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変夏と波紋

本日の更新分となります>< 皆様明日月曜にも関わらず閲覧いただきありがとうございます><

 視線自体も確証を得られる要素では無く、俺の感覚が告げているだけなのだから間違いである事を願うが、頻繁に俺を見ている視線は拭える気配は無かった。

 藤木田と黒川は俺が今日プールへ来ることを知っているのだ、そして奴らは間違いなく暇人だ。可能性は捨てきれない。あいつらの事だ、面白半分で俺を観察しに来たに違いない。


 陰キャの癖に随分と行動的だ、やってる内容は陰キャそのものだけど……。

 まぁ、俺も黒川相手にやってるのだから、同様の行為をされても文句は言えないだろう。

 俺は頭で答えの無い考察を繰り広げながら視線だけは見渡すようにして奴らの影を探すが見当たらない……その時、不意に顔になにかが飛んできた。


「うぉう!」


 俺はナニカを払うように手で忙しなく動かすと水滴がポタポタと俺の顔を中心に地面に落ちていく。

 このような事をするのは一人しか周りにいないのだ、犯人と思われる人物の方へ顔を向けると、案の定ケバ子の手から水が滴っていた。


「難しそうな顔してたからね~さっきも言ったけど今日は楽しむ事だけ考えな!」


 それもそうだ、深く考えても仕方がないだろ。仮にアイツらに尾行されたからと言って何かが変わるわけでもない、多少俺がイジられる回数が増えるだけだ。

 それに俺は馴染ませなきゃいけないのだ、この環境を。

 悪い事じゃないし、この光景は誰もが羨む光景なのだ。俺には勿体ないくらいに……。


 痛いなぁ、本当に。


 ゆっくりとつま先を水面に沈みこませる、伝わる冷たさと円形に広がる波紋、揺れる水面、そんな美しい情緒を破壊するかのように身体全体を水に委ねる。

 冷たさが頭の天辺まで行き届いた後に、頭を切り替えるように、水に塗れた手のひらで顔を叩き、先に水中から俺に向かって手を振って合図するケバ子の後を追うように俺はゆっくりと泳ぎ始めた。


「アンタ意外と泳げんだね、運動苦手かと思ってた」

「俺は目立つ行為を一番に嫌うからな、何事にも無難に対応出来るように訓練してる、頂点と底辺、その中間が俺のベストプレイスだ」

「カッコよく言ってる風だけど、ただの怠け者じゃん」


 訓練はもちろん嘘だ、けれども、勉強や運動でそれほど困った経験が無いのは事実であった。

 逆説ならば、何事に関しても中途半端でもあると言える。

 しかし、人見知りというマイナス属性を持っている事からコミュニケーションだけは苦手だ。

 

 思い出す、小学生の時を……。


 幼い頃の俺は、夕方手前になると幼稚園に親が迎えに来ることもあり寂しさという感情が無かった。今だから分かるが、あの頃から俺の陰キャライフは始まっていた。

 そんな俺にも転機が訪れる。幼稚園の先生が言ったテンプレのような言葉『友達百人出来るかな?』

 当時の俺は、その言葉を真に受けて、小学校に入学したら友達という存在が自動で出来ると考えていた。


 しかし蓋を開けてみれば、それまで内向的で友達が居なかった奴が、まともに他者と接していける訳がないのだ。入学当時はそれなりに誘われたりしていた。

 ある時、普段遊んでいた奴らが、俺抜きで遊んでいると言う情報を耳にした。奴らにもハブっているという感覚は無かったと思う。

 単純に面白くないから俺と遊ばなくなっただけなのだ。そして普段から誘われてばかりだった俺は、人を誘うという行為が出来なかった。


 たった一つの事が出来ない。それだけで今の俺が出来上がってしまったのだ。

 『一緒に遊ぼう』という一言さえ喉から出せたのなら、今とは大幅に違う人生だったと思う。

 だからと言って後悔はしていない。ポジティブに捉えられたならば、他の人間よりも俺は逞しく生きていける事の裏付けでもある、なにより今は藤木田や黒川がいる。

 これまでも俺から誘った事はないが、今度は俺から遊びに誘ってみるか……。


 俺が考え事をしていると、ケバ子はいつもの如く顎に手を当てて目を細めながら俺の方をジーッと見ている。


「宿泊研修の時から思ってたけどアンタは、もう少し向上心持てばいいだけだと思うんだけど……」

「向上心を持てるだけ興味のある事が無い、時代が俺に適応出来ていない」


 まぁ……昨今のアニメとかラノベとかは好きだけどな、うん。


「口だけだとゴミクズでしかないけど、いざとなったらアンタは行動力あるし、そういうところは好感持てるかな~」


 自然と恥ずかしくなるような事を言わないでほしい、直ぐに顔を真っ赤にするケバ子が素直に喋ってるところを見ると本人も何を言ったのか気付いていないのだろうと思う。

 という事は俺もスルー安定である。


「そりゃどうも……んで、アレやるのか?」


 俺は先ほどからケバ子が顔を上げて視線を向けているウォータースライダーに指を刺す。


「まぁね、海とかじゃ出来ない醍醐味っしょ!」

「二種類あるけど、どっちやるんだ?」


 見た感じ片方は、人間のみで滑るスタンダードな物。残る片方は、複数人を乗せたゴムボートを滑らせる用だ。


「両方に決まってっしょ! ボートは後から借りるとして先にこっちね!」


 そう言ってケバ子は、またも先導してウォータースライダーの方へと立ち泳ぎをしながら移動していく。

 今日は振り回されっぱなしだと思いながらも悪い気分では無く俺もケバ子の後に続いてウォータースライダーの方へとゆったりと進むのであった。

最後まで閲覧いただきありがとうございました;w;

またランクインした事もあってか、ブクマや閲覧数が増えて嬉しいです。。。皆様という評価や閲覧してくれる方々がいないと成り立たないような作品ですが、これからも楽しんでいただけると幸いでございます!

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