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変夏と姉御とモヤシ野郎

朝からの更新になります! 開いていただきありがとうございます!!

閲覧いただけましたら幸いでございます><

 家から出て数十分、俺は何の気の迷いか歩いて駅前まで向かっていた。

 しばらく外へ出ていなかった為か、夏本番と言えるような気温と湿度を纏った風を浴びながら、近場の駅から電車を利用して駅前まで向かえば良かったと後悔していた。


 あれだけ乗り気では無かった今日のケバ子とのプールだが、今は家に引き返す気分よりも早く駅前まで移動してプールに飛び込みたくて仕方なかった。


 ここで……ケバ子に会いたくて、俺はいつもより足早に駅前まで向かう。季節の熱量よりも心臓が……脳が……俺の中の恋のBPMを加速させていく。

 と、心情を語れたならば青春ラブコメの主人公らしかったのだろうが、いかんせん陰キャの俺は非常に自分勝手であり傲慢な性格をしている為、そのような事を思う事はない。


 しかし……別にケバ子の事を考えない訳ではない。

 俺は強い日差しを手のひらで遮りながら雲一つ無い青空を見上げる。この暑さと湿度ではあるからな……。

 ケバ子は普段化粧が濃い事もあり、化粧崩れが起きないか? 等の心配はしている、ケバ子の顔面がスライムみたいに溶けだしたらどうしようとか、うん。


 そして、プールや海辺は陽キャの出現率が高いので定番イベントの陽キャによるナンパとかだ。

 ケバ子が俺よりナンパ相手を選び着いていくのなら問題はないが、そういう優柔不断な性格ではない事は分かっている。

 ナンパされたヒロインを助けるのは主人公の役目であるからな。

 今日の俺は立場的に言えば主人公であり、そういった輩が出現したら、如何に陰キャ且つモヤシ野郎と言えども戦地に赴かない訳にはいかないのだ。


 いくら青春ラブコメに憧れを抱く俺でも、暴力やそういった身の危険を感じるイベントはご遠慮願いたい。

 あくまでハートフルに青春ラブコメという甘い汁だけを啜りたい、誰だって甘く美味しい部分だけをいただきたいと考えるのは当たり前の話だ、苦労や辛さはスパイスの域を出ないで欲しい。


 願わくば、作戦決行日では無い今日……無難に過ごせるように。と、これまで俺の本当に欲しい物を何一つ与えなかった神様という虚像に俺は縋るように祈るのであった。


 駅前に到着すると、俺はケバ子へ到着のメッセージを送る寸前で頭を軽く叩かれる。

 甘い青春ラブコメイベントを行う前に暴漢に遭遇という突発イベント発生なのか? と考える余地も無く、驚いて後ろを振り向くと、宿泊研修の夜に見た美人が立っていた。


 時が止まったかのように、俺は美人を上から下まで確認すると見慣れたアイテムが一つ確認出来た。

 陽キャらしい犯罪臭がするレゲエカラーのスマホケースに、バカでかい人形がジャラジャラ付いたバカスマホ。

 

「田中か、驚いた」

「アンタ、ビビり過ぎじゃね?」


 確かに後ろから頭を叩かれた事も驚いたが、それよりも……。

 いつもの濃い化粧ではなく宿泊研修の夜にチラッと見た浄化されたケバ子の姿に驚いたのだ。


「俺のような陰キャは、普段から湿度の高い苔が生えそうな場所で生きているから誰かに触れられるという事すら稀なんだよ、驚きもする」


 ケバ子は俺の発言を聞いているのか分からない表情で、先ほど俺がしたように俺を上から下まで眺める。


「なんだよ」

「ん、あの眼鏡くらい興味を持てとは言わないけど、アンタも少しファッションとかに気を遣うべきだわ」


 うわっ……俺の服装、ダサすぎ……?

 実際、自分では普通かと思っていたのだが、オシャレ番長のようなケバ子からすると俺のファッションは赤点らしい。


「な、何か変なのか?」


 ケバ子は顎に手を当て多少屈みながら、何か悩むように答える。


「変では無いけど無難つーか、華がねぇ……」


 悪かったな、華が無いのは自覚してる、キャラクターの問題だ。

 俺は内心悪態を吐きながらも、変じゃなければいいだろと考える。


「んでアタシはどーよ?」


 一緒にプールに行くだけなのにお互いのファッションに点数を付けるのが陽キャの習わしなのか?

 そんな世界なんて俺は知らない。

 しかし、答えない訳にもいかず俺は褒める部分を探す、正直ファッションなんざよく分からない。

 普段と違う部分を褒めてみるかと考える。


「……服装とかは知らんが、普段より化粧が薄くて美人……って言うのか? 元々の造形が良いと思う」

「び、美人……そう、あんがと……」


 また俺なんか言っちゃいました?


 ケバ子は照れているのか俯きながら顔を赤らめているのが分かる、元々肌が白い事もあるが普段よりも化粧が薄いので表情が分かりやすく素直に美人だと思う。

 そんなケバ子を現実に引き戻すように俺は本題の方へと話をシフトさせる。


「それで送迎バスが来るまで多少時間はあるがどうする?」

「あ、あぁバスね、そんじゃ茶店で待ってりゃいいっしょ」


 そう言ってケバ子は先導して茶店への道を歩き始める。

 普通こういうのを先導するのは男である俺の役目なのだろうが、ケバ子が陰キャの俺を気遣って先導してくれていると思うとケバ子の姉御肌が感じられる。

 俺には本当に身に余る気遣いで、嬉しくも情けなくもある。


 夏休み第二弾イベント、藤木田も黒川もいないが俺は、俺の目的の為に今日も嘘を吐こう。

最後まで見ていただきありがとうございます!! 楽しんでいただけたのなら幸いです!

また、見ていただけると嬉しいです;w;

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