幕間:二者面談
(*´ω`*)ぽよ
「失礼しまーす」
「おう、田中、掛けてくれ」
「言われなくても普通に掛けるっしょ」
俺は小生意気なギャルのような風貌をした生徒を前に少々緊張している。宿泊研修という生徒にとっては楽しいイベントだったが初担任を迎える俺にとっては実に気苦労が多いイベントを終えて、生徒の心のケアというか考えを知りたいと考えこの時間を設けたが、早々に出鼻を挫かれた感じがして気が乗らないが俺が始めた事だ、生徒一人一人に心から接しよう。
「それでだ、宿泊研修は楽しかったか?」
まずは小手調べと言う程でもないが、明るい話題を絡ませて緊張を解いていこう、もちろん俺のだが。
「まぁこんなもんでしょって感じ」
俺の学生時代と異なり、最近の高校生はどうやら冷めている印象を受ける。俺の時代に存在したギャルのような生徒は逆にこういったイベントはハメを外すかのように楽しんでいた、それこそ停学になるレベルでだ。
「そ、そうか。それで高校一年目という事もあり高校生活全体を通してのイメージと現実の違いとかはあるか?」
これは非常にデリケートな問題だが、イメージと現実のギャップに心を閉ざしてしまう生徒は多い。田中のように強い立場にある生徒は問題無いだろうが一応な。
「イメージと違う奴は……いたかも」
先ほどまではサバサバした印象で早く帰りたそうにしていた田中の雰囲気が柔らかくなった? いや……俺の勘が告げている!
これは恋の話題だ! もしかしたら何事も無いと思われていた宿泊研修で大イベントが発生していた可能性があるな、生徒に限らず恋愛の話は聞いていて面白いが高校生の青臭い恋愛というのも俺は嫌いじゃない。
「そうか、教師の俺が聞く事ではないと思うから嫌だったら答えなくていい。今まで付き合った奴とは違うタイプの奴が気になったりとかそういった悩みか?」
「は!? は!? は!? ちげーし! そういうのじゃないってゆーか……まだ好きとかじゃないみたいな……」
ギャル風に見えるだけで随分と俺がイメージしていた田中という人物像と違うな、実に分かりやすい。恐らく自身とタイプの違う人間を好きになって戸惑っているのだろう、しかしそれも青春であると俺は言いたい、いや言わせてもらおう!
「そういう事もあるさ、俺も嫁と出会――」
「いや、ササセンの恋バナとか求めてないんだけど」
田中という生徒はどうやら基本的にはサバサバした考えや言動をするが、実はウブである事が分かる。俺と嫁の話を遮ったのもそういった理由だろう、そのはずだ。
田中と幾つか会話を行い将来についての浅い会話を行い続いての生徒が教室のドアを開ける。
「失礼」
「お、おう、黒川。掛けてくれ」
本日二人目の生徒は、俺が独自に設定している【何を考えているか分からないリスト】にノミネートされている黒川だ。
そもそも田中ですら多少敬語混じりの言葉を使っていたのに対し、黒川と言う生徒は悪びれもなくタメ口、いや偉そうだ。
「早速だが、宿泊研修はどうだった?」
田中同様に小手調べといこうと思うが、そもそも黒川には何を話題にすると心を開くのだろうか?
「ふっ……青き輝きを視た」
鼻で笑われた……そして言ってる事が分からない、これが噂に聞く中二病という思春期特有の病なのだろうか?
「そうか、楽しかったって事でいいのか?」
「無論」
いや、無論とか言われても分からねぇから聞いてんだよ、このガキふざけんなよ。
いやいや、ダメだ。生徒に心の中と言えど汚い言葉を使ってはいけない。
いつか言葉として出てしまうからな、よし気を取り直して向き合おう!
「高校生活が始まって一ヶ月経ったが調子はどうだ? 友達とか出来たか?」
「心の友、いや戦友……と言うべきか、そのような存在ならな」
コイツ本当に敬語使えねーのな、社会にでたら痛い目に遭うからその内マナー講座の時間でも設けるか。
そんでもって言い回しがくどい、普通に友達って言えないのか、照れ屋かよ。
しかし……入学当初から一人でいた黒川にもようやく友達が出来たか、そこが心配だったんだが考えすぎだったようだ。その友達も俺にとっては心配の種ではあるけど。
そして三人目の生徒は比較的話しやすい生徒を呼ぶようにしていた、一種の中和剤みたいな物だ。
「失礼しゃっす!」
「おう、田辺」
「ササセン、ウィッス!」
俺が声を掛ける前にズカズカと空いている席に腰掛けるクラス委員長兼リーダー各の田辺は明るく良い生徒だ、外見と反して大きな問題も起こしていないので俺にとっては話しやすい生徒の一人だ。
「ウィッス! んで、早速だが宿泊研修はどうだった?」
「何か色々問題はあったんすけど、逆に絆深まったみたいな感じっす」
田辺の言う問題とは、笠木が何やら色々言われていた件の事だろう。該当の生徒には俺からも注意を行ったが言葉では反省したような素振りを見せていても心からの反省では無いように見えた。
しかし田辺を信頼するなら、問題は生徒同士で解決したと思っていいみたいだ。
「そりゃ良かった、すまんな。気付くのが遅れてしまった」
「謝るなら俺じゃなくて雪っすよ! ぶっちゃけ俺達も雪助けれなかったんでめちゃ凹んだんすよね~」
田辺達がどうにかしたのかと思ったが、田辺の言い方からすると田辺のグループ外の人間が解決に導いたのか。そんな人間はウチのクラスにいない気もするが……。
「まぁ解決したなら俺も深くは聞かない、それで高校生活を過ごしてみてどうだ? 困った事とかはないか?」
「困った事とかは特にないっすけど、困ってもササセンには言わないっすよ」
「え?」
「いやいや、ササセンも高校生だった時期にセンセーが必要以上に絡んできたらウザくなかったっすか?」
あれ? 俺ディスられてるよね? 最近の高校生怖くない? 教師なのに俺病むよ? いいの? ボイコットするよ?
中和剤としての効果が持てると判断した田辺に裏切られてから、四人目の生徒は、俺が独自に設定している【何を考えているか分からないリスト】にノミネートされている中でも別格と考えている木立だ。
「失礼します」
「おう木立、座ってくれ」
「失礼します」
今までの生徒の中では敬語も使えてるし礼儀も弁えている分一番まともに見えるが、コイツはまともではないと俺は断言してもいい。
他の先生からの苦情で、特定の女生徒を見て歪な笑みを浮かべていると報告が上がっている。鵜呑みにするわけではないが注意して見なければいけない生徒である事は間違いがない。
「早速だが宿泊研修はどうだった?」
「楽しかったです」
表情と言葉が一致していない、どう見ても楽しそうに見えない。黒川みたいな生徒の場合だと、喋ってる内容は分からなくても喜怒哀楽は読み取れる。
必要以上に突っ込まなければどうにかなるから楽な方ではある。
しかし木立のような特徴が無いと言うより本音を鉄壁の要塞の如く一切見せない生徒が俺は一番心配であり恐怖の対象としている。
「どんな事が楽しかったんだ?」
「……各班にて野外炊飯を分担作業で行うチームワークの重要性を学べた事、班ごとにカラーが違う料理をシェアしアウトソーシングの導入やアライアンスするべき部分を明確にし効率化を図れると認識出来た事と同グループになった生徒の将来へのビジョンを聞け見識が広がった事が思い出です」
こんな高校生イヤだな……話してても時間の無駄とさえ思える徹底ぶりだ、将来の夢は不労所得とか書いてる奴の見識が広がってどうすんだよ。
「……そうか、高校生活はどうだ? 困った事はないか?」
他の生徒にも聞いていた質問にて目を合わせずに俯いていた木立の目線が泳いだのが分かった。どうやら木立にも人間らしく高校生らしい悩みでもあるのだろうか? いいぞ木立! 先生にぶつけてみろ!
「……本当に青春って上手くいかないですよね、すみません。今後の事を考えると気分が悪くなってきたので早めに切り上げてもらえると助かります」
「お、おう」
木立の悩みは聞けず仕舞いだったが、どうやら俺が思っているよりも木立の要塞は脆いらしい。木立も木立なりに青春の悩みがあると分かっただけでも収穫だ、今後の面談では少し踏み込んでいけたらと思う。
覇気がないやら言われているのは知っているが、様々な青春の眩しさに当てられて俺は教師になったんだ、これからも生徒の為に注力していきたいと俺は思う。
最後まで見ていただきありがとうございました!




