないの?


「ん……そのサイトからプロになれるのか?」


 俺同様の疑問を抱いたのか黒川が藤木田へ問いかけると、意気揚々と藤木田は夢の話を始めた。


「某が調べた話によると、大量の読者が付いた作品は商業……所謂プロの作品として世に出回りますぞ、スカウトされるケースもあるようですな!」


「ふっ……そうだったのか。しかし、藤木田は気が早いな。だが、高校生で小説家になったら夢がある」


 スカウト! 響きがカッコよすぎる。普段はアイドルをスカウトするプロデューサーとして夜な夜な活動を続ける俺がスカウトされる側になれるのか。

 高校生作家……悪くない。いや、むしろいいんじゃないか? たしかに夢があるし小説家って儲からないイメージはあるが、そこら辺の社会人よりマシだろ、多分。


「人気のイラストレーターとWEB出身のダークホース作家がーー」

「俺もやる」

「いきなりどうした?」


 むしろ強みだ。過去で受けた二度の屈辱……今思えば、試練だったのかも知れない。

 俺が超大型ラノベ作家になるために必要な経験値だった。だったらここは前に歩み出すべきだ、いつやるの? 今でしょ!


 俺は凡夫である二人に向けて高らかに宣言をする。


「俺がラノベ王になる男だ!」

続きます、多分数日後。

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