変夏と理想郷
今日ね;w; 三話更新なのです;w; よろしくお願いいたします!!
考えがまとまらないまま、俺達は近場のファストフード店で遅めの昼食を取っていた。藤木田は相も変わらずラブコメモードで時折ニヤけた表情をしつつも、いつもの表情に戻ったり、顔に締まりがない。
黒川はと言うと、スマホを高速タップしているので恐らくクラウドさんとの連絡を取り合っているのだろう。
「そもそも、こういったイベントで個人的に連絡を取るとかマナーや規約はどうなんだよ?」
黒川は俺の発言に、間髪を入れず答える。
「規約には特に記載が無い、ただ常識的に考えて無しだ」
「やはり、そうでしたか……某もルールを破ってまで目的を果たしたくないとは思っておりますので半ば、分かっていたのですぞ……」
俺も黒川と同様の意見で規約に記載が無くとも、そんな輩が続出してたらイベントが成り立たなくなる。藤木田には残念だと思うが、こればかりはどうしようもない。
「藤木田」
「黒川氏、どうなされましたか?」
「ルール上問題が無さそうな案なら一つある、クラウドさんも今回コスプレイヤーとして参加している事をツテに連絡を教えてもらうという事も可能なはずだ」
確かに、黒川の案なら問題が無いが、クラウドさんも人見知りだからなぁ……難易度は結局高いままだ。そもそも藤木田の誇大妄想発言の印象が強いだけで、今回だけで仲良くなろうとするのではなく回数を重ねたらどうだろうか?
「それはクラウドさんの負担が大きそうだから却下だな。そもそも仲良くなる以前の段階だからな、とりあえずは顔を覚えてもらうって形で写真だけ撮らせてもらうってのはどうだ?」
「むっ! そうだな、クラウドさんも人と話すのが得意ではない事を失念していた」
俺の提案に藤木田は、元々そのつもりだったのが、少しだけ落ち着いた声色で納得していた。
藤木田も浮かれていた事もあるのだろうが、結局は三次元の話なのだ。二次元で行われるような大型イベントなどは現実では発生しない。着実と行動していく他ないだろう。
彼女いた事ないから知らんけど。
その後に昼食を取り、午前と異なり俺達は三人で行動をする事にした。
「木立氏! 某が写真撮る時に着いてきてほしいですぞ!」
「……断る」
「なぜですか!?」
藤木田も黒川も知らないのだ、俺が会場の入り口でイキリ騎士王に暴言を吐かれた事を。
そんな俺が行ったとしても悪印象でしかない。
「それは黒川に着いていってもらえよ、今回ばかりは俺は力になれそうもない」
俺は藤木田が騎士王に抱くイメージを崩さない為に、こう答えるしかなかった。
「黒川氏はクラウドさんの元へ行きましたぞ……それに某は宿泊研修の時も木立氏の手助けを行いましたのに薄情ではないですか!?」
「痛いとこ突きやがって……卑怯だぞ!」
「某も陰キャでありますぞ! 卑怯なのはむしろ誉め言葉としていただく所存でございますぞ!」
「戦略的撤退だ!」
ここで騎士王のイメージを悪く言っても場の雰囲気が壊れてしまう為、俺は一時戦線離脱。
トイレへの撤退を余儀なくされた。
トイレへ向かう為、会場内をウロウロしていると俺は再度一番遭遇したくないユニークモンスターと遭遇してしまう。
いや、この場合は俺がモンスターか。
「あ……」
コイツ、最初もそうだったけど俺の顔を見たら少し焦ってんだよなぁ。何フラグ? こんな奴とのフラグなんか遠慮する。バッキバキにして藤木田にくれてやる。
すれ違い様に舌打ちと眉間に皺を寄せたメンチ切りをされ、俺の中の陰キャが怯えてしまっていた。
俺は陰キャなりの反撃として、イキリ騎士王の後ろ姿に負けじとメンチ切りをする。
そこで、とある事に気付く。
芝生の上のコスプレ会場ではたくさんの同士達がスマホや、高級そうなカメラを持ってコスプレイヤーを撮影していたり話しかけているが、騎士王の周りには誰もいないのだ。
理由としてはコスプレの精度自体が雑なのもあるだろうが、単純に騎士王のコスプレが似合っていない事と、上位互換の騎士王のコスプレが近くで撮影している事だろう。
そして見ず知らずの俺に対しての態度を、他の人間にも行っていると考えると妥当だ。
自業自得という言葉が良く似合う状況なのだろう。
ただ……情けや哀れみと捉えられるかもしれないが、そういう姿を見るのは心苦しいわけで、俺はトイレへ向かう道を引き返しコスプレ会場へと再度入場して一人佇む騎士王の元まで歩いていく。
「き、きしゅ……騎士王のコスプリェしてるだけあって、カムランの丘で一人た、たっ佇んでる設定にゃのか?」
……やってしまった。
俺が青春ラブコメの主人公だったらスラスラと今の台詞をカッコよく言えただろう。
自分でも既に思っているが、ドモったり噛んだりしてしまったのでダサい、クイックロードを希望する。
「あ……はぁ? 意味わかんないし、いきなり気持ち悪ぃんだけど」
俺の顔見るたびに『あ……』って言うの止めてもらえませんかねぇ、俺ってそこまでブサイクなの?
脱線したが、話はそこじゃない。
「えっと……その、誰もお前の事撮らないのか?」
あっミスった。
「はあぁぁ!? バカにしてんの!?」
日本語って難しい、いや俺の言語能力に不備があるだけだな、うん。
「い、いや、そうじゃなくて……誰も撮ってないなら撮る人間いるから連れてこようかなと……」
「……憐みとかそういうの求めてないから! お節介焼かないでもらえる?」
口は強気なのに表情は俺に睨みを利かせていたと思えないくらいに弱々しく、内心は違う感情を持っている事は明らかだった。
「うるせぇんだよ、陰キャ! ウチは好きでこのコスプレしてるから放っておけよ!」
「その割に口調は騎士王とは似ても似つかないんだが……」
機嫌が悪そうなのか、元々の口調のせいなのか分からないが、お世辞にも良い状態とは言えなかった。
「コスプレ衣装が好きなだけ、口調まで真似たいとは思ってねぇんだよ、普段こういう口調じゃないし好きな事してる時くらいは自然体でいたいの、本当にそれだけなんだけどね……向いてねぇのかな」
話すたびに騎士王の声色は弱くなっていき、徐々に語尾も小さくなってしまっていた。
普段は自分を偽って生きている分、この世界は彼女にとっての理想郷だったのだ。しかし現実は非常だった。
本人はどう言おうが、やはり撮られてこその世界だって言うのを本人も理解しているのだろう。
好きな事で人気になりたいなんて当たり前、しかし修羅の道で在る事も事実だ。
だからこそ、妥協して自分を殺してニーズに合わせて上へ昇るという楽な道を選ぶ人間が多い。
彼女が悩んでるのはその境界線だ。
余談だが、俺は捻くれている。
先程の藤木田とは別の拗らせ方だが、拗らせ具合で言えば、引けを取らないと自負している。直す気も無いけど。
俺はこのコスプレイヤーが嫌いだ、何故なら俺に対しての口調や態度が気に入らないからだ。
しかし……こういう尖った人間の考えは非常に好感が持てる。
そして、偶然にも狂愛とも言えるくらいに彼女にベタ惚れの男を知っている。
たった一人とはいえ、彼女を心から撮りたいと思う人間がいる。
それだけで彼女の理想郷が輝くとは言えないが、黒だけで塗りつぶされるよりマシだろう。
「安心しろ、憐みなんかじゃない。」
「いいって……気使わせて悪かったわね」
俺の言葉じゃ信頼に値しないのは分かっている、だから後は藤木田に掛かっている。
「気遣っていないって言うと嘘にはなる。ただ……今から連れてくる奴がお前を撮りたいと思っているかどうかは表情を見て判断しろ」
「はぁ? 意味わかんないんですけど」
「後から嫌でも分かる」
そう言って俺は、戦略的撤退をした男の元へと向かうのであった。
最後まで見ていただきありがとうございました!^w^w^
次は21時更新になります;w;w;




