変夏と狂人の祭典
ふぇぇ!日曜の更新分になります!!
盗撮魔VS陰キャ~プールでドキドキ取っ組み合い~から数日が経過していた、夏休み、某日、予定通りに俺は藤木田と黒川と合流していた。
「某は前々から思っておりました! 木立氏がヒーローであると!」
お互いに夏休みをどう過ごしていたか? という話題になり俺はプールの一件を除いては陰キャらしく堕落した日々を送っていた事で、話題として盗撮事件について話すと藤木田は興味津々と言った様子で鼻息を荒くしていた。
「夏の暑さで陰キャを拗らせただけだ、他意は無い」
褒め讃えられる事に慣れていない俺は、自虐を交えつつも素直に喜べないでいた。
「基本的に自己中心的な木立氏が、他者の為に殴られても引かない姿……某も目に焼き付けたかったですぞ!」
半分ディスってるよな、これ。飴と鞭にしては間が狭すぎる。
「取っ組み合いしてアドレナリン出てるからな、痛みとか二の次だ」
俺が喋っていると前を歩いていたはずの黒川が俺の横に並び、恰も理解者かのように肩に手を置いてくる。
暑いし何より誤解されそうな絵面だから止めろ、友情、努力、勝利を掲げる漫画雑誌でも今時やらない行為だ。
「そうだな、俺も戦闘中はアドレナリンが出ているせいか時間を忘れてしまって気付いたら一瞬で夜から朝に変わる事がある」
いや、お前のそれは別の病気だから。
黒川はどこまでいっても黒川でしかなかった、夏休みに劇的な変化を遂げるかと思わせつつも、鈍感系主人公を遺憾なく発揮している、クラウドさんは苦労している事だろうと心中を察する。
「それで藤木田は何してたんだよ?」
黒川は聞かなくても分かるから置いておくとして藤木田は家庭の事情もあり、家に居たくないはずだ。
何処かへ行っていたのだろうか? と思って聞いてみる事にした。
「某は木立氏と黒川氏と予定が無い時は図書館におりましたぞ!」
「夏休みの宿題終わって無かったのか?」
藤木田は黒川の問いかけによって笑顔から真顔に変化する。
「いえ、家にいても両親の視線や小言が気になりますので図書館にずっといるだけですぞ、最近はスマホの充電も出来ますしwi-fiもありますからな……」
あれだけ青春の夏休みを謳歌したいと豪語していた男が俺達三人の中で、一番陰キャらしい夏休みを過ごしているなんて涙が出そうだ。
やはり俺からも遊びに誘ってやれば良かったのだろうか?
「しかし今日は楽しみにしてましたぞ! なんたって我々オタクの祭典ですぞ!」
祭典と例えるには語弊がありそうだが、オタク専用イベントと言っても過言ではない。
東京で開催されているコミケとはまったく規模が異なるが、俺達のいる地域では大規模と言ってもいいだろう。
巷では二次元と三次元の狭間の次元とされているコスプレ。俺自身はまったく興味が無いが、物販もいくつかあるらしいのでグッズ目当てで参加する人もいると藤木田から聞いていた。
黒川はクラウドさんがコスプレイヤーとして参戦するので、誘われたのが理由だ。それぞれ目的は異なるが、結局は陰キャでオタク同士であり、退屈するといった事は無さそうだ。
しばらく話しながら歩いていると、会場であるドーム型のシルエットが徐々に近付いてきていた。
「会場に近づくに連れて、同士らしき影が増えてきましたな!」
「普段は人混みにいると吐き気が止まらないが、何やらここだと吐き気はしないな、自宅のような安心感すらある」
最寄りの駅から会場まで徒歩十五分程度、体力の無い陰キャにとっては、夏の日差しもあって多少長い道のりであったが、俺達はコスプレイベントの会場まで到着した。
多目的コミュニティホール、普段はスポーツ等での催し物が多い中、今日だけは対極とも言える存在で会場は溢れていた。
「というかこの炎天下の中、外でコスプレやんのか?」
東京とかよりは幾分かマシと言えど、熱中症でピーポー続出すると断言してもいいほどに太陽は俺達を殺しに掛かっていた。
しかし、俺の心配は杞憂に終わったらしい、藤木田大先生は即座に回答をくれる。一家に一台常備させるべきだ。
「このイベントでは外観の問題、または不測の事態を考慮して全て室内でのイベントになりますぞ!」
外観の問題……キモオタは外観を損ねるという事だろうか? 浸透しつつはあるが、やはり趣味や娯楽のカテゴリとしてはまだまだ市民権を得られそうにないのが、こういった趣味の辛いところだな。
しかし、貸し切りのイベントではあるのだから興味がある人間しか来ない分、今日は独立国家のような場所であるから心配はいらないだろう。
「それで、着いたのは良いけど、ここからは別行動か?」
俺の提案は妥当だと思ったが、藤木田は骨髄反射のように俺に猛抗議をしてきた。
「それはあんまりですぞ! 親睦を深め合うべきですぞ、某はみんなと一緒に行動したいですぞ!」
よほど夏休みが暇だったのか、孤独な時間が多くて人恋しいのか藤木田にしては珍しく駄々を捏ね始めていた。青春飢餓症候群と名付けてやろう。
そんな不憫な藤木田を思ってか、黒川は藤木田にパスを出す。
「俺はクラウドさんに挨拶をしなくてはならない、着いてきても構わないがどうする?」
藤木田は黒川の提案に表情を明るくさせ黒川に着いていくとパーティを結成していたが、俺は物販を回りたい事もあり一人で行動する事を告げて、黒川達とは別行動を取る事にした。
普通の感性ならば、仲良く行動するのがデフォだ。
しかし、俺は陰キャのテンプレを自称する男だ、単独行動と言うアビリティを有効活用させてもらおうじゃないか。
しかし、俺としても藤木田程ではないがオタク系のイベントに参加するのは初めてなのもあり楽しみじゃない。と言ったら嘘になる。
俺は俺なりに静かながら熱を帯びていくのを感じながらドームへ入場していくのであった。
最後まで見ていただきありがとうございました><残すところ多分二万文字程度で二章がおわりますがお付き合いいただけると幸いでございますですよ!!




