変夏と変化
遅れましてすみません>< プール編を再度校正しつつ新話になります!描写の足りなかったところをいくつかプール編を再編集しながら、この話を書きました
プール編はこれで終了です!!!!
俺は別に正義感がある人間ではない、どちらかと言うと闇属性魔法とか使えそうな顔をしていると自負しているし、中学時代は笑顔が引きつってて気持ち悪いとまで言われるくらい正義や光と言った単語に縁が無い男だ。
平凡以下の人生が俺に割り当てられている事は間違いがない、どこぞの眼鏡のように自分や周りの環境を良くしようと努力するキャラでもないし、とある鈍感系主人公のように築いた王国を捨ててまで一人の女性を選ぶなんて思考には至らない。
正統派ヒロインのように血の滲む努力で過去と決別する勇気も無い、友人の為に一人で大多数に立ち向かう強さも持っていない。
卑屈さ以外持ち合わせちゃいない陰キャの俺でも――
貫かなくちゃいけない意地くらいはある。
恐らく俺の人生にトゥルーエンドは無い。
俺が近い未来に行おうとしている事は、今までの俺の否定であり、自分を殺す事に繋がる。
それでも、今だけは青春ラブコメの主人公のように振る舞わせてもらおうじゃないか。
俺は力強くプールサイドを歩き、配置されている女性監視員に声を掛ける。
俺の問いかけと説明に女性監視員は、眉間に皺を寄せて対象を見て疑いつつ手元にあるレシーバーで他の監視員に職務を任せて俺に同行する。
少なくとも、これで逃げられる事は無い。
監視員を引き連れた俺は対象者の方へと歩みを進める。俺の後ろについている女性監視員がレシーバーを使っていた事から恐らく俺の考えは十中八九当たっている。
対象者の後方まで辿り着くと、俺の後ろに付いてきていた女性監視員は声を掛ける。
「山口くんちょっといいかな?」
山口と呼ばれた監視員は突然後ろから声を掛けられた為か、やましい事があるのか身体を大きく震わせてコチラに身体を半分向ける形になる。
「は、はい! どうされましたか?」
後者で正解だろう、顔から焦りが滲み出ている。
「貴方はどうしてスマホを持ち込んでいるの?」
「えっ……と、その……すみません、置いてきますので!」
山口と呼ばれた男は監視台から手早く降りて、この場を下がろうとするが、そうはいかない。
俺は咄嗟に山口の手を掴む。
「離せよ!」
「客に聞く口の利き方じゃないな、何焦ってんだよ? 盗撮魔さん」
山口は俺の手を振り払おうとするが、逃がすわけがない。
そのまま平行線を続けるかと思ったが視界が覆われる感覚と同時に感じた事の無い衝撃があった。
驚きと痛みで一瞬手を離しそうになったが、それでも絶対に手は離さない。俺は更に両腕で山口を逃すまいと力を入れると山口は殴った事で身体のバランスが崩れたのか、俺の方へ倒れ込む形となる、こうなれば全身を使って逃がさないように羽交い締めにするだけだ。
知らない奴から見たら無様な格好だろう。しかし、恥なんかよりも優先しなくちゃいけない物がある、こんな変態野郎に俺との約束の為に化粧まで変えてきたケバ子を慰み物にされるわけにはいかない!
その後、女性監視員がレシーバーで応援を呼んだ事で山口は諦めたかのように抵抗をしなくなっていた。
山口が抵抗しなくなった時には注目の的、この騒動を嘲笑う声もあった。
そして、周囲の視線を気にしつつめパラソル付近に避難させていたケバ子もギャラリーに紛れていた。
笑顔で終わらせようとしたにも関わらずケバ子に不安そうな顔をさせてしまったなぁ。と申し訳なく思った。
事の顛末は割とあっけなく想像通りの内容であった。
プールで頻繁に感じる視線は俺を見ているわけじゃなかったのだ。そもそも藤木田と黒川に監視されている前提が抜けきっていなかった俺の考察が最初から間違っていたのだ。
あの二人じゃないとすると、俺に視線を送る必要はない。とするならば……誰を見るかなんて明らかだ。
俺に向けられていたと思われた視線はケバ子に向けられた視線だったのだ。そしてテンプレの如く、女性が女性に向けて頻繁に視線を送るなんて事はレアケースだ、だとしたら視線の犯人は男性に決まっていた。
そしてプール以外では感じなかった事。
逆にプールではどんな場所にいようが、ほとんど視線を感じていた事から一般客の可能性は低くなる。
少なくとも視線が高い場所から送られていると想定した、だとしたら一般客より高い位置で見渡せる監視員が該当する。
ここまでならば俺も行動を起こさなかっただろう。美人でスタイルが良い浄化されたケバ子に視線が向くのは男としてある意味正常だ。
しかし、それに付随する行為が問題なのだ、監視員の中で山口のみが首からストラップでスマホをぶら下げていた。
もしかしたら山口が監視員の代表として、緊急時に外部との連絡のためにスマホを所持している可能性はあった、ここに関しては確証が得られなかった。
だからこそ他の監視員且つ女性に事情を説明した、男性では事情が飲み込めても親身になれる可能性が低い。
結果的に山口はケバ子に問わずプールにいた女性を被写体として捉えた写真を十数枚に渡り撮影していた事で、テンプレのように迷惑防止条例違反と俺への暴行にてお縄になった。
俺も事情聴取等の説明により、その日はケバ子とは別々の帰宅となった。
後日談としては、俺は再度ケバ子とプールへ行った日に入ったカフェで対面する事になっていた。
「アンタねぇ、連絡くらい返しな!」
物凄い剣幕で怒るケバ子を目の前にしてストーカー疑惑のトラウマが蘇り萎縮する俺の姿がそこにあった。
「えっと……はい、すみません」
俺の二つ名は今日を持ってペコペコバッタと呼んでもらって構わない。社会人スキルなんて欲しくないのに身に付いてしまう! 悔しい!
「アンタと監視員が何か話してたと思ったらいきなり取っ組み合い始めるから何事かと思ったじゃん!」
「少しやんちゃなくらいがモテると聞いたから実践したまでだ、ワイルドだろう?」
「茶化すなや、古いし!」
「ひゃい! すみません!」
ケバ子は血が上った頭をクールダウンさせるかのようにアイスコーヒーを流し込んでいるようだった。
「まぁ……アタシのためにやってくれたのは分かるから、これ以上は怒らない……ありがと」
「あ、あぁ」
「けど!」
「まだ怒る!?」
クールダウンしたんじゃないのかよ、沸点壊れてない?
「宿泊研修の時もそうだったけど、一人で突っ走らないでアタシにも一声掛けな! 次から!」
ケバ子は強い口調とは正反対に、寂しそうな悲しいような表情をしていた。
当事者とは言え、もしもの事を考えて伝えなかったのがケバ子にとっては煮え切らないらしい。
「次はぜっ……まぁ……わかった」
「善処するって言ったら殴るところだったけど、それならよし!」
あっぶね、言いかけたわ。ナイス選択肢!
「そんじゃ、話は終わった事だし俺は陰キャらしい夏休みを謳歌する予定があるからマイホームへ帰らせてもらうとするか」
そう言って、俺が席を立とうとすると腕を掴まれる。
「え?」
ケバ子は、俺の腕を掴み何か言いたげにしていた。言いたい事があるなら言えばいいのに今日は時折モジモジして違和感が凄い。
「……のアタシの――」
俺は難聴系主人公ではない、というより普通に分からん、難聴系主人公でも今のは聞き取れない。
「なんだって?」
ケバ子は一呼吸置いて、落ち着かせるのと同時に決意したように横に逸らしていた視線を俺に合わせる。
「き、今日のアタシの化粧見て分かんないの!?」
どうやら、今日も俺は陰キャライフを送るわけにはいかないらしい。観念するわけではないが俺は立ち上がりかけていた身体を再度ソファに委ねる。
「そんで、今日はどこに行くんだ?」
せっかくの夏休みだ、陰キャの俺にとっては非日常というスパイスも悪くはないだろう。
最後まで見ていただきありがとうございました!;w;w;w; プール編終わりです
次からは真夏のキモオタフェスティバル編に入ります!!
よろしくお願いいたします!!!




